このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

宇佐見菫子と初めての後輩

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 四月末、新入生たちもだいぶ学校生活に慣れてきたようで、仮入部期間を終えた部活動も活発になりだしてきた。
「……暇ねぇ」
「新年度早々頻繁に怪異というかオカルティックなことに巻き込まれるよりは暇なほうがいいと思うけどな……」
 この部活、『秘封倶楽部』は世界の秘密を暴くために活動をしている東深見高校の非公認の部活動なのだが……ゴールデンウィークも目前に控えた本日、特にやることもなく勝手に使っている空き教室で時間を潰していた。
「なーんか疲れちゃって、普段みたいに何処かへフィールドワークに行こうって気にもならないのよねー」
 会長である宇佐見はだらしなく長机に突っ伏しながら前方へ伸ばした手でスマホを弄っている。
「……ん?もしかしてウッチーが入ってそろそろ一年経つの?」
「あの言葉さがしに合格貰ったのって六月くらいだろ?中間考査の勉強もしてたし」
 一年前、この部活に加入するためのテストと称して彼女からある都市伝説にまつわる言葉をさがしてこい、と出題され何とか正解にたどり着き活動を共にすることになった。
「言われてみればそうだったわね……。ちょっと早いけど一年活動してみてどうだった?」
「そうだなぁ……」
 どうだった?と尋ねられ、入部以降起こったことを思い出しながら、俺は口を開きはじめた。

《閑話休題:オカルティック・リメンバー》

「一番思い出しやすいのは……うん。夜の学校に不法侵入したどころかガチで超常現象というか都市伝説に遭遇したことかな。あれには驚いたよ」
 昨年の七月ごろに学校内で良く耳にするようになった出所不明の噂話……いわゆる七不思議の調査と称して深夜に校舎内に忍び込み、まあ色々あったのだ。
「まあ、そうよねぇ。私だってあんなにポコスカと出会うなんて思ってなかったもん」
「あれだけ遭遇するならもう少しお守りとかそういうものも準備したんだけどなぁ……って、そういえば、あの日の最後に見つけた人形ってどうしたんだ?いつからか見かけなくなった気がするんだけど」
「あんなに色々出くわしたのに怖いとかないんだ。あの子?詳しい人に預けてお手入れして貰ってるんだけど……話さなかったっけ?」
 此方に訊ねるように宇佐見は首をかしげる。その不法侵入した日の最後に一体の古めかしい人形を拾って部室に飾っていたのだが、最近室内では見当たらずもしかして勝手に動き出したり……?と変な考えが頭をよぎっていた。
「今はじめて聞いたんだけど……まぁ、所在がはっきりしてるなら問題ないか」
 特にあの人形が原因で怪現象起きているわけでもないし。……多分。
「それで、他にはないの?秘封倶楽部(このかつどう)での思い出と言うか……印象深いこと」
「印象深いことねぇ……」
 正直どれもこれも濃すぎる気がするせいか、印象に残りにくいというか……あっ。
「一時期クラスでも噂になってた『マンションの幽霊』の調査は結構印象深いかな」
 『マンションの幽霊』、東深見高校に通う生徒の間で話題になっていた、いわゆる都市伝説じみた噂話の一つ。丁度俺や宇佐見が使う電車の線路沿いに古いマンションがあり、空が暗くなり出した時間帯にそのマンションの一室に人影が見えたという話がまことしやかに囁かれていた。
 その噂を聞き付けた宇佐見に引き摺られ件のマンションをこっそりと調査したという話なのだが……。
「結局、電車から見える位置には見間違えるようなものは何も無かったのよね。……私たちが行った時は幽霊の類いも見なかった訳だけど」
「あの日も言ったけど、火のない所に煙は立たないともいうから何かしら噂になる下地はあったんだろ?それが何かまではわからないけどさ」
 それじゃあ今度の活動でこの事を掘り下げていきましょうよ。場所も近いんだし良いでしょ?と宇佐見が聞いてきたので、確かに放課後に変に遠い所まで連れ回されることも(金銭的に)少なくなるだろうし、それは良い提案かもしれないと思い「そうだな」と返事をする。
 その時の会長の顔はいつにも増して笑顔だった。……ような気がする。

.
5/10ページ
スキ