ハレと不安と文化祭
「あー、なるほど。そーいうことねー。完っ全に理解したわー」
「その返事だと理解してない気もするんだが……本当にわかったのか?」
「大丈夫だって!……というか、そういうの先に話して貰えない?入学直後の自己紹介とかでさぁー」
「わざわざ自己紹介で妹の事話すか……。そんなん重度のシスコンぐらいだろ?」
「さっと言っといてくれればこんな大事にならなかったと思うんだけどなぁ」
「それはそうなんだが……」
大事にしたのはそっちなんじゃ?と喉元まで出かかったが、ぐっと飲み込んだ。
そしてそれを言い淀んでいるのかと思ったのか、鈴香がフォローを入れてくる。
「あれです、兄さんは恥ずかしがってるだけなんです」
「そうなの?」
「家だと私が心配なのか、事ある毎に『大丈夫か?』って……」
「それはお前が受験生だからだろうが!というか、ウチの事情は置いといてさ……この盛大な勘違いはこのクラスだけで収まってるのか?」
「どうだろ?元凶がここで喚いてたからその時に入ってたお客さん次第ってところかな?」
「ほんっとに騒ぎ起こすのだけは得意だな、アイツは!……それじゃあ、その時のシフトの面々には弁解終わってる感じ?」
「え……と、うん。終わってるはず。グループチャットにも私の勘違いって送ってるから」
「そっか。なら後は自然消滅待ちか」
「いや、ホントに早とちりしてごめんね!」
「いいっていいって、そんじゃ時間までホールスタッフか」
よし、と小さく気合いを入れて柏野とスズのいるテーブルから離れる。
するとタイミングよく新しいお客さんが室内に入ってきた。
「いらっしゃいませ……ご注文はいかがされますか?」
勘違いの騒動は解決して、このまま何事もなく文化祭は終わるものと思っていた。この時までは。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はぁ……」
なにやってんだろ。
あのあと部屋を出て適当にぶらついていたけど、特にどこに行きたいとかはなく早々に飽きてきてしまった。
人混みから逃げるようにトイレに入り、他に誰もいないことを確認して屋上へと瞬間移動(テレポート)する。
下の校舎からは賑やかな声、眼下の校庭には気合いの入った屋台が並び、校門からは疎らながらもお客さんが入ってくるのが見て取れた。
「彼女、ねぇ……」
別にいたとしても不思議ではない。高校生なんだし。ただ、いたならいたで一言言って欲しかったかなーなんて思う。
それなら相手にも迷惑かけない程度の探索に抑えて……。
「いや、それならいっそのこと退部して貰った方がいいかな?……正式な部活じゃないんたけど」
秘封倶楽部は私の居場所で、何となく……そう、あの日たまたまあの独り言を聞かなければ二人で活動するなんてあり得なかった。
私のためだけの部活であり、私がこの世の不思議を解き明かすための空間のはずなのだ。
「……だけどなぁ」
中間考査明けからの二人での活動を振り返ると、そんなに悪くなかったなとは思う。
別に彼はそこまでオカルトに傾倒してるわけじゃないけど、流行りに流されて騒ぐ人よりは知識があるから一から十まで説明する手間が省けるのはありがたい。
それでも小学生の頃の……三年以上前の知識なのでフォローが必要なこともあるけど。
そんな事を延々と考えていて、ふと我にかえる。そして今の状況を鑑みてひとつ思ったことがある。
「というか、私も変わったなぁ……」
前は友達なんて群れたがる奴らの作るものなーんて思ってたのに、向こうの……幻想郷の皆と出会ってからちょっとずつ意識が変わったのは事実なんだけど、こっちでもここまでレイムっちやカセンちゃんみたいな距離感で話せる相手がいるとは思ってなくて……。
「あっ……そうか」
夏にカセンちゃんに言われたことを思い出す。
私の居場所、あったんだ。
もしかするとなくなってしまうかもしれない時に気がつくなんて……バカみたい。
だけど、ここで立ち止まってちゃいけない。噂だからと目を背けてちゃいけない。しっかり相手と話さないと。
噂が本当だったらと思うと怖いけど……だからといってなにもしないで後悔するのはらしくない。
先に悔やむ事はできない、やることやって後で大いに悔やむのが後悔なんだから。……大いに悔やんだら大後悔か。
思い立ったが吉日ともいう。話をするために今日のこの後……帰りのSHRが終わったら部室に来るように、と前に教えて貰った連絡先へメッセを送る。よし。
それじゃあ今は楽しもう。折角の非日常、文化祭っていうハレの日を!
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「その返事だと理解してない気もするんだが……本当にわかったのか?」
「大丈夫だって!……というか、そういうの先に話して貰えない?入学直後の自己紹介とかでさぁー」
「わざわざ自己紹介で妹の事話すか……。そんなん重度のシスコンぐらいだろ?」
「さっと言っといてくれればこんな大事にならなかったと思うんだけどなぁ」
「それはそうなんだが……」
大事にしたのはそっちなんじゃ?と喉元まで出かかったが、ぐっと飲み込んだ。
そしてそれを言い淀んでいるのかと思ったのか、鈴香がフォローを入れてくる。
「あれです、兄さんは恥ずかしがってるだけなんです」
「そうなの?」
「家だと私が心配なのか、事ある毎に『大丈夫か?』って……」
「それはお前が受験生だからだろうが!というか、ウチの事情は置いといてさ……この盛大な勘違いはこのクラスだけで収まってるのか?」
「どうだろ?元凶がここで喚いてたからその時に入ってたお客さん次第ってところかな?」
「ほんっとに騒ぎ起こすのだけは得意だな、アイツは!……それじゃあ、その時のシフトの面々には弁解終わってる感じ?」
「え……と、うん。終わってるはず。グループチャットにも私の勘違いって送ってるから」
「そっか。なら後は自然消滅待ちか」
「いや、ホントに早とちりしてごめんね!」
「いいっていいって、そんじゃ時間までホールスタッフか」
よし、と小さく気合いを入れて柏野とスズのいるテーブルから離れる。
するとタイミングよく新しいお客さんが室内に入ってきた。
「いらっしゃいませ……ご注文はいかがされますか?」
勘違いの騒動は解決して、このまま何事もなく文化祭は終わるものと思っていた。この時までは。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はぁ……」
なにやってんだろ。
あのあと部屋を出て適当にぶらついていたけど、特にどこに行きたいとかはなく早々に飽きてきてしまった。
人混みから逃げるようにトイレに入り、他に誰もいないことを確認して屋上へと瞬間移動(テレポート)する。
下の校舎からは賑やかな声、眼下の校庭には気合いの入った屋台が並び、校門からは疎らながらもお客さんが入ってくるのが見て取れた。
「彼女、ねぇ……」
別にいたとしても不思議ではない。高校生なんだし。ただ、いたならいたで一言言って欲しかったかなーなんて思う。
それなら相手にも迷惑かけない程度の探索に抑えて……。
「いや、それならいっそのこと退部して貰った方がいいかな?……正式な部活じゃないんたけど」
秘封倶楽部は私の居場所で、何となく……そう、あの日たまたまあの独り言を聞かなければ二人で活動するなんてあり得なかった。
私のためだけの部活であり、私がこの世の不思議を解き明かすための空間のはずなのだ。
「……だけどなぁ」
中間考査明けからの二人での活動を振り返ると、そんなに悪くなかったなとは思う。
別に彼はそこまでオカルトに傾倒してるわけじゃないけど、流行りに流されて騒ぐ人よりは知識があるから一から十まで説明する手間が省けるのはありがたい。
それでも小学生の頃の……三年以上前の知識なのでフォローが必要なこともあるけど。
そんな事を延々と考えていて、ふと我にかえる。そして今の状況を鑑みてひとつ思ったことがある。
「というか、私も変わったなぁ……」
前は友達なんて群れたがる奴らの作るものなーんて思ってたのに、向こうの……幻想郷の皆と出会ってからちょっとずつ意識が変わったのは事実なんだけど、こっちでもここまでレイムっちやカセンちゃんみたいな距離感で話せる相手がいるとは思ってなくて……。
「あっ……そうか」
夏にカセンちゃんに言われたことを思い出す。
私の居場所、あったんだ。
もしかするとなくなってしまうかもしれない時に気がつくなんて……バカみたい。
だけど、ここで立ち止まってちゃいけない。噂だからと目を背けてちゃいけない。しっかり相手と話さないと。
噂が本当だったらと思うと怖いけど……だからといってなにもしないで後悔するのはらしくない。
先に悔やむ事はできない、やることやって後で大いに悔やむのが後悔なんだから。……大いに悔やんだら大後悔か。
思い立ったが吉日ともいう。話をするために今日のこの後……帰りのSHRが終わったら部室に来るように、と前に教えて貰った連絡先へメッセを送る。よし。
それじゃあ今は楽しもう。折角の非日常、文化祭っていうハレの日を!
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