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●ときめき10題

5.ふと見せた男らしさor女らしさ


 少年は普段からヴィヴィ選抜を勝ち抜いてきた、フリリーな服を身にまとっている。
 そのためか、圧倒的に“可愛らしい”というイメージが先行し、それに付きまとって

“弱弱しい”というイメージも付着するらしい。
「なあ、ちょっとでいいからさぁ」
 臭い息と腐った声。
 路地裏でシグリが一人。柄の悪い男二人に絡まれている。
 身なりの美しさから、子供だが、それなりに金を持っているだろうと判断されたらし

い。
 貧しいスラムにはびこる貧しい魂はシグリを捉えた。
「ほう、それが人にものを頼む態度か?」
 壁際まで抑え込まれたシグリは怯えることもなく、普段と変わらない態度で接した。
 焦るのは悪男たちだ。
 びくともしないカモに、暴力的手段を匂わせるしかない。
 だが、手を出す前に手を出してきたのはシグリの方だった。
 カッと視界にスカートが広がる。次の瞬間、衝撃を受けて男の一人が倒れていた。
――シグリの蹴りが命中したのだ。
「ちょうどいい、練習相手にでもなれ」
 残りの一人に向かって眼光するどく少年が言う。
 たじろぐ男は、後方からの衝撃を受けて、その場に倒れた。
「はいはい、お嬢、暴れるのはそこまでな」
 小さな子犬をあやすような口調。
 現れたのは大柄の男――だが正体は吸血鬼。
「ヴィヴィ!」
「あのなぁ、シグリ。張り切るのはいいが、こういうときはまず俺を呼べよ」
「いや、自分に降りかかる火の粉は己《おのれ》で振り払わねばならない」
「……妙にかっこいいんだよな、そういうところ」
 ヴィヴィは溜め息をついた。

【END】
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