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宇佐見菫子と初めての後輩


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 最近は陰鬱になるくらい雨が続いている。まあ、六月で梅雨だから仕方ないといえば仕方ないのだけど。
 ただ、こちらの天候と向こうの……幻想郷での天候は合致していないようで、今月二十四日のUFOの日は土砂降りの大雨だったのに、あっちじゃ星も見えるくらい澄み渡った夜空で、来るかなーってUFOを呼んでみたら……まさか本当に現れるなんてね。


 閑話休題(それはさておき)、ここからの話はその後に私が体験した、至って普通な……不思議や秘密を追う秘封倶楽部の会長にとっては記録する必要もないくらいの、よくある話。……だけど、この話だけは忘れたくなくって、急遽別のノートに書き綴っている。
 後で読み返したらあまりの恥ずかしさで、すぐさま捨てたくなるのかもしれないけど。
 秘封倶楽部の活動振り返り日記という形よりも現代に生きる女子高生の……私、『宇佐見菫子』の日記として書き記しておきたいと思ったのである。

  幻想少女見習いの覚え書き

 UFOの日翌日の六月二十五日、月曜日。
 いつも通りに通学して、いつものように朝のSHRまでの時間を自分の席で突っ伏して過ごす。そうすれば誰も関わろうとしない……と
去年までは思っていた。
 ところが去年のある一件で私は友人を作ってもいいかもしれないとうっすら思い、その直後とある男子生徒を自らのサークル『秘封倶楽部』に入部させる事になる。
 それが切っ掛けなのかそれ以降本当にちょっとずつ他のクラスの子達と喋るようになり……。
「おはよー宇佐見さん」
「んー、おはよう」
「うさみんはやーい」
「今日はたまたまよ。早すぎてまだ眠いもん」
 とまあ、それなりの日常会話は出来るくらいの関係性が築けている。
「でも、いつも眠い眠いって言いながら朝イチに来てるよね。なにか理由あるの?それとも昔からの習慣?」
「えっ、それは――」
 誰もいない時間帯だとテレポート登校してもバレないから。なーんて言えないのよねぇ……。
「遅刻するよりかマシなんじゃない?とはいえ、授業中の居眠りはもうすこし控えて欲しいのだけど」
 どう取り繕うかと考えていると、窓側の隣の席にいる委員長がお小言と一緒に助け船を出してくれた。
「あはは……善処します」
「けど、委員長の言う通りだよね。宇佐見さん成績はいいけど居眠りとかで授業態度はお世辞にも良いとは言えないから……。朝はもう少しゆっくりしてみれば?」
 そうだね。と笑いながら返事をし、続いてはじまった話題を話し半分で聞き始めた。

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 もうすぐでホームルームもはじまる時間になるが、とある生徒が室内に見当たらない。
「あれ?どしたのうさみん」
「へ、どうもしてないけど」
「またまたー。急にソワソワしだして……あっ、なるほどねぇー」
「なによ、一人で勝手に納得して」
「山内くんまだ来てないもんね、遅刻しないかって心配なんだ」
「ちょっ、なんでそうなるのよ!?」
 突然声を荒げたせいでなんだなんだと、お喋りしていた他の子達がこちらに視線を向ける。
「知ってるよー、去年の文化祭でひと悶着あったって。それで、実際のところ……どうなの?」
「どうなのって……」
 別になんもないんだけど、正直にそう答えたところで「またまたー」って永遠と質問責めにされそうだし、かといって下手なこと言うとあの時みたいに認識のすれ違いが加速しそうだし……。
 じゃあなんだ?嘘だけども「実は~付き合っちゃって~」とか言おうものなら私の方が耐えられない。絶対に。そういう色恋沙汰とは無縁なので。
 それに変に答えたのが原因でからかわれる可能性も増えると考えると、この手段だけは取ってはいけない。そもそもそういう関係じゃないし!
 ちらりと聞いてきた相手を確認すると、目を輝かせてこちらの答えに期待しているようで、それを見て本当にどうしようか悩んでいると呆れたようなため息と共にまたも委員長が助けてくれた。
「もうすぐホームルームよ?ほら、自分の席に戻った戻った」
「ちょっと、委員長ー!良いところなんだからさ!」
「あんまり本人が言いたくない事を聞くのはどうかと思うわよ?……まあ、思い出して恥ずかしくなってるだけかもしれないけど」
 いや、これ助けたんじゃなくて状況を悪くしたな?
「ほほーう……そしたらうさみん!また後で聞きに来るから!ちゃんと教えてよね!」
 そう言うと楽しみが増えたからなのか、機嫌良く自分の席に戻っていった。
「えーと、一応……ありがと」
 余計なことを付け加えてくれたけども。
「どういたしまして。……噂の真偽はどうでも良いんだけど、隠したり否定するなら周りからどう見られてるかをしっかり認識した方がいいわよ?」
「どう見られてるかって言われてもねぇ」
 おそらくは寝てばかりいる好成績の優等生とか、無愛想でなに考えているかわからない人あたりじゃなかろうか?
「宇佐見さんは自分の評価に無頓着すぎないかしら……。しょっちゅう下校時刻ギリギリまで校内にいて、その上特定の相手と常に帰ってるとそりゃ変な噂も再発するわよ」
「……はい?」
「だから、ほぼ毎日のように山内くんと遅くまで一緒にいて、帰りも同じように並んで歩いてるくせに、付き合ってないとか好意がないって言うのは無理があるでしょって事」
 委員長にそう言われ一瞬頭が真っ白になる。「ああ、前の噂が持続してるんじゃないのね」と安堵する自分もいたが、それよりも気になったのが、なぜ彼女は下校時の事を知っているのだろうかという事だ。
「……なんで下校時のことも知ってるのよ?」
「クラス委員だからって訳じゃないんだけど、結構いろいろ手伝いとかしてると下校時間ギリギリまで残ってたりするのよ。それで手伝ってる時に窓の外見たら楽しそうにしてる貴女たちをよく見かけてたわ」
 極力誰にも会わないようにするためフィールドワークの時以外は最終下校時間まで粘るようにしていたのは確かなんだけど、そう何度も見られるものなのだろうか?
「あとは、体育会系の部活って遅くまで残るから。それで帰るときに見かけたって話をちらほらしてるのを聞いたりしてね。去年のクラスメイトがそこから話膨らませたんじゃないの?」
「うわぁ……ちょっと迂闊だったわ。ちょっと見られるのは仕方ないと思ってたけど……」
 小さな噂になるくらいなら校外のほうが安心なのかな?一度別れて外で合流というのが楽かもしれない。
「ん……あれ?山内くんへの好意とかは否定しないの?」
「へ?あー、いや……本人いない所で変に答えると去年みたく無駄に拗れそうだからその部分はノーコメントで」
「そう。それじゃあ、いま言ったことをそのままあの子に言ってあげたら?変に取り繕うよりもいいと思うわよ」
 そう言うと委員長は先程まで読んでいた文庫本に栞をはさみ、机の横にかけている鞄へしまい、程無くして教室に先生が入ってきた。
「おーし、お前ら席につけー。出席とるぞー」
 入ってきた扉を閉めて、教壇に立ちつつ担任は出席をとり始めた。


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