≪血の契約≫
　血の契約とはバンパイアになるための儀式。体の一部(殆どが手の指10本)に傷を付けて自身の血を注ぎ込むことで仲間を増やしていくのだ。
　ダレン・シャンをバンパイアにするため、クレプスリーは自身の鋭い爪をダレンの指にぴったり付け、いっぺんに食い込ませ傷つけた。その直後、指先から血が滴り、その痛さに彼は引き攣った顔を浮かばせた。
　2人の手先が互いに合わさってクレプスリーからダレンへバンパイアの血を流し入れていく。
　程なくして2人の手は離れクレプスリーは自身の唾でダレンの傷口を塞いだ。


「ねぇ、これで僕もうバンパイアになっちゃったの？」
「ああ、2、3日すれば分かるだろう」


　見た目が変わらず本当に自分がバンパイアになったのか不思議そうにしているダレン。でも今の行為は、夢ではなくて彼は本当にバンパイアとなったのだ。


　「もしかして、君もバンパイアだったりするの？」
　「ええ、そのまさかよ。私もあなたと同じく半バンパイアで今はクレプスリーの手下。エマ・テイラー、よろしくね」


　手をひらひらふり、握手を求めて手を差し出せばダレンはよろしく、と返してくれた。


　「うむ。では早速、君のお友だちを助けに行こうではないか」


　クレプスリーはそう言い、私たち3人はその後すぐにスティーブ・レナードの元へ解毒剤を施しに行った。猛毒に侵されている彼は集中治療室にいて他の患者がいなく好都合だ。


　「これで本当に良くなる？」
　「ああ、明日にはぴんぴんしてるだろう。さて、大切な友人も助けたんだ、もうこの町に用はない。次の町へ移動しようじゃないか」
　「いやだ！」

　
　クレプスリーのフリットで移動しようとした時、ダレンがクレプスリーの腕を振りほどいた。
　
　
　「ほう、約束を破るのかね。だが、もはやどうにもならん、貴様はもう夜の生き物！我が輩の手下だ！」


　クレプスリーはしがみついている私を庇い、高笑いしながらフリットで進んだ。すぐにダレンの姿は見えなくなった。


　「連れ戻さなくていいの？」
　「放っておいてもどうにもならん、苦しむのはあいつだ。それも後に分かるだろう」


　ダレンが逃げたあの日から私はまたダレンの行動を観察した。
クレプスリーの言う通り、スティーブ・レナードはすっかり回復して学校にも来られるようになっていた。
　ダレンに関しては、だいぶバンパイアの力が現れはじめて、制御が難しくなってきてるようで、隠しておけるのも時間の問題だった。サッカーの試合中に怪我で足から出血した友だちの血をダレンは吸ってしまったのだ。すぐ我に返っていたが口元の赤は本物の化け物そっくりで逸話でよく聞くバンパイアにそっくりだった。


　「わ、我こそはバンパイアの王者なるぞ！お前らの血を吸うぞ！」


　とっさのセリフに周りの友だちは笑いあっていたが、少し離れたところで見ていたスティーブ・レナードだけは大きく目を見開いて笑っていた。