宇佐見菫子の憂鬱
あの日出された宿題の解が出ないのは仕方ないとして、授業の方も段々とステップアップしていき、少しだけつまづくことが多くなってきた。
時折勉強を見てくれる小野寺が言うには、
「ウッチーはケアレスミスが多いんだよ。ちゃんとやれば出きる問題を些細なことで間違えてる。面倒臭がらずにしっかりと解いていけば赤点なんて取りようがないと思うけどね」
とのこと。
ケアレスミスに関しては他の奴からも言われたことがあるので何も言い返せなかった。
しかしだ、小野寺よ。普段の勉強に付け加えて一種のなぞかけもしなくてはならないとなると必然的に注意力が散漫になるわけであってだな。
「なぞかけ?そんなことを考えながらじゃ解ける問題も解けないにきまってるじゃないか」
本当にそうだ。しかし、忘れようにも頭にこびりついて離れないのが厄介なのだ。
そして、昼休み。もはやお馴染みとなった林田と小野寺との三人で弁当を食べている時だった。
「それで、ウッチーの悩んでるなぞかけって?」
「どうしたどうした?こいつ、なぞかけ何てやってるのか?」
「やってると言うか出題され……てるんだよ。昔の、マイナーなゲームでさ」
一瞬奥の席の宇佐見がこちらを睨んだ……気がして、古いゲームの問題という体で二人に手助けをして貰う。恐らくは小野寺だけで足りるんだろうけど。
「それで、いったいどんな問題なんだい?」
「ホワイトクォーツ、それに対応する言葉を探せっていう問題でな」
「それだけ?」
「ああ、これだけだ」
「それだけって……ゲームなんだろ?何かヒントがあるんじゃないのか?」
「あったらよかったんだけどなぁ……」
林田の言う通り、普通のゲームならばヒントがあるのだろうけど、この問題に関してはノーヒントだ。
「……それじゃあ、その問題に至るまでのイベントで何かヒントになる事があったんじゃないのかい?」
「でも、昔のゲームなんだろ?そんな回りくどい攻略法があるのか?」
二人の議論を聞きながら、あの日何が起きていたかを振り返る。……夕暮れの図書室、聞かれていた独り言……いや、何処にもそんなヒントはない。
「いや、覚えている範囲だと全然ヒントらしいのはなかったはずだぞ」
「それじゃあ、何かのバグで没データがイベントとして出てきたとかじゃないのか?ほら、隠しキャラを一定の方法で無理やり出現させたり、一度の戦闘でレベルを最大まで上げるバグとかあるだろ?」
「あとは、その言葉自体がヒントって可能性もあるけど……今回ばかりは林田の言う通りかな。もうすぐ中間も始まるんだから、そろそろ勉強に集中しなよ、ウッチー。」
「くっ、耳が痛い……」
結局答えにたどり着くどころか解決へのヒントも出ないまま、その日の昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
正解がわからないというどうにもモヤモヤした気持ちのまま、気がつけば中間考査まであと2日。最後の追い込みということで今日もまた小野寺に付き合ってもらい放課後の勉強会を行うつもりだったのだが、
「ごめんよ、ウッチー。急用が出来てしまってね……」
「なに、そもそも小野寺の善意で教えて貰ってたんだ。プライベートを犠牲にしてまで俺の成績向上に手を貸さなくても大丈夫だぞ」
「今まで見てきて思ったんだけど、やっぱり基礎は出来てるんだから本番でも注意深く設問を解いていけば問題ないはずだよ。流石に一年最初の試験で赤点なんて取りたくないだろう?」
全くだ。……応用問題が出てきたときが一番怖いが、基礎が出来ているなら大丈夫だろう。お前の太鼓判もあることだしな。
「そういう慢心もよくないと思うけどね。とにかく、今日明日としっかり復習をしていれば平気なはずだよ」
と言った感じで、急遽放課後に時間が空いてしまった。
普段なら運動部の活発な掛け声や吹奏楽部や軽音部の奏でる音色で賑やかな放課後の校舎もこの試験前という期間に入ると静まり返り、廊下を歩く自分の足音がやけに大きく聞こえてくる。そして気がつけば、また図書室へと足を運んでいた。
今となっては家だろうが学校だろうがあの問題のせいで集中出来ないのだから、それならば一度出題された場所にいけば何か見つかるのではなかろうか?という考えと無為に時間を浪費するよりも勉強からの逃げ場が少ない分、学校に残った方がいいだろうという考えがある。
図書室には疎らに人がいる。恐らくは俺と同じように勉強のためにここに来ているんだろう。普通教室と比べれば空調がある分、幾分か過ごしやすいからな。
空いている机の一角に鞄を置き、勉強の前に別の課題について調べるために鉱物に関連する資料を探す。なにか見つかればいいのだが……。
クォーツ自体は様々な色や種類があり、件のホワイトクォーツというものも存在する。そうすると対応するならば白の対として黒、ブラッククォーツ……いやこんなあからさまな答えな訳がないだろう。もうお手上げ状態だとページをめくる。
「……ん?」
そこにはあまり詳しくない自分でもわかる鉱物の写真が載っていた。
「へー、これもクォーツの一種なのか……あれ、そうするとあの言葉は」
慌ててスマートフォンの検索ボックスにその言葉を入力する。が、出てくるのはパワーストーンや天然石のサイトばかり。
「なんだ、何が足りないんだ?」
その言葉の後ろに何が続くのか、もしかするとこの問題の答えはその言葉なのだろうか。資料集を本棚に戻し、一度鞄を置いた席に座りノートを開く。
気晴らしに試験範囲の復習を……と思ったのだが、あと一歩まで来ている気がして勉強に集中できない。
開いたノートには宇佐見から出題された言葉についての考察が雑多に広がっていた。
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時折勉強を見てくれる小野寺が言うには、
「ウッチーはケアレスミスが多いんだよ。ちゃんとやれば出きる問題を些細なことで間違えてる。面倒臭がらずにしっかりと解いていけば赤点なんて取りようがないと思うけどね」
とのこと。
ケアレスミスに関しては他の奴からも言われたことがあるので何も言い返せなかった。
しかしだ、小野寺よ。普段の勉強に付け加えて一種のなぞかけもしなくてはならないとなると必然的に注意力が散漫になるわけであってだな。
「なぞかけ?そんなことを考えながらじゃ解ける問題も解けないにきまってるじゃないか」
本当にそうだ。しかし、忘れようにも頭にこびりついて離れないのが厄介なのだ。
そして、昼休み。もはやお馴染みとなった林田と小野寺との三人で弁当を食べている時だった。
「それで、ウッチーの悩んでるなぞかけって?」
「どうしたどうした?こいつ、なぞかけ何てやってるのか?」
「やってると言うか出題され……てるんだよ。昔の、マイナーなゲームでさ」
一瞬奥の席の宇佐見がこちらを睨んだ……気がして、古いゲームの問題という体で二人に手助けをして貰う。恐らくは小野寺だけで足りるんだろうけど。
「それで、いったいどんな問題なんだい?」
「ホワイトクォーツ、それに対応する言葉を探せっていう問題でな」
「それだけ?」
「ああ、これだけだ」
「それだけって……ゲームなんだろ?何かヒントがあるんじゃないのか?」
「あったらよかったんだけどなぁ……」
林田の言う通り、普通のゲームならばヒントがあるのだろうけど、この問題に関してはノーヒントだ。
「……それじゃあ、その問題に至るまでのイベントで何かヒントになる事があったんじゃないのかい?」
「でも、昔のゲームなんだろ?そんな回りくどい攻略法があるのか?」
二人の議論を聞きながら、あの日何が起きていたかを振り返る。……夕暮れの図書室、聞かれていた独り言……いや、何処にもそんなヒントはない。
「いや、覚えている範囲だと全然ヒントらしいのはなかったはずだぞ」
「それじゃあ、何かのバグで没データがイベントとして出てきたとかじゃないのか?ほら、隠しキャラを一定の方法で無理やり出現させたり、一度の戦闘でレベルを最大まで上げるバグとかあるだろ?」
「あとは、その言葉自体がヒントって可能性もあるけど……今回ばかりは林田の言う通りかな。もうすぐ中間も始まるんだから、そろそろ勉強に集中しなよ、ウッチー。」
「くっ、耳が痛い……」
結局答えにたどり着くどころか解決へのヒントも出ないまま、その日の昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
正解がわからないというどうにもモヤモヤした気持ちのまま、気がつけば中間考査まであと2日。最後の追い込みということで今日もまた小野寺に付き合ってもらい放課後の勉強会を行うつもりだったのだが、
「ごめんよ、ウッチー。急用が出来てしまってね……」
「なに、そもそも小野寺の善意で教えて貰ってたんだ。プライベートを犠牲にしてまで俺の成績向上に手を貸さなくても大丈夫だぞ」
「今まで見てきて思ったんだけど、やっぱり基礎は出来てるんだから本番でも注意深く設問を解いていけば問題ないはずだよ。流石に一年最初の試験で赤点なんて取りたくないだろう?」
全くだ。……応用問題が出てきたときが一番怖いが、基礎が出来ているなら大丈夫だろう。お前の太鼓判もあることだしな。
「そういう慢心もよくないと思うけどね。とにかく、今日明日としっかり復習をしていれば平気なはずだよ」
と言った感じで、急遽放課後に時間が空いてしまった。
普段なら運動部の活発な掛け声や吹奏楽部や軽音部の奏でる音色で賑やかな放課後の校舎もこの試験前という期間に入ると静まり返り、廊下を歩く自分の足音がやけに大きく聞こえてくる。そして気がつけば、また図書室へと足を運んでいた。
今となっては家だろうが学校だろうがあの問題のせいで集中出来ないのだから、それならば一度出題された場所にいけば何か見つかるのではなかろうか?という考えと無為に時間を浪費するよりも勉強からの逃げ場が少ない分、学校に残った方がいいだろうという考えがある。
図書室には疎らに人がいる。恐らくは俺と同じように勉強のためにここに来ているんだろう。普通教室と比べれば空調がある分、幾分か過ごしやすいからな。
空いている机の一角に鞄を置き、勉強の前に別の課題について調べるために鉱物に関連する資料を探す。なにか見つかればいいのだが……。
クォーツ自体は様々な色や種類があり、件のホワイトクォーツというものも存在する。そうすると対応するならば白の対として黒、ブラッククォーツ……いやこんなあからさまな答えな訳がないだろう。もうお手上げ状態だとページをめくる。
「……ん?」
そこにはあまり詳しくない自分でもわかる鉱物の写真が載っていた。
「へー、これもクォーツの一種なのか……あれ、そうするとあの言葉は」
慌ててスマートフォンの検索ボックスにその言葉を入力する。が、出てくるのはパワーストーンや天然石のサイトばかり。
「なんだ、何が足りないんだ?」
その言葉の後ろに何が続くのか、もしかするとこの問題の答えはその言葉なのだろうか。資料集を本棚に戻し、一度鞄を置いた席に座りノートを開く。
気晴らしに試験範囲の復習を……と思ったのだが、あと一歩まで来ている気がして勉強に集中できない。
開いたノートには宇佐見から出題された言葉についての考察が雑多に広がっていた。
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