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1話
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・・・・・・・
鈍痛…と、言うのが正しいか…。
じんじんとした、まるで血液が大きく波打つような痛みと痺れに打ちひしがれながら、重い瞼を何とかこじ開けた。
周りは物が乱雑に転がっている。
コンクリートが剝き出しの、錆びついた部屋?とも呼べないようなところに横たわっている状態だった。
小石が突き刺さり、あちこちに擦り傷と痣ができている。
『廃墟……?』
老朽化によって、崩れた壁と、ぽっかりと空いた床下の穴。
崩れた壁からは、鬱蒼とした木の枝が伸びて、それが風で揺れていて、まるで枝の葉が手招きしている手のように見えた。
まだ暗いところを見ると、さっき、倒れて?からそんなに時間は経っていない…?
こんなところは見たことがない。
誰かに連れてこられたの…?
恐ろしくて、うまく動くことができない。
膝を抱いて蹲ることしかできない。
ぼーっと、何をするでもなく時が経つのを待っていると、後ろからドアの開く音がした。
『ッッ……!』
吃驚しすぎて、声が出ない。
全身の筋肉が強張り、そのせいか震えまで出てくる始末。
相手を見ること、それが精一杯だ…。
情けないが、現状に対しての混乱の余り、そもそも後ろを見ていなかったため、ドアの存在にも気付いていなかった。
「おや、起きたんですね。おはようございます❤」
『……ッ』
「あれぇ?意識あります?」
飄々と陽気な雰囲気を出して首を傾げているその男を、私は、知らない。
見たことがない…。
不自然に笑顔を張り付けたまま、無遠慮にパーソナルスペースなども気にも留めず近付いてくる。
人間離れした人形のような細い曲線を描いた体、動きがしなやかで動作が綺麗だ。
私に対して触れようと、黒い革手が伸びてくる。
その手に捕まりたくなくて、思わず後退ってしまった。
「おっと」
その一言と同時に、腰を引き寄せられた。
「…あの、ここのスペースは本当に老朽化が進んでいるので。今、落ちるところでしたよ…?❤」
目を細めて、敵意など持ち合わせていないように穏やかな声音で笑う男。
助けてくれたの……?と、一瞬気が緩む。