ハレと不安と文化祭
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「「ごちそうさまでした」」
昼のピークの時間帯から少しずれていたからか、食事のために入った教室ではさほど待つことなく昼食にありつけた。
「それで、これからどうするのよ?」
「そうだなぁ……パンフレットはざっと目を通したけど、良さそうな出し物そんなにないんだよなぁ」
「配られたやつ持ち歩いてるの?見せて見せて」
向かいに座る宇佐見に催促され、実行委員会で作ったであろう学祭のパンフを渡す。
自分で見た感じだとクラスごとの出し物だとそこまで良さそうな物はなく、食事処かお化け屋敷か……たまにそれ以外のアトラクション。という感じで他は文化部の展示系出し物と校庭での運動部の屋台といった感じか。
「ねぇ、ここ面白そうじゃない?行ってみましょうよ」
宇佐見が指差した所には『オカルト研究部』の文字。
「この学校、オカ研なんてあったんだな……」
部活紹介のレクリエーションでは見なかった気がするが……。
「単純に出なかったとかじゃないの?私も初耳だし」
「もしかしてオカ研あったのを知ってればそっちに入ってたとか?」
「それはないかなー。四月頃は一人で充分活動できてたわけだし」
「そうなのか……?」
そう言われ、四月の終わり頃に初めて言葉を交わした日の事を思い出す。……確かにそうだったかもしれない。
「まあ、私達の活動も見ようによってはオカ研じみてるもんね……。それで、行ってみる?」
再び問いかけてくる宇佐見。……他に見たい所もないので、首を縦にふる。
「他の人のオカルト体験なんてめったに聞けないからな。行ってみるか」
そう答えると少し明るい表情を見せ、早く行きましょ。と急かしてくる。そんなに行ってみたかったのか……。
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「ここ……でいいんだよな?」
「他の部屋の出し物も記載通りだし、ここでしょ。……あっ、ほら看板たってるじゃない」
オカ研の出し物の教室前。そこは思い描いていたような物々しい雰囲気や、凝った飾り付けもない普通の教室の前に『オカルト研究部の展示発表はこちら』と素朴な看板が立っているだけだった。
「お邪魔しまーす……」
入り口前で立っていてもしょうがないので、ドアを開き室内へと入った。
「……」
部屋の中にいた部員であろう生徒はちらりとこちらに目を向けたが、すぐに持っていた雑誌に視線を落とす。
「展示だけなんで順路に沿って見てってください」
ページをめくりながら何度も言いなれたような案内をしてくれた彼に、どうも。と軽い会釈をして展示物の方へと足を進め、先に進んでいた宇佐見が立ち止まって見ていた展示物に目を向ける。そこにはーー
『東深見高校に隠れ潜む七不思議、その真偽に迫る!!』
と書かれていた。
……オカルト好きは七不思議を調べないと気がすまないのだろうか?
と思いつつ、夏ごろに自分達も調べた題材を別のグループが調べるとどうなるのか興味があるのも事実だった。
「同じパネルばっかり見てるけど、なんかあったのか?」
「えっ……あぁ、うん。読めばわかると思うけど、内容見てちょっと面食らっただけよ」
宇佐見が面食らうなんていったいどんな内容なんだ……?と先ほどまで彼女が見ていたパネルに目をむける。
そこに書かれていたのは想像以上のものだった。
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『東深見高校に隠れ潜む七不思議、その真偽に迫る!!』
学校の七不思議と聞いて皆様は何を思い浮かべるだろうか?有名なものでいえば『トイレの花子さん』、『目が動く肖像画』、『動く人体模型』だろう。
こういった有名な七不思議は今や日本全国のあらゆる学校に世代を越えて噂されている。細部は違えど、近しい話が語り継がれているのだ。
そしてそれは、この東深見高校も例外ではない。そんな不思議な噂を我々、オカルト研究部は調査し、今現在この高校に蔓延る七不思議を解明していこうと思う。
文 岡 流斗
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・第一の噂
『音楽室の怪』
音楽室で起こる不可解な現象といえば、著名な音楽家の肖像画の目が動きこちらを睨んでくる話や、誰もいない音楽室からピアノの音が聞こえてくる話が定番だろうか。
東深見高校にももちろん音楽室は存在する。ただ、基本的には吹奏楽部の練習部屋となっており、仮に吹奏楽部が休みであっても軽音部が音楽室を利用するため、誰もいない時間というものがないに等しい教室である。
吹奏楽部と軽音部の両者に話を聞いたところ、確かに部員達のなかでちょっとした噂が流れているというのだ。
『最終下校時間ぎりぎりまで練習をした日、掃除も全て終え誰もいないことを確認したはずの室内から音がする』
『部活を終えて音楽室の鍵をかけた直後にピアノの音が聞こえる』
この二つの話を聞き、最終下校時刻まで張り込み噂の真偽を確かめることにした。
今回の調査の件は吹奏楽部にも伝えており、練習が短い日なら……と協力してもらえた。
吹奏楽部の演奏を聞き、彼らの部活が滞りなく終了し、全員が音楽室から退室して鍵をかけたことを確認してから部屋の前で下校時刻ぎりぎりまで待機する。
異変は思ったよりすぐに起こった。
確かに全員が退室したのを確認しているが音楽室内からうっすらと音が聞こえる。
そしてその音は次第に大きくなってきた。そのときにこれはラップ音と言うことに気がついた。
ポルターガイスト現象の際に大きな音が鳴ったりするあれだ。
しばらくの間無秩序に鳴っていたラップ音だが、それがいつの間にか統制のとれたメロディに変わっている。耳をすますと、ラップ音の後ろにピアノの音がする。そして徐々にピアノの音とラップ音のバランスがとれていき……音楽室内から不思議なリズムで流れるメロディに聞き入ってしまう。
もう少し聞いていたい……と思った瞬間に最終下校時刻のチャイムが鳴る。それと同時に音楽はピタリと止まってしまった。
借りていた音楽室の鍵を使い中の様子を確認したが人がいた形跡は存在しない。
だが、確かにピアノとラップ音の即興セッションは行われていたのだ。
軽音部にも協力頂き同じように調査をしたが何も起こらなかった。また、別日に再度吹奏楽部にも協力してもらったが、その時も何も起こらずじまいだった。
あのセッションに再び出逢うための条件はわからないが、この東深見高校の音楽室には
確かに目に見えない存在がおり、時折人の心を魅了する独特なメロディを奏でている。
もし、その演奏中に音楽室に入っていたらどうなったのだろうか……。
それを確かめるのだけはおすすめしない。
調査/文 三角 任
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「……」
宇佐見の言いたいことはよくわかった。
いや、確かに七不思議……怪談という話としての要点は残っている。その上でまた新たな話のひとつとして再構成されている。それはわかるんだけど……
「……ラップとラップ音をかけて即興セッションってなんやねん!」
というか、音楽室の怪とポルターガイストでひとくくりの話になっとるやんけ!
……あぁ、突拍子も無さすぎてよくわからない関西弁らしきなにかが口からでてしまった。
「そう、それ!ピアノを弾いていたものの正体がポルターガイストだった!とかならわかるんだけど、それがなんで即興セッションになるのかしらね!」
思うところはおなじだったらしく、少し声を大きくして疑問点を口にしていた。
「なんとなくだけど、他の話も改良?されてる気がしてならんのだが……?」
「この調子であと六個も紹介されるの……?」
冗談でしょ?と言った表情を浮かべたあと宇佐見は呆れたようなため息をつく。
「そしたら残りはスルーして外でるか?」
「……いや、そんなことしたら負けたみたいだし。全部見てやろうじゃないの!」
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