仕事が終わり、夜も更けた頃。
今日は仕事で簡単なミスをしたせいで、上司になまけているのかと怒られてしまった…。
残業中で、イライラしてたんだろう、叱責もいつもより強くて…自分に対してやるせなさを感じるとともに、落ち込みながら帰路に着いていた。

マンションの目の前まで帰ってくると、自分の部屋の照明が点灯していることに気付いた。


「あ、今日はいるんだ…？」

安堵したような、気の抜けた吐息と一緒に口から漏れる言葉。
そう気付くと落ち込んでいたはずの心に灯りがともる。
浮足立ち、バッグから手鏡を取り出すとおかしいところはないかと簡単にチェックする。

チェックした後、エレベーターに乗り階層を押し、部屋へと向かった。


『ただいまっ』

玄関の照明をつけて、履き慣れているパンプスを脱ぐ。

入るとすぐに相手の顔が見えた。


「ああ、お疲れ様。お邪魔させてもらってるぞ。」

自分の飼っている猫と戯れている彼がいた。
猫は膝の上で、すっかり甘えていてお腹まで見せて手足を伸ばしている。
警戒心のない様子が、愛らしい。