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珈琲の作り方

「シグリ! そこにいたのか」

 少年が懇意な喫茶店の厨房に顔を出しているのを知って、
 ヴィヴィが慌てて訪ねてきた。

「朝、お前がいないんで探したぞ」
「う……悪かった」

 申し訳なさそうにうなだれるシグリ。

「で、何やってるんだ?」

 ヴィヴィの興味がシグリの手へと映る。
 作業台の上にはトレイがいくつか置いてあり、
 珈琲豆が幾つもその上に載っている。

「もしかして、ピッキング?」

 ヴィヴィの言葉にシグリが頷いた。

「ああ、店主にお願いしてさせてもらっている」
「へぇー、お前にでも出来ることがあるんだな」
「馬鹿か、失礼だぞ」
「はいはい、そりゃ失礼しました」
 カラカラと笑うヴィヴィの笑み。

 シグリは、よし! と
 気合を入れて長袖をめくり上げた。

「これから、作業再開だ」
「おう、頑張れよ」

「ああ、お前は表で待っていろ。
 美味いものが飲める、そのうち」

 シグリの発言にヴィヴィは目を見開いた。
 だが、すぐに元の表情へ――いや、
 普段よりも優しげな表情へと変化する。

 珈琲は苦いから苦手だといって、シグリはあまり口にしない。
 飲んでいても苦そうにして飲んでいる。

 へーえ。
 じゃあ、お前がピッキングを手伝っているってことはさ。

 ふふっとヴィヴィは口元を緩めた。
 こういうのも悪くはない。

「おう、じゃあな」
 ヴィヴィはひらりと身を翻して厨房を後にした。

【END】
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