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ハレと不安と文化祭

 翌日。
「さー、二日目も頑張っていくわよー!!」
『『『『おおー!!』』』』
 昨日と同じく柏野の号令で気合をいれるクラスメイトたち。
「そうそう、打ち上げに関してなんだけど、岡本先生が『後夜祭までの時間なら教室自由に使っていいけど、打ち上げって言うよりもお疲れ様会ぐらいにしとけよ』って許可降りたから、張り切っていきましょー!」
『『『『おおー!!』』』』
 熱気に包まれた皆を煽るかのように校内放送が開場を知らせる。
 日曜日の今日の方が本番になるのだろうか、部活動の体育館のステージ発表の準備に移るクラスメイトが昨日よりも少し多く感じた。

「お待たせしました、ご注文はーー」
「三名様ですね、席にご案内ーー」
「ありがとうございましたー」
「四番卓、先に飲み物お願い!一気に人来て焼くの追い付かない!」
 開場すぐはそんなでもなかったが、一時間経ったくらいから徐々に客足が増えてきた。
 満員御礼とまでは行かないが少ないホールの人数でギリギリ捌ききれるかどうかの人数。
 とりあえずなんとか回っている。が、このペースで昼に突入したら確実に厨房側がパンクするのは目に見えている。
「うーん……昼前だからそんなに来ないって思ってたんだけどねぇ……そもそものお客さんの数も多いのかしら……?」
「柏野、なんか案はないのか?」
「そー言われても……ホットプレートはこの二台しかないから今から増やせないし、かといって待たせ過ぎるのもいけないし……」
「一番の問題は生地を作るのが間に合わないところか。あたりまえだけどクレープ屋なのにクレープが提供できないのは痛手だよなぁ……」
 どうにか一段落したところで柏野に確認するが、良い手は浮かばない。
「つか、張り切りすぎて宣伝しすぎてるのかね?こんな調子で昼も来たら確実に追い付かないぞ?」
 厨房側で陣頭指揮を取っていた千歳も話に混じってくる。
「わかってるわよ!でも今から増やせないから……席を減らす?」
 そもそものキャパを減らせば確かに問題ないだろうが……。
「お客さんが完全にいなくなったら出来るかもしれないけど、この状況と人数じゃ難しいんじゃないか?」
「話聞いてたんだけど、メニューにあるクレープのクレープ生地なしとかでオーダーとるのは?」
 三人してうんうん唸ってたのを見かねたのか、厨房から宇佐見がそんな風に助言をしてくれた。
「あっ、確かに生地焼かないから作り置きとか出来るのか。……けどさ、クレープ屋のクレープなしって需要あるのか?」
「そこはランチメニューにすれば少しの間対応できるんじゃない?」
 柏野、千歳は直ぐに宇佐見の意見を拾い、打開策を模索し始める。
「ランチか……確かに良い感じなんだけど……。そうするとメニューとしてはフルーツの盛り合わせか、惣菜だけだぞ?」
「……いや、ランチメニューというかランチタイム限定で軽くつまめるおかずとデザートって触れ込みにすれば……うん、いけそう!」
 どうやら柏野の中でこの問題は解決したようだ。
「千歳、今残ってる材料で出来そうな物っててなに?」
「とりあえずホイップもあるからサンデー風な盛り合わせと果物盛り合わせぐらいじゃないか?おかずは……ほぼそのまま皿に乗せて提供って感じか」
「おかずは仕方ないとして、デザートがそれだけだと今一つよね……。盛り合わせってほど量使えないし、そもそも紙皿も底深いやつなんて用意してないし……」
「……少ない量か……あっ!フルーツポンチ作ろうぜ!」
「あのねぇ、底深いのが無いって言ったばっかじゃ――」
「紙コップ使うんだよ! それなら量も節約できるし、新しく用意する必要もない。それにテイクアウトも可能でスプーンはクレープ用のを使えば問題なしだろ?」
「……確かに。でもそれだとランチタイム限定にする必要ないんじゃないの?」
「それはクレープとしての在庫を枯らさないために数量限定ってことで。あと、こういう時の限定品ってバカにならない需要あるんだよ」
 トントン拍子に話がまとまっていくのを俺と宇佐見は呆然と見ているしかなかった。
「ま、千歳の言う通りか。その方向で昼間は乗り切りましょ!グループの方にメッセでこの事流しとくわね。宣伝部隊にはクレープなしクレープで宣伝お願いしちゃおうかしら」
「その辺りは任せるよ。……それじゃ分量とかなんとなく決めてきますか」
「それじゃ宇佐見さん、ウッチー、このあとも頑張っていこ!」

 結果として、クレープなしクレープは大繁盛。
 宣伝組の拡散力と『クレープなしクレープとは?』という未知の物への好奇心から昼辺りからお客さんの数は多くなり、想定していた数は飛ぶように売れ、交代の時間になる前には完売。その忙しさもあってか、完売後は多少客足が落ち着いたとはいえ、全員がへとへとになってしまっていた。
「……そろそろ交代の時間ね。今入ってたみんな、ほんっとうにお疲れ様!」
 柏野は交代を前に皆へそう伝えた。
「色々イレギュラーな事態があったけど、みんなのお陰でどうにか乗り越えられたわ。ありがと!このあとは私も用事があるからしっかりサポート出来ないかもだけど、今のキツイ時間帯乗り越えて、この後もやってく人たちは交代で入ってくる皆のサポートもよろしくね」
 そんな柏野の言葉に教室に残るメンツは声を出さず手を挙げて返事をする。
「あとは……出来れば私の入ってる演劇部の公演を見てくれると嬉しいかなって。それじゃ、衣装合わせや最終チェック行ってきます!」
 そういって一足早く教室を出る柏野。それに続き交代を終えた人から教室を後にする。
「さて……昼飯どうするよ?」
「どうするって……あっ!もしかして奢ってくれるの?」
「まあ、昼飯くらいなら出すよ。昨日のお詫びってのもあるし」
「ホントに!?いやー、言ってみるもんね。それじゃ今日はごちそうになります!」
 一番最後に教室を出た俺と宇佐見はそんな話をしながら、まずは腹ごしらえに向かうのであった。

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