②若きバンパイア
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9章
サムを説得しに出ていったダレンは、走って戻ってきた。肩で息をし、額には汗がにじんでいる。
本人は興奮した様子で「大変なことになった」と言って話し始めた。
話によれば、森でR.V.に出くわしたそうだ。R.V.は、シルク・ド・フリークが動物たちを虐待していると騒ぎ立て、警察に通報すると言い出したらしい。
以前にも説明したはずだが、環境戦士を名乗るR.V.には、このサーカスのやり方がどうしても受け入れられないのだろう。
この件は、すぐにクレプスリーとMr.トールにも伝えた。Mr.トールはしばし沈黙したあと、団員たちに「ショーに不要なものから荷造りを始めろ」と指示を出した。
生憎、今夜のショーが控えている。客も入り始めている為今から中止になんで出来ないのだろう。
私も急いでテントを片付け、ダレン、エブラと一緒に機材の荷造りを始めた。サムの説得はどうだったかと聞くと、ダレンは「きっと諦めてくれたよ」とだけ言って、力ない笑みを浮かべた。もう目の周りは酷いクマがみえる。
「大丈夫かよ、ダレン。まだ血、飲んでないんだろ?」
「平気だよ。前よりマシだし」
「嘘だね。顔が真っ青」
エブラが苦笑まじりに言うと、ダレンは目を伏せた。
「なあ、俺には分からないけどさ。人間の血って薬みたいなもんだと思えば?生きるために仕方なくって」
「……でもさ、人の血を飲んだら、悪魔になっちゃう気がするんだ。人を餌にするなんて、どんな理屈でも正当化できない」
「じゃあ、私は悪魔なのかしら?」
皮肉っぽく言えば、2人ともびくっとして無言で首を横に振った。
「私たちは人間の血がなきゃ生きていけない。綺麗ごとだけじゃやっていけないの。……でも、だからって、誰かを傷つけていいわけじゃない。ちゃんと線を引いて、踏み越えないようにする。それがバンパイアでいるってことだよ」
そこでわざと軽くため息をついて、わずかに眉をしかめる。
「今夜は私がショーに出るから、ダレンは休んでて。倒れたあなたを運ぶ羽目になったら、私ほんとに怒るからね」
「ネアの言うとおりだな。ショーが終わったら起こしてやるよ」
ショー終わり、マダムの世話を終えてまたトラックへ荷物を運んでいると、ふと血の匂いが鼻をついた。
フリークショーは動物も扱うから珍しいことじゃないけれど――この時間にしては、匂いが強すぎる。
嫌な予感がして、匂いのする方へ向かうと、目を疑う光景が広がっていた。
「……何これ」
ウルフマンの檻の前、地面には真っ赤な血が飛び散っていた。檻の南京錠は壊され、あの凶暴な獣の姿はない。
すぐ近くには、毛むくじゃらの腕――成人男性のものだろうか――が、骨の露出した無惨な姿で落ちていた。
吐き気がこみ上げる。これは、ウルフマンの仕業に違いない。
「……急いで、Mr.トールに知らせなきゃ!」
踵を返そうとしたとき、視界の隅にきらりと光る瓶が目に入った。ラベルには「オニオンのピクルス」。
それを見た瞬間、心臓が冷たくなった。サムの好物は、オニオンのピクルスだってダレンから聞いたことがある。
「これってあの子の……!?」
まさか。考えたくない。でも、可能性はある。
私はすぐクレプスリーのもとへ向かったが、その途中で、テントで休んでいたはずのダレンがいないことにも気づいた。近くの団員に尋ねても、誰も姿を見ていないという。
「まったく……!」
もしかして、あの瓶を見つけてウルフマンを追いかけたのかもしれない。馬鹿げた考えだけど、ダレンのことならありえそうだった。
私は自分の推測をクレプスリーに手短に伝えた。すると彼は即座にフリットで姿を消した。
サムを説得しに出ていったダレンは、走って戻ってきた。肩で息をし、額には汗がにじんでいる。
本人は興奮した様子で「大変なことになった」と言って話し始めた。
話によれば、森でR.V.に出くわしたそうだ。R.V.は、シルク・ド・フリークが動物たちを虐待していると騒ぎ立て、警察に通報すると言い出したらしい。
以前にも説明したはずだが、環境戦士を名乗るR.V.には、このサーカスのやり方がどうしても受け入れられないのだろう。
この件は、すぐにクレプスリーとMr.トールにも伝えた。Mr.トールはしばし沈黙したあと、団員たちに「ショーに不要なものから荷造りを始めろ」と指示を出した。
生憎、今夜のショーが控えている。客も入り始めている為今から中止になんで出来ないのだろう。
私も急いでテントを片付け、ダレン、エブラと一緒に機材の荷造りを始めた。サムの説得はどうだったかと聞くと、ダレンは「きっと諦めてくれたよ」とだけ言って、力ない笑みを浮かべた。もう目の周りは酷いクマがみえる。
「大丈夫かよ、ダレン。まだ血、飲んでないんだろ?」
「平気だよ。前よりマシだし」
「嘘だね。顔が真っ青」
エブラが苦笑まじりに言うと、ダレンは目を伏せた。
「なあ、俺には分からないけどさ。人間の血って薬みたいなもんだと思えば?生きるために仕方なくって」
「……でもさ、人の血を飲んだら、悪魔になっちゃう気がするんだ。人を餌にするなんて、どんな理屈でも正当化できない」
「じゃあ、私は悪魔なのかしら?」
皮肉っぽく言えば、2人ともびくっとして無言で首を横に振った。
「私たちは人間の血がなきゃ生きていけない。綺麗ごとだけじゃやっていけないの。……でも、だからって、誰かを傷つけていいわけじゃない。ちゃんと線を引いて、踏み越えないようにする。それがバンパイアでいるってことだよ」
そこでわざと軽くため息をついて、わずかに眉をしかめる。
「今夜は私がショーに出るから、ダレンは休んでて。倒れたあなたを運ぶ羽目になったら、私ほんとに怒るからね」
「ネアの言うとおりだな。ショーが終わったら起こしてやるよ」
ショー終わり、マダムの世話を終えてまたトラックへ荷物を運んでいると、ふと血の匂いが鼻をついた。
フリークショーは動物も扱うから珍しいことじゃないけれど――この時間にしては、匂いが強すぎる。
嫌な予感がして、匂いのする方へ向かうと、目を疑う光景が広がっていた。
「……何これ」
ウルフマンの檻の前、地面には真っ赤な血が飛び散っていた。檻の南京錠は壊され、あの凶暴な獣の姿はない。
すぐ近くには、毛むくじゃらの腕――成人男性のものだろうか――が、骨の露出した無惨な姿で落ちていた。
吐き気がこみ上げる。これは、ウルフマンの仕業に違いない。
「……急いで、Mr.トールに知らせなきゃ!」
踵を返そうとしたとき、視界の隅にきらりと光る瓶が目に入った。ラベルには「オニオンのピクルス」。
それを見た瞬間、心臓が冷たくなった。サムの好物は、オニオンのピクルスだってダレンから聞いたことがある。
「これってあの子の……!?」
まさか。考えたくない。でも、可能性はある。
私はすぐクレプスリーのもとへ向かったが、その途中で、テントで休んでいたはずのダレンがいないことにも気づいた。近くの団員に尋ねても、誰も姿を見ていないという。
「まったく……!」
もしかして、あの瓶を見つけてウルフマンを追いかけたのかもしれない。馬鹿げた考えだけど、ダレンのことならありえそうだった。
私は自分の推測をクレプスリーに手短に伝えた。すると彼は即座にフリットで姿を消した。
