①奇妙なサーカス
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1章
巡業で初めて訪れたこの街は自然豊かで、どこにでもありそうなごく普通の街並みだった。
町の中心部から少し離れた所に佇む廃墟が今回のショーの舞台となっている。そこはかつて劇場として栄えていたようで広い舞台上や客席が今もそのままに埃をかぶっている状態だった。
聞けば、"何かが出る"という信憑性のない噂だけが広まり、普段は誰も寄り付かないいわくつきスポットと化しているそうな。
だがそんな噂があっても、フリークのサーカス団が街に来たと密かに広まればいわくつきの廃墟の客席も連日満席に埋まっている。
生憎、うちのサーカスは非常に珍しい異形のものたちがショーを行う、世に二つとないサーカス集団だ。お陰様でどこの街に行っても繁盛している。
それにしても最終日の今夜はやけにお客が多く感じられる。お客の熱気で会場内の室温はあがり、首元に張り付く自身のブロンド色の髪を耳にかけた。
「もうすぐ出番だ。準備を済ませておけよ、ネア」
「うん。分かってるよ、クレプスリー」
「血は飲んでいるのか?」
「うん。あっ、でももうボトルの血が少ないんだ」
「ならば今晩行くとしよう」
気でも狂っているのか、普通の人間ならそう思っても可笑しくない私達の会話はバンパイアと半バンパイアだからなり得ることだ。
主であるバンパイアのラーテン・クレプスリーとフリークサーカス団≪シルク・ド・フリーク≫に身を寄せてからもう随分と幾町を巡った。
未だに舞台の上は緊張する。所詮、クレプスリーの助手でしかないがお客の前には変わりないし、子どもが蜘蛛を笛で操っているとなれば自然と注目されるだろう。
「ミスター・クレプスリー&曲芸グモ、マダム・オクタ!」
団長であるMr.トールの掛け声と共に舞台へと上がれば目の前には大勢の人で溢れていた。きっと今日は満席なのだろう、後ろにも立ち見客が見受けられる。
ふとある席に目が留まった。中央席には私と歳の変わらない男の子が2人客席に座っている。真夜中に子どもがフリークショーを見に来ていることなんて今まであっただろうか?
ネアが短く笛を吹くとマダム・オクタは糸をつたって宙返りし、観客席からどよめきがあがった。気のせいか、黒髪の男の子は目を輝かせていた。
「いや、なんと美味!我が輩の故郷では極上のごちそうでして!」
クレプスリーがお決まりのセリフを決めれば私達のショーは終わり。舞台からそそくさと捌け、クレプスリーとテントへ戻るけれど彼の頬にある大きな傷跡は少しも形が変わらず何故だか険しい顔をしていた。
元々ニコニコするような性格ではないがそれでも毎日一緒にいる主の変化には気づくものだ。
「もしかして、さっきのショーそんなに悪かった?」
「……いや、お前の指示は完璧だった。ただあの子ども、妙に我が輩を見ておった。まるで我が輩の顔を知っているような目だった」
ひょっとすると私が余計なことを考えていたことがクレプスリーにバレて機嫌を損ねてしまったのかと思ったけれど、実際のところ見当違いだった。
先程の少年たちがクレプスリーを見ていた?そんなのあの場の主役なんだから当たり前じゃないかと口を挟もうとしたけれど、やたら考え込んでいる主を見て喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
クレプスリーの色白く不健康そうな肌に現れた眉間のしわは暫くの間ずっとそこに留まり続けていた。
巡業で初めて訪れたこの街は自然豊かで、どこにでもありそうなごく普通の街並みだった。
町の中心部から少し離れた所に佇む廃墟が今回のショーの舞台となっている。そこはかつて劇場として栄えていたようで広い舞台上や客席が今もそのままに埃をかぶっている状態だった。
聞けば、"何かが出る"という信憑性のない噂だけが広まり、普段は誰も寄り付かないいわくつきスポットと化しているそうな。
だがそんな噂があっても、フリークのサーカス団が街に来たと密かに広まればいわくつきの廃墟の客席も連日満席に埋まっている。
生憎、うちのサーカスは非常に珍しい異形のものたちがショーを行う、世に二つとないサーカス集団だ。お陰様でどこの街に行っても繁盛している。
それにしても最終日の今夜はやけにお客が多く感じられる。お客の熱気で会場内の室温はあがり、首元に張り付く自身のブロンド色の髪を耳にかけた。
「もうすぐ出番だ。準備を済ませておけよ、ネア」
「うん。分かってるよ、クレプスリー」
「血は飲んでいるのか?」
「うん。あっ、でももうボトルの血が少ないんだ」
「ならば今晩行くとしよう」
気でも狂っているのか、普通の人間ならそう思っても可笑しくない私達の会話はバンパイアと半バンパイアだからなり得ることだ。
主であるバンパイアのラーテン・クレプスリーとフリークサーカス団≪シルク・ド・フリーク≫に身を寄せてからもう随分と幾町を巡った。
未だに舞台の上は緊張する。所詮、クレプスリーの助手でしかないがお客の前には変わりないし、子どもが蜘蛛を笛で操っているとなれば自然と注目されるだろう。
「ミスター・クレプスリー&曲芸グモ、マダム・オクタ!」
団長であるMr.トールの掛け声と共に舞台へと上がれば目の前には大勢の人で溢れていた。きっと今日は満席なのだろう、後ろにも立ち見客が見受けられる。
ふとある席に目が留まった。中央席には私と歳の変わらない男の子が2人客席に座っている。真夜中に子どもがフリークショーを見に来ていることなんて今まであっただろうか?
ネアが短く笛を吹くとマダム・オクタは糸をつたって宙返りし、観客席からどよめきがあがった。気のせいか、黒髪の男の子は目を輝かせていた。
「いや、なんと美味!我が輩の故郷では極上のごちそうでして!」
クレプスリーがお決まりのセリフを決めれば私達のショーは終わり。舞台からそそくさと捌け、クレプスリーとテントへ戻るけれど彼の頬にある大きな傷跡は少しも形が変わらず何故だか険しい顔をしていた。
元々ニコニコするような性格ではないがそれでも毎日一緒にいる主の変化には気づくものだ。
「もしかして、さっきのショーそんなに悪かった?」
「……いや、お前の指示は完璧だった。ただあの子ども、妙に我が輩を見ておった。まるで我が輩の顔を知っているような目だった」
ひょっとすると私が余計なことを考えていたことがクレプスリーにバレて機嫌を損ねてしまったのかと思ったけれど、実際のところ見当違いだった。
先程の少年たちがクレプスリーを見ていた?そんなのあの場の主役なんだから当たり前じゃないかと口を挟もうとしたけれど、やたら考え込んでいる主を見て喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
クレプスリーの色白く不健康そうな肌に現れた眉間のしわは暫くの間ずっとそこに留まり続けていた。
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