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如月センディング

「じゃあ、ありがたくもらっちゃうけど……あっ、そういや土曜日は何で逃げたんだ?」
 鞄の中に財布を戻しながら、この間スーパーで逃げられたことを聞いてみる。
「土曜、土曜……あー。えっと、あれは余りにも突然すぎて思考が追い付かなかった結果というか……なに選んでるか見られたくなかった……というか」
「別にチョコ選ぶくらい普通じゃないか?」
「普通のなら私も気にしないけどね。ただ、ちょーっと特別なパッケージだったし……」
 そう言われあの時に宇佐見が選んでいた商品を思い出す……。
「確かに、あのパッケージのパンダ可愛かったもんなぁ」
「ホント、限定品じゃなければ……ん?なんでウッチーがあのパッケージ知ってるの?」
「そりゃ、あの店にいたんだからチェックして当然だろ?」
 値段を見てそっと棚に戻したんだけども。
「確かにそうかもしれないけど……」
「……というかそのチョコを買いに行かなくていいのか?欲しかったんだろ」
 あの値段ならセール品のワゴンに入ってから狙いたいところだが、そう思う客が何人いるかと考えると既に売り切れてるかもしれない。
「まぁ、確かに欲しかったんだけどさ。……予想外の頂き物もあったから、やっぱりチョコは控えておこうかなって」
 予想外、というのはこのクッキーのことだろうか。
 話をしながらも小振りなものを選んで口に運ぶ。自分で作ったからどれだけ砂糖を使ったか分かるので、それを考えると確かに市販のチョコを買うのは躊躇ってしまう。
「別に買ってすぐ食べるわけじゃないんだけど、気持ち的にもね」
「あー……まあ、確かにな」
 お互いにクッキーを取る手がだんだんのびなくなっていき、この空き教室内に似合う静かさが戻ってきた。
「……残り持ってくか?」
 恐らく今日はもうお開きだろうと思い、宇佐見にそう尋ねる。
「ウッチーがいいなら欲しいけど……」
「家にはまだ残りがあるから気にしないで持ってっていいぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて……あっ、袋ってあるかな?」
「袋はあるけど、入りきるか微妙だな……。もし問題なければタッパーごとでもいいか?」
 仕方ないといった様子で首を縦に降った宇佐見に持ち込んだクッキーの残りを全て渡し、一足早く部屋をでる準備をする。
 別に時間をずらす必要はないけども、こんな日に誰かに二人でいることを見られたりしたら宇佐見にも迷惑だろう。
「それじゃ、また明日な」
「また明日」
 中に残る宇佐見にそれだけ伝え、極力音がならないように引戸を締める。
 さて、来月は何を作ろうか……?
 面と向かって誉められたことが嬉しかったからか、珍しくそんなことを考えながら歩き始めた。



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