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because you're mine forever
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何とか仕事を終わらせて、帰路につく。
薄暗い夜を照らす街灯が、道路上にポツポツと等間隔に広がっている。
その横で闇に溶けるような黒を纏った悪魔が飛んでいる。
「疲れてないですか?」
ボソリと問い掛けてくる。
周りを見渡すが、今のところただの一人の人すら見えないから、私は答えた。
「疲れたよ…誰かさんにイジワルされる、し…」と軽く溜め息をつく。
チラッと反応を見ようと顔を向けると、炎のように薄明るく光る目と合った。
静かな怒りを潜めたような…街灯の逆光で表情はよく見えないが、良くない感情でいることはわかった。
「“あの人“のように、消してもいいんですけどね?」
私に聞こえないように、音として出さないようにしてるつもりか、喉奥で鳴らす微かな笑い声が聞こえる…気がする。
同時にひんやりとした風が横切って、髪が軽くなびいた。
“あの人“とは、私に危害を加えてきたある人の話…。
その人は、私の目の前で、無惨に体が飛び散ってしまった。
この悪魔の手によって…。
凶器なんてなく、あまりに不可解な事件だから、第一発見者の私は、警察に長い時間、事情聴取された。
警察にも見えないこの悪魔のことをどう言うことも出来ず、困り果て、頭を抱えた。
このままだと冤罪になるかと思ったのだ。
しかしこの悪魔は、そんな私の様子を見て「人間界って面倒ですよねぇ」と口を裂いたように笑い、パチンッと指を鳴らした。
信じられないがその動き一つで、その人を最初からこの世に存在してないように “消して“しまったのだ。
親も兄弟も、誰も覚えていない。
戸籍からも消失している。
写真からも不自然に切り取られたように、消えている。
関わりのあった仕事関係の者も、その人のしていた仕事を
(“誰だっけ?すぐ辞めたんだっけ?引き継ぎ出来てないのに困るよなぁ“)
と、都合よく記憶を塗り替えられてしまったのだ。
私の記憶からは消えてない。
その人を覚えている人間は、この世界で唯一私だけだ。
それから、もう人間を消さないでほしいと懇願した。
ブラックは何故?と全く理解ができない様子だったが、最終的に誰にも触させない、ということで納得がいったようだった。
「もし触ってしまったらどうなるの?」と聞いてみると、
「オレちゃんのイライラを抑えるために名前さんが協力してくれますか?」と言うのでどんなことをするのかわからないけど、まさかこんなことするとは思わず、「いいよ!」と安請け合いしてしまった…。
「お約束…ですよ…?」
そう目を閉じてニッコリ微笑むブラックに、見惚れて約束してしまって現在に至る。
だから、いじわるなんて言うのはお門違いというか、約束を忠実に守ってくれているブラックに、むしろ感謝するべきなのかもしれない…。
「い、いじわるじゃないよねーッ!」
ねえー!っと顔を傾けて微笑むと
「はい、そうです♪」
と飄々としていつもの笑顔で笑うブラックがいた。
さっきまで纏っていたどす黒い空気は消えていた。
(たまに出す雰囲気が、ちょっと怖いけど…)
(守られてるみたいで、心地いいんだよねえ…)
そう思ってしまう私はブラックに毒されているのかもしれない…。
そもそも、常人離れした容姿。
陶器のような白い肌、細身の体に力強い筋肉がバランスよくついていて、脳髄に響く色っぽい声、とにかく色気が凄くて…抗えない。
裂けた口から除く牙も、蛇みたいに長い舌も全部愛おしい。
消されたあの人は可哀想だったかもしれないけど、あの状況から助けてくれた、ブラックがいないと私はどんな日々を送っていたかとぞっとするから…。
・・・・・・・
帰って簡単に食事とお風呂を済ませて、床に就く。
明日も仕事だから、早く寝ないと朝起きれない…。
朝に弱いタイプであると自負している私はいそいそと布団にもぐる。
ブラックは布団には入っているが、うつ伏せになってパソコンで作業していた。
カタカタ…と強すぎず、ブラックの長い指から鳴るタイピング音が心地よい…。
さっきより暗く調整された、薄いオレンジの蛍光灯が、眠りへと誘う。
被った布団をもみもみと揉んでいると、その様子に気が付いたブラックが、フッと笑ってパソコン画面を閉じた。
どうしたんだろう?とぼやぼやする視界でブラックを見ると、
「どうぞ…?」と手を広げられる。
「!」…堪らず、顔が熱くなってしまう。
「そんな布団をもみもみして…カカカッ。甘えたければ甘えていいんですよ…」
そう目を細めて言うと、体を引き寄せて胸の中へ閉じ込められた。
「明日もお仕事なんでしょ…?今日はお疲れさまでした。名前、おやすみ……。」と、耳元でゆっくりとした低音で囁かれる。
名前を初めて親し気に呼ばれた?後、最後のおやすみで、いつもの敬語が外れていて、珍しいと思って見てみると、
微かに寝息が聞こえていて、寝たんかい!と突っ込みたくなった。
尖った耳が力なくだらんと垂れていて、スウスウと寝息を立てている。可愛い…。
睫毛、結構長いなァ…。首筋綺麗だし、鎖骨しっかりあってセクシーだなあ。
と、寝顔を見てぼんやりとそんなことを考えた。
私はその様子に、何だか相手が悪魔なのに癒されてしまって、そっとブラックの黒の革手に手を重ねて、指を絡めて
「……おやすみ。」と呟いて、自身も意識を手放した。