如月センディング
ーお礼の3月 ~return giftー
何かに集中すると一ヶ月なんてあっという間で……夜はサナエちゃん指導のもと、幻想郷での料理教室が、自宅ではお母さんの丁寧な指導により、どうにか形の見映えは良くなった。味の方は……分量を極端に間違えない限りは問題ないだろう。
そうして下手なりに彼へのお返しを用意する事が出来た。出来たのだが……。
「改めて渡すとなると少し……いや、結構恥ずかしいわね……」
人がいない教室で渡すのは仮に誰かが入って来るかもしれないから却下。かといって教室で別の場所に呼び出すなんてもってのほか。
それなのでいつも通りの場所で待っているのだけど……。
「遅い……!」
いや、約束した訳じゃないから仕方ないんだけどね。だとしても普段からすればだいぶ遅く感じてしまう。
「変に意識してるから余計に長く感じちゃってるのかな……。ってやめやめ!下手に考え込まない!これはお礼!それだけ!それ以上でもそれ以下でもないんだから!」
「おいおい、そんな声大きくすると廊下まで聞こえるぞ?」
「はぇ……?ちょっ、いつからいたの!?」
そんな言い訳を自分に言い聞かせるように口にしていると待っていた相手から声をかけられ情けない声をあげてしまった。
「あー……丁度いま来たところだよ」
恐らく私の独り言を聞いていたが気を利かせてくれたのだろうか。心を読めば彼が言っている事が本当かどうかなんてすぐわかるのだけど……。この前なぜかこの能力が暴発してしまい意図せず彼の思考を読んでしまったこともあるので、彼の心の内は読まないようにしている。
一番踏み込まれたくない部分を断りもなしに覗くのはデリカシーが無さすぎる。それが友達ならなおさらだ。
「それならいいけど……今日は遅かったのね?」
だから私は下手に踏み込まず、当たり障りのない会話を続ける。
「そうか?普段と同じ……いや、配って回ってたから少し遅いかもしれない」
配る?いったい何を……ってまさか。
「まさかとは思うけど、今日も何か作って来た。なんて言わないわよね?」
「そりゃ、先月貰ってるわけだからお返し持ってくるだろ?」
「いやいやいや、確かにそうだけどさ!ウッチーは渡した側じゃん!むしろ今日貰う側でしょ!?」
「そうなんだけどさぁ……渡したあとにその場でお返し貰ってるわけじゃん?そうなるとやっぱりホワイトデーにはお返ししなくちゃ変かなと……」
そういうとおもむろに鞄の中からガラスの容器を取り出した。
「損な性格してるわね……あれ?クッキーじゃないんだ」
「バレンタインと同じじゃ芸がないだろ?それだからチーズケーキ作ってきたんだ」
配っていたからか1ホール丸々ではなく、二人分くらいに切り分けられているチーズケーキが容器に残っていた。
「すご……手作りできる物なのね」
「粉をふるいにかけるのが手間っちゃ手間だけど、作業量はこの前のクッキーと同じくらいかな」
いや、男子なのに女子力たっかいなぁ……。
当然のようにケーキを作ってきているのを見て、自分のお返しなんて……と思ってしまう。
「フォークとか無いから行儀悪いけど手で食べる感じになっちゃうけど大丈夫か?」
「え?貰っていいの?」
「チョコくれただろ?そのお返しだって」
あの市販品のでこのケーキを貰ってもいいのだろうか……?こう言ってはなんだが、価格が釣り合ってなさすぎる気がする。
「……あのさ、流石にこんな手の込んだ物をお返しに貰えないわよ。私があげたのって市販品の、特にそれ用のって訳じゃないんだし」
「そういうのは気にしなくてもいいって。貰いにくいって言うなら、今日の活動のお茶請けってことで」
「それはそれで食べにくいんですけど!?」
冗談冗談と笑う相手に呆れつつ、こちらも返すべき物を鞄から取り出す。
「そうそう、これ。この間のタッパー。ありがとね」
「え……ああ。サンキュ」
渡すならこのタイミングがいいのだろうか。……日和るとこのまま渡さないで終わっちゃいそうだし……ええい!どうにでもなれ!
「それと、その。先月にクッキー貰ったお返し……です」
我ながら不器用な渡し方だなぁと思うが、こっちで誰かに物を渡す……というかプレゼントするなんて1ミリも考えてなかったから仕方ない。
急に敬語になりおずおずと差し出された物を、ウッチーはポカンとした表情で見ていた。
「……あの、なんか反応してくれないと恥ずかしいんですけど!」
「いや、予想外だったから……えっと、ありがとな」
「どういたしまして。……その、素人が作ってるから味の保証は出来ませんけどね」
「そんな素人なんて言ったら俺も素人……って、もしやこれ宇佐美の手作り?」
照れ隠しに余計なことを言ってしまったと後悔する。……いや、後日に手作りかどうか聞かれるよりはマシかもしれない。
「そうだけど……あー、もうこの話はおしまい!」
無理矢理に話を終わらせて、帰る準備を始める。
「あれ、帰るのか?」
「返すもの返したから今日は解散で!それともまだ何かあるの?」
「いや、その……今貰ったからお返しにケーキ食べてってもいいんじゃないかって思うんだが……」
無言で再びいつもの位置に座り直す。
「……お言葉に甘えて、いただきます」
だって仕方ないでしょ?世の大半の女子高生は甘いものには弱いのだから。
END.
何かに集中すると一ヶ月なんてあっという間で……夜はサナエちゃん指導のもと、幻想郷での料理教室が、自宅ではお母さんの丁寧な指導により、どうにか形の見映えは良くなった。味の方は……分量を極端に間違えない限りは問題ないだろう。
そうして下手なりに彼へのお返しを用意する事が出来た。出来たのだが……。
「改めて渡すとなると少し……いや、結構恥ずかしいわね……」
人がいない教室で渡すのは仮に誰かが入って来るかもしれないから却下。かといって教室で別の場所に呼び出すなんてもってのほか。
それなのでいつも通りの場所で待っているのだけど……。
「遅い……!」
いや、約束した訳じゃないから仕方ないんだけどね。だとしても普段からすればだいぶ遅く感じてしまう。
「変に意識してるから余計に長く感じちゃってるのかな……。ってやめやめ!下手に考え込まない!これはお礼!それだけ!それ以上でもそれ以下でもないんだから!」
「おいおい、そんな声大きくすると廊下まで聞こえるぞ?」
「はぇ……?ちょっ、いつからいたの!?」
そんな言い訳を自分に言い聞かせるように口にしていると待っていた相手から声をかけられ情けない声をあげてしまった。
「あー……丁度いま来たところだよ」
恐らく私の独り言を聞いていたが気を利かせてくれたのだろうか。心を読めば彼が言っている事が本当かどうかなんてすぐわかるのだけど……。この前なぜかこの能力が暴発してしまい意図せず彼の思考を読んでしまったこともあるので、彼の心の内は読まないようにしている。
一番踏み込まれたくない部分を断りもなしに覗くのはデリカシーが無さすぎる。それが友達ならなおさらだ。
「それならいいけど……今日は遅かったのね?」
だから私は下手に踏み込まず、当たり障りのない会話を続ける。
「そうか?普段と同じ……いや、配って回ってたから少し遅いかもしれない」
配る?いったい何を……ってまさか。
「まさかとは思うけど、今日も何か作って来た。なんて言わないわよね?」
「そりゃ、先月貰ってるわけだからお返し持ってくるだろ?」
「いやいやいや、確かにそうだけどさ!ウッチーは渡した側じゃん!むしろ今日貰う側でしょ!?」
「そうなんだけどさぁ……渡したあとにその場でお返し貰ってるわけじゃん?そうなるとやっぱりホワイトデーにはお返ししなくちゃ変かなと……」
そういうとおもむろに鞄の中からガラスの容器を取り出した。
「損な性格してるわね……あれ?クッキーじゃないんだ」
「バレンタインと同じじゃ芸がないだろ?それだからチーズケーキ作ってきたんだ」
配っていたからか1ホール丸々ではなく、二人分くらいに切り分けられているチーズケーキが容器に残っていた。
「すご……手作りできる物なのね」
「粉をふるいにかけるのが手間っちゃ手間だけど、作業量はこの前のクッキーと同じくらいかな」
いや、男子なのに女子力たっかいなぁ……。
当然のようにケーキを作ってきているのを見て、自分のお返しなんて……と思ってしまう。
「フォークとか無いから行儀悪いけど手で食べる感じになっちゃうけど大丈夫か?」
「え?貰っていいの?」
「チョコくれただろ?そのお返しだって」
あの市販品のでこのケーキを貰ってもいいのだろうか……?こう言ってはなんだが、価格が釣り合ってなさすぎる気がする。
「……あのさ、流石にこんな手の込んだ物をお返しに貰えないわよ。私があげたのって市販品の、特にそれ用のって訳じゃないんだし」
「そういうのは気にしなくてもいいって。貰いにくいって言うなら、今日の活動のお茶請けってことで」
「それはそれで食べにくいんですけど!?」
冗談冗談と笑う相手に呆れつつ、こちらも返すべき物を鞄から取り出す。
「そうそう、これ。この間のタッパー。ありがとね」
「え……ああ。サンキュ」
渡すならこのタイミングがいいのだろうか。……日和るとこのまま渡さないで終わっちゃいそうだし……ええい!どうにでもなれ!
「それと、その。先月にクッキー貰ったお返し……です」
我ながら不器用な渡し方だなぁと思うが、こっちで誰かに物を渡す……というかプレゼントするなんて1ミリも考えてなかったから仕方ない。
急に敬語になりおずおずと差し出された物を、ウッチーはポカンとした表情で見ていた。
「……あの、なんか反応してくれないと恥ずかしいんですけど!」
「いや、予想外だったから……えっと、ありがとな」
「どういたしまして。……その、素人が作ってるから味の保証は出来ませんけどね」
「そんな素人なんて言ったら俺も素人……って、もしやこれ宇佐美の手作り?」
照れ隠しに余計なことを言ってしまったと後悔する。……いや、後日に手作りかどうか聞かれるよりはマシかもしれない。
「そうだけど……あー、もうこの話はおしまい!」
無理矢理に話を終わらせて、帰る準備を始める。
「あれ、帰るのか?」
「返すもの返したから今日は解散で!それともまだ何かあるの?」
「いや、その……今貰ったからお返しにケーキ食べてってもいいんじゃないかって思うんだが……」
無言で再びいつもの位置に座り直す。
「……お言葉に甘えて、いただきます」
だって仕方ないでしょ?世の大半の女子高生は甘いものには弱いのだから。
END.