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如月センディング

 翌日……
「わー……やっぱ混んでるなぁ……」
 クッキーの材料を買うためにすこし大きいスーパーへとやって来た。
 やはりというかバレンタイン直前のせいなのか人が多いように感じる。
「チョコ系の材料だけだしパパっと買って……ん?」
 買い物カゴを手にバレンタインの特設コーナーへ向かう。すると商品棚の前で座り込み、悩んでいる先客がいた。
「あ"あ"ー、迷うなぁ……。どっちか一個で後は14日の夜に特売品に並ぶかどうかのギャンブル……。どっちもデザイン素敵なのに片方だけしか選べないなんて……」
 独り言の声量が大きいため悲痛な胸の内が駄々洩れである。
「よし!決めた!」
 ついに決心がついたのか、片方を手に取り、振り向きながら立ち上がる。
「……え"?」
 なんと、そこには私服姿の会長殿がいた。
「あー、えーっと……宇佐見だよな?昨日ぶり」
「ヒトチガイデス」
 着ているパーカーのフードで顔を隠し、裏声で否定してくる宇佐見(仮)。
「いや、でも――」
「ヒトチガイデスー!」
 そしてこちらから逃げるように走り出してしまった。
「なんなんだいったい……」
 なぜ逃げ出したのかは学校で聞けばいいとして、まずは自分の買い物を済ませてしまおう。

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 その後チョコの他にラッピング用のあれこれを買い、家でクッキー作りに精を出しつう、つまみ食いをする妹を牽制し、クラスで配る分が少し足りないと気がついて前日に慌てて増産するなどして、バレンタイン当日を迎えた。
 朝からどことなく浮き足だった空気が漂い、男子は落ち着きがいつも以上になくなっている。
 室内に人が集まり出したのを見計らって、クラスの女子の一部が皆にと作ってきたチョコを配り出し、和気藹々としたムードが形成された。
 全員に配るならこのタイミングだろうと俺も鞄の中から持ってきたクッキーを取り出しクラスメイトに配っていく。
 流石に朝の内には配りきれず、昼までかかってしまったが全員に行き届いたみたいだ。
 そして帰りのSHRも終わり、いつものように秘封倶楽部の部室へと顔を出した。
「おっす」
 今日は定位置に宇佐見が座っていた。
「あっ、えーっと……さっきはありがと」
 開口一番に彼女からお礼を言われる。
「何の……って、あぁ。クッキーの事か?」
 こちらの問いかけに宇佐見はコクコクと首を縦にふる。
「凄いね、手作り?」
「まあ、一応な」
「本当に!?市販のより美味しかったからビックリしちゃった」
 普段の宇佐見からは想像もつかない食い付きに内心驚いたが、改めて自分が作ったものを美味しい!と一対一の状態で面と向かって言われると思ってなかったので少し照れてしまう。
「そ、そうか?あっ、もしよかったら少し余分に持ってきてるんだけど……」
「えっ、くれるの?……じゃなくて。はい、これ」
 照れ隠しに自分用にと持ってきておいた分を出そうとすると、少し食い気味に宇佐見が反応する。が、ゴホンと咳払いをすると彼女は鞄から赤い箱のチョコ菓子を取り出しそれをこちらに差し出してきた。
「えっと……いいのか?」
「なんか最近貰ってばっかで悪いし……。」
 別に気にする程でもないんだけどなと思いつつも、無下にはできないので「じゃ、遠慮なく」と箱を受けとる。
「それで……その、余分なやつはどうするの?」
 受け取ったものを鞄にしまっていると、そんな風に宇佐見が尋ねてきた。
「持って帰ってもいいけど、折角だし自販機で飲み物買って来てここで食べるか。宇佐見も食べたいんだろ?」
「え……と、まあ。食べられるなら欲しいかなぁ……って」
 ちょっとだけ遠慮がちに彼女は聞いてきた。
「クラスで渡すのに持ってきてたんだからそんな遠慮しなくていいって。それじゃ飲み物買ってくるけど、なに飲むよ?」
「あー待って待って、飲み物なら私が用意してあるんだけど……」
 そう言うと、こちらにペットボトルを渡してくる。
「何がいいかわからないから、とりあえずストレートだけど」
「おお、サンキュ……って自販機だといくらだっけ?」
「この間のお返しだから気にしない気にしない」
 ペットボトルを受け取り、代金を払うため財布を取り出そうとしたところを宇佐美は手で制してきた。
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