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宇佐見菫子と初めての後輩

「ただいまー」
「おかえり。鈴香が聞きたいことがあるって言ってたけど……学校で何かあったの?」
 家に帰ると不安そうにしている母親からそう訪ねられた。
「部活の事だとしても、オリエンテーションは明日だから……なんだろ?特に何もないと思うけど、着替えたら話聞いてみるよ」
「お願いね、それじゃ買い物行ってくるから」
 その場で母親を見送ってから着替えるために自室へと向かう。 
 すると階段を登る音に気がついたのか、鈴香の方から声をかけてきた。
「兄さん兄さん!兄さんの同級生か先輩に赤縁のメガネ掛けた女の人っている?」
「急いで聞きたいのはわかったから、階段を塞ぐんじゃないよ……」
「あっ、ごめん。……それで赤縁メガネの先輩っている?」
 階段を上りきり、部屋の扉の前に寄りかかりながら妹の質問に答える。
「赤縁メガネなんて何人かいると思うけど、他に特徴とかないのか?」
「えーと……なんだろ……髪型はおさげ、だったかな?肩ぐらいの高さで両側結んでて……」
 赤縁メガネのおさげ……と聞いて一瞬宇佐見のことが頭をよぎる。ただ、二学年分の女子生徒となると鈴香の探している相手が宇佐見という可能性は低いだろう。
「あとは……あぁ、一瞬のことだったから覚えてないや」
「というよりも、急に人探しなんてどうしたんだ?」
「いや、その……今朝色々あってね。助けてもらった人にしっかりお礼いえてないんだ」
「色々ねぇ……もしかして、満員電車に荷物忘れてそれを拾ってもらったとか?」
「え!?なんでわかったの?エスパー?」
 冗談のつもりだったんだが……。
「あー……クラスでそんな話してるの聞いてさ。明日時間作れないか聞いておくか?」
「ホントに!?お願いします!」
 手を合わせて頼んでくる妹に、「連絡ついたらスズにも教えるから」と伝えて部屋に入った。


 ふぅ、と一息つき制服の上着を脱いでから宇佐見にメッセージを送る。
「『明日のオリエンテーションの後に教室で待ってる』っと」
 ……思うと、連絡先教えてもらってから私用で連絡とるのははじめてかもしれない……。
「普段は活動の話ばっかりだもんなぁ」
 というよりも業務連絡に近いやり取りばかりで、こちらからの返信は二文字で終わることが殆ど……。
「多少はこういう会話でも普段通りの口調にした方が良かったりすんのかな」
 何だかんだでそろそろ一年の付き合いになるわけだし。
 そんな事を考えていると、ピロンとメッセージの通知が鳴る。
『えっと、送り先間違えてない?』
 はて、と首をかしげつつも『宇佐見に用があるから間違えてないはずなんだが』と直ぐに返事を送る。
 送ったと同時に既読マークがついたかと思うと連続してメッセージが送られてきた。
『女子相手にそんな誘い方したら勘違いするでしょうが!』
『私だから良かったものの!』
『というか私相手でもせめて用件くらいつけなさいよ、バカ!』
 散々な言われようである……。が改めて送った文面を見直すと、これは確かに勘違いをしかねないものだった。
『悪い』
『詳しく言うと、明日のオリエンテーションの後に妹を合わせたいから教室で待ってる……ってのが送りたかった事で』
 慌てて謝罪と何であんな誘い方したのかを説明する。
 すると、『何で妹さんに?』と当然な反応が帰ってきた。
『部室で聞いた話の宇佐見が助けた新入生って言うのが妹でさ、お礼言いたいんだと』
『そんな偶然ってあるのね……』
『そりゃこっちの台詞だっての』
『わかったわ、明日は終わり次第教室ね』
『よろしく頼むな』
 最後のメッセージを送り、ボスンとベッドに倒れ込む。
「普段通りの口調の前にいっぺん送る文章見直す癖つけないと……」
 ともすれば、文化祭であった勘違いの時のように退部することになるかもしれないのだから。

 ただ、普段より多少長くやり取りできた事をどこか嬉しく感じていた。

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