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冷たい――…
頬にチクリと刺すような圧迫感を感じる。
その感触に気が付くと同時に、私は地面にうつ伏せて倒れている体制であることを思い知る。
そのまま伏せた状態で、数回、浅い瞬きを繰り返す。
そして、薄く瞼を開けてみる。
白くモヤがかかるような、起き抜けの視界。
眼前には、御影石のような地面が…施工されていない荒削りのままの姿で、私の目の前に地平線上に広がっている。
真っ黒な表面に、銀の星が所々で散らばっているような輝きを放つ、余り見ない光景に一瞬飲み込まれた。
『…いたた。』
それも束の間、痛みに喘ぎながら、手を突いて体を起こした。
取り敢えず座り込む体制へと姿勢を変える。
起き上がる際に手を突いた、掌底部分に刺さった小石をパンパンと音を鳴らし、両手を合わせて払って、頬と足についた小石も払った。
――…無音。
普段そこらで聞くような、日常音が一切聞こえてこない。
乗用車の排気音。小鳥の囀り。信号機の切り替え音。風の吹く音。人の話し声。地面を蹴る様々な足音。
周りも、建造物はおろか、人っ子一人いない。生き物の気配がしない。
霧がかった暗い闇が、私の周りに広がっているだけ。
上空は暗いのに、どこから伸びているのか正体不明の光の筋が、まるでスポットライトが照らすかのように何本かの線になって降り注いでいた。
その筋と暗闇の境目がぼやけて白く滲んでグラデーションがかって、ゆらゆらと砂塵みたいな粒がその中心で反射して揺らめいていた。
まるで、黒と白だけの世界。
何故ここに居るのか、把握できない現状に、心臓の音がやけにうるさく鼓膜まで響く。
人間、理解しがたい事柄に直面すると、こんなにうまく体が動かなくなるんだな…と、冷静な思考を持つ自分がいることに驚く。
相反する体と思考に対し、もう考えたくないと…これが夢ならばと、目をぎゅっと瞑った時だった。
「こんばんは~。」
バサバサッとした音と共に、蝙蝠の翼に似た被膜を震わせて、スモッグの霧から私の正面へ、足から先に降り立つ者が見えた。
『こ、こん…?』
人として馴染み深い挨拶をしたその男性は、「よっと、」と体制を整えて顔が良く見える位置まで歩み寄ってきた。
順光が照らし出す素顔は、人間に似た何者かであることを認識させた。
目の前の男は、片手から手品のようにノートパソコンを暗い光と共に出現させると、
「アンケート出してくださいましたよね?オレちゃん、会いに来ちゃいました♡」
とにっこりと笑いかけてくる。
半月状に目を細めて笑うその男性の横に、小さいカメラのような…小さいものが動き回っていた。
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