呼ばれたので、行くしかなく…仕方なく向かうと横に座るように手でソファーをポンポンと叩かれて促された。
何の思惑かと、表情を見てみるが…相変わらず張り付けたような笑顔のために読めないので、諦めて横に座る。

「ワンピース、似合ってますねェ…❤あ、それは支給品ですよ。良かったですね❤」

ニコニコして私の表情を見ている…。
嬉しがった方がいい？兎に角、お礼を、言っておこうと思った。

『あ、ありがとうございま、す…。』

本心と違うことを表すのって、こんなにも難しいんだなと思った。

ぎこちないかもしれないが、頬をヒクつかせながらも笑って見せた。
私の本心などお見通しかもしれないが、今は、この約束の期間を何とか無事に過ごしたい。その気持ちでいっぱいだ。

「いえいえェ…オレちゃんに言わなくてもいいですよぉ…？明日また、ちゃんとお礼を言いましょうね？」

『は、はい…』

真横で見つめられるのって、こんなに緊張するもの？ブラックが、怖くて、表情が見れなくて俯いた。

――が、その刹那、顎をまた無理やり掴まれた。
さっきの様に顔を無理やり向けさせられる。

「カカッ❤人とお話する時は、ちゃんと目を見て話しましょうって、教わりませんでしたか？」

瞳孔が開いてる。
食い入るように見られて、本心を見透かされてるみたいだ…。

「後、さっきも…ちゃんと笑って挨拶をと言ったのに、泣いちゃいましたねェ。ちゃんと、言い付け、守れてないですよねェ…？」

さっきと同じところに、鉤爪が食い込んでいる。
痛い…。怖い…。

『ふ、うっ、ごめ、んな、さい…ごめんなさいっ！』

またボロボロと涙が溢れてくる。

『いた、い痛いです…やめ…て』

溢れた涙が、顔を捩ろうと動かしたことで、食い込んだ傷口から顎を掴んでいるブラックの指へどんどんと零れ落ちていく。

「やはり、本心が一番ですよ❤“今みたいに本心で”、お話ししましょう。お礼を言いましょう。そして笑いましょう。感謝をしましょうっ。

簡単なことですよね…？何でもありなんです。別に、裸で過ごしてもらってもよかったんですよォ…。貴女からすれば、着せ替え好きな視聴者さんがいて、良かったでしょう？❤」


あぁ……この人、本当に悪魔なんだ……。

顎を掴む力は、少しも緩めてもらえず、痛みはどんどんと強くなる。
痛みと共に、段々と熱を帯びていき、自分自身の涙が、傷口に染みることで余計に痛みを深める始末。

私の、意志なんて、感情なんて…　　　　“関係ない。”



「明日は、ちゃんと笑顔で、お礼言えますね？❤」

にっこりと首を傾げて、確認を取られる。