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●ときめき10題

2.不器用な優しさ
 寒くなる季節。
 枯れた葉が道路の隅に横たわり、枝ばかりになった街路樹が寂しさを誘う。
 叩く石畳の音も乾いている。
 この季節は苦手だ、とシグリは思う。
「ほらよ」
 小走りで戻ってきたヴィヴィの手に、紙の包みが二つ握られていた。
「……これは?」
 ヴィヴィは持っていた包みの一つをシグリに差し出した。おずおずとそれを受け取るシグリ。
「そこで売ってた」
 短く返答するとヴィヴィは包みを開ける。
 ふわっと蒸気が舞い上がり、姿を現したのは、紫色の物体だった。
 がぶっとくらいつくヴィヴィ。紫色の物体の断面は黄金色に輝いている。
「シグリも食えよ」
 男の真似をするように少年も頭からかぶりつく。
 熱さを感じた舌、その温度は溶けて全身へと広がっていく。
 ホクホクとした食感、香ばしい香り。
 これは一体――。
「なに? お前、焼き芋食べたこと、ないのか?」
「焼き芋?」
 こくんと小首をかしげるシグリ。その動きにつられて、黄金色の髪も揺れる。
「芋を焼いたやつだ。どうだ、美味いだろ!!」
「ああ、すごく」
 きらきらと輝くシグリの瞳にヴィヴィは満足げにうなづいた。
「良かった、良かった、冬も楽しくなってきたな」
「??」

【END】
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