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because you're mine forever
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眩い白に、瞼の裏が埋め尽くされて刺激される…。
頭が思わず痛くなるような…一瞬何が起こったかとぎゅっと顔を顰めて耐える。
だが耐えてもその違和感に終わりが見えないので、仕方なく朧気に瞼を開けた。
………あ、朝か。
ぼやぼやと曇りがかった頭で原因を探ると、ベッド脇の窓のカーテンが開かれていた。
それを見て、一枚裏にある白いレースカーテンから漏れる朝日をダイレクトに顔面に浴びたせいだと、やっと理解した。
ベッドに視界を戻して隣を見ると、もうブラックがいなくて、ありゃ?と一瞬首を傾げてから、ダイニングへ向かう。
足を下ろしてトンッと薄気味のいいフローリングを蹴る音が響き、ダイニングへと繋がるドアを開けた。
そこにはブラックがもう起きて座っていた。
足を組んで、コーヒー片手にパソコンに目を向けていた。
「おはよう…」とピシッと背筋を伸ばして、若干手櫛で髪を整えた。
髪がぐちゃぐちゃかも…と目に入る部分…毛先を軽く確認してまたブラックに目線を戻す。
「名前さんはお寝坊さんですねぇ。おはようございます。」と、カップを机に置いて、ニヤリといつもの調子で笑う。
朝日によって、ただでさえ綺麗な肌が、尚白く綺麗に見えて思わず見惚れてしまう。
「早く食べないと間に合いませんよ?」
「う、うん。」
テーブルに目をやると、目玉焼きが乗ったトーストがお皿に乗せてあった。
ちょこんと椅子に腰かけて、ブラックが作ってくれたであろうその目玉焼きトーストに手をかけた。
「いっつも、ありがとう。」
ふにゃっとにやけてお礼を伝えると、一瞬目を見開いたのちすぐに「ぷ…」と手を口許にやり、震えるブラック。
「え?」と何か可笑しいところがあるかと自分のパジャマに注意を向けるが、可笑しいところがどこかわからず焦ってしまう。
「カカッ!寝癖が…今日もお間抜けさんですねぇ!」
そう笑い、「…これでも耐えてたんですが…何にも気付かないでふにゃって笑われると耐えられませんでした…。」
「お寝坊さんで、トースト持って寝癖立ててその顔はやめてください…」とこれ以上笑っちゃ可哀想だとでもいうような揶揄う表情で私を見る楽しそうな悪魔…。
「人の寝癖で、ずっと笑わないでくれる…!」
そんなに酷いのかと、顔が熱くなり、恥ずかしくなりながらも作ってくれた目玉焼きトーストに噛り付いた。
(そう言えば、昨日寝る間際の…名前呼び…もう元に戻っちゃったな。)
(あれって、寝ぼけてただけかな…?)
何となく昨日のことを意識してしまって恥ずかしい。
その恥ずかしさに焦るように、咀嚼を早めて食パンを喉に流し込んだ。
・・・・・・・
あっという間に昼休憩になり、社員食堂で食事を取る。
朝、あれからブラックは「今日は用事があるので、オレちゃんは着いていきません。」そう告げると羽根を広げて窓枠から足をかけてどこかに飛び去ってしまった…。
たまにそう言って側に居ない日がある。
離れてる間は何をしているのか、どこにいるのか、誰かといるのか…夜に家に帰ってからも特に報告されることはない。
だから私からも特に聞くことはしない。
執着してくる割に、自分のことをちゃんと話してくれないなんて、ちょっと不公平じゃないかと思うこともある…。
けど、あんまり問い質すようことをして、今日みたいにふいっと飛んで離れていかれるのが嫌だから、何も言えないままでいる。
昼食を取りながら、今日は早くお家に帰りたいな…とぼんやり思っていた。
「名前!今日は髪下ろしちゃって可愛らしいね!♡♡」
隣を見ると笑顔を浮かべる同僚が、手を振って私に挨拶してきた。
前の空いてる席に座ってきてニヤニヤと笑っている。
同じタイミングで新入社員としてやってきたから、同僚の中でも特に仲が良く、何でも気にせず話せる友達のような関係だ。
「なんか珍しくない??何で今日はそんなに大人っぽいのぉ?もしかして」
“デートかなぁ???”
悪気なく、キラキラとした女子トークを期待しているその瞳に、私は怪訝とした態度で答えるほかなかった。
「いや、それはないです…」
「ええええ!!!絶対そうだと思ったのに!!」
むっと頬を膨らませて、不満を全面的に出してくる同僚は本当にいつも飽きもせず彼氏は?好きな人は?と聞いてくる。
聞かれても彼女の望む答えは出せないだろう。
私の状態ははたから見れば明らかに不自然だし、理解なんてされない。
普通ではない……。
何故かチクリと突き刺さるように胸が痛んだ。
・・・・・・・
午後の仕事も無事に終わって、今日は定時に業務が終了した。
「お疲れーっ」
会社から出たその時に、後ろからぞろぞろと上司と同僚が出てきて、道が狭くて、何人かと体が触れてしまった。
けど今日はブラックはいないので、別に嫉妬されるに至らない…。
わざわざ報告しなきゃわからないだろうなァ…とぼんやりと思う。
何だか、日々些細なことで執着されていたからか、
今はされないと逆に物足りなくなってしまった、この体……。
落ち着かず、いつもより速足で帰路につく。
何も余計なことを考えず、歩を進めていると、昨日よりも外が明るい間に家の前へ着くことができた。
賃貸アパートの二階、自分の部屋の窓を見ると朝消して出たはずの電気が灯っていたため、ブラックが先に帰っていることが分かった。
階段を上がりカギを差し込みドアを開けた。
「ただいまァ!」
パンプスを乱雑に脱ぎ捨てて、ダイニングに向かった。
「名前さん、おかえりなさい。」
ブラックは、ごろっと体制を崩して雑誌を見ているところだった。
表紙の文字が、何語なのか全くわからないけど……。
魔界の雑誌かな…?
手を洗おうと洗面台に向かうと…いつの間にか鏡越しにブラックがいて
着いてきていたことに気付いてびっくりした。
「うわッ!びっくりした…!!どうしたの?」
「…何か、オレちゃんに言うことないですか…?」
伏せた目をしながら、静かに呟く。
何か言うこと…?ただいまはさっき言ったし…と思い当たらず「なに?」と聞いてみると、
鏡越しに映る目が酷く冷たくて、あまりの鋭さに体が動かなくなり、その場の空気が凍り付いたように感じた。
指一本だけでも動かせるかと、確かめることすら今は躊躇してしまう。そのぐらいの殺気?のようなものを放っているように感じた。
「名前さんの…この可愛らしい口は、黙っちゃうんですか?」
鏡に映るブラックの指がつー…っと私の頬を唇に向けてなぞっていく。
下唇をぷにゅっと二本の指で摘ままれた。
いつものように揶揄う様な表情は一切見せずに、真意の分からないまま唇をなぞっていた。するとその内の一本の指先が、咥内に入ってくる。
「…!!」
突然のその行動に、びっくりして頭がうまく働かない。
咥内の指先が、舌の上をするりとなぞり、そのまま舌の根元にまでゆっくりと押し込まれた。
この刺激で反射的に嘔吐しそうになり、思わず顔を背けて嘔吐しないように喉元を抑えて、呼吸を整える。
「~…う、な、んで?」
一瞬でも苦しくて、目の淵に生理的な涙がたまった。
ブラックの顔を睨みながら問うと、表情は相変わらず暗いままで。
「…オレちゃんに言わなきゃいけないことがあるのに言わないからです。
そんな悪い舌には、ちゃんと教えてあげないといけないので。」
「…だから、なにをっ」
「……知らない人間の匂いがします。」
会社から出た後、すぐに何人かと不可抗力でぶつかってしまったことを思い出した……。
今度は鏡越しではなく体で向かい合う。
ここは一人暮らし用の狭いアパートだ。
こんな場所で、大人二人いると逃げ場がない…。
追い込まれた私を見て、顎を掴んで、首に顔を寄せてスン…っと匂いを嗅ぐ仕草をする。
「悪魔は鼻がよく利くんですよ…?黙ってれば分からないと思ってましたか?」
何の感情もこもっていない声色で淡々と呟くので、怖くなった……。
さっきまで、私が求めていた執着が今形になって、私に襲い掛かってきているが…いざ目前にするとあまりに緊迫としていて…狼狽えてしまう。
「不可抗力、なんだけどなァ……本当に、忘れるぐらいの!!」
アハハ~…と、参ったなァとでも言う様な顔で弱く笑って見せるも、ブラックには通じないようで、不機嫌そうな目で私を睨んでいた。
これは本当にまずいと、もう覚悟を決めるしかないと俯き目を瞑った。
それを「了承」と解釈したのか、すぐにベッドまで抱っこされて連れていかれてしまう。
強制的に浮かされた感覚に思わず体が縮こまってしまい、ブラックの服にしがみついた。
ガチャッと開けた寝室は、照明が消えていてほんのりと薄明るい外の夕焼けによって中は照らされているだけだった。
下ろされた後は、そのまま覆いかぶされてしまった。
「名前さん…今日は、最後までしますね…?」
にやり…っと白く綺麗な牙の揃う歯を見せて笑った。
「…っ」