ハレと不安と文化祭
文化祭当日。天気にも恵まれ、快晴……とまではいかないが、しっかりと晴れてくれた。
もしかすると暖房も使わないでも今日は乗り越えられるかもしれない。
「それじゃ、まずは一日目!頑張っていきましょー!」
「「「「おおーー!!」」」」
実行委員の柏野やノリがいい男子達が、さながら体育会系の部活を思わせるテンションで円陣を組み、叫んでいた。
いきなりのハイテンションに一部のクラスメイトはついてこれていないようだ。
「それじゃ、各自シフト通りにねー」
そう言われ教室にいた面々は各々着替えや部活の方の出し物へ行ったり、改めて他のクラスや学年、部活が何をしているかをチェックしどう回ろうかと相談しはじめている
「私立校とはいえ、それなりにお客さん来るみたいだから昼の時間帯の人は時間守ってよねー!あと、サボり厳禁!」
当たり前な注意を聞きながらとりあえず廊下に出て辺りを見回すと、どこも普段とは違い、華やかな感じの装飾だったり、お化け屋敷なのか明らかに暗くなっている廊下があったりと文化祭らしさを醸し出していた。
ここにきて改めて高校なんだなぁと感慨に浸っていると校内放送でも文化祭の開会が知らされ、それから徐々に校内も騒がしくなってくる。
廊下の窓の外を見るとほんの少しではあるがお客さんが入ってくるのが見えた。
混み出す前に行っておきたい所を見ておこうとした矢先に、
「ウッチー!一緒に文化祭回ろうぜっ!」
といつもの相手に声をかけられてしまった。
「林田……たまには別の相手と行動するとか考えないのか?」
「いーじゃねぇーかよー。小野寺と俺とお前、三人ともなにも入ってないのが今日の午前くらいなんだぞ?
それにさ最近はあんまり一緒に遊んでるわけでもないんだから、いいだろ?」
そう言われると……秘封倶楽部の活動のために意識的に関わらないようにする時も多々あるが、それを抜きにしても最近は準備だなんだで少ない遊び時間がより少なくなっている。
「……たまにはいいかな」
「さっすが、話がわかるじゃないか!」
「で、小野寺はどこにいるんだ?」
「それはこれから探しにいくんだよ」
あてはあるのだろうか……と少し不安に思いながらも前をいく林田の後ろを付いていく。
「……さて、ウッチー、お前小野寺と中学同じだったんだろ?どういう所にいそうか検討付かないのか?」
「そんなのわかるわけ……ってあそこにいるの小野寺じゃ」
二階への階段を下った先、適度に人の邪魔にならない位置に小野寺はいた。隣には見知った顔が一人。
「あいつ普段はナンパなんて……って態度の癖にこういう時だけ抜け駆けしやがって……!
行くぞ、ウッチー!」
「ちょっと待て!あれは――」
そう告げると階段を駆け降り、小野寺の元へと走りだす林田。
引き留めようとしたこちらの声は届かなかった。
「……はぁ。なんかもう嫌な予感しかしないんだが……」
かといって放っておくことも出来ないので渋々駆け降りた奴を追うことにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それじゃ、まずは一日目!頑張っていきましょー!」
「「「「おおーー!!」」」」
柏野さんを中心とした何人かが円陣を組み気合いを入れていた。
その輪には入れなかったけど心のなかで自分も「おー!」と叫び気合いを入れる。
開場時間に間に合うように着替え用の教室へ入り、制服から浴衣に着替えエプロンをつける。
そしてマリサっちに連れていってもらった屋台の女将さんを倣い、三角巾をつけて準備完了。
「……よしっ!」
改めて気合いを入れ、初めての接客をする覚悟を決めてお店となる教室に入る。
室内はクラスの子達によって飾り付けられて華やかになっていた。
「おっ、宇佐見さん似合ってるねー」
「柏野さん……あ、ありがと」
「いや、こちらこそありがとね。シフトの件とかさ」
気さくに笑いながら彼女は声をかけてくる。
「……だって手が空いてるの私くらいだったんでしょ?他の人は展示だったり発表ある部活だったりでさ……」
それに、クラス一丸となってるところに変に水を差す分けにもいかないからね、と心の中で呟く。
「そうだけどさ、断らずに受けてくれたでしょ?それだけでも助かったのよ」
「まぁ……皆を焚き付けたのは私の意見みたいな部分もあるからね」
「まーたそんなこと言ってー、もうちょっと素直にありがとうでいいのに。
……私はあの時宇佐見さんが意見だしてくれて嬉しかったんだよ」
「えっ?」
「これまで友達作ろうとしてない……のは別に自由だからいいんだけどさ。一人が好きって子もいるわけだし。そんな子がさ、あの時突然声を上げてくれたんだもの」
「いや、あのときはさ……あの会議というかホームルームを早く終わらせたかったってのもあったし……」
まさかそんなに感謝されていたなんて思っておらず、申し訳無さが勝ってしまう。
「それだから、ウッチーと休憩時間があんまり重なってないのが心苦しいと言いますか……」
「まってまってまって、どうしてそこで山内くんの名前がでてくるのよ?」
だからこそ本当に申し訳なさそうに柏野さんが喋るのを聞いてつい普通のテンションで聞き返してしまった。
「えっ?だって宇佐見さんってウッチーと付き合ってるんじゃないの?」
「はぁあ!?そんなわけないでしょ!?」
「ちょっ、宇佐見さん声大きい!もう文化祭始まってるんだし、お店から大声聞こえたらお客さん入ってこなくなっちゃうから!」
そう諭され、あわてて自分の口を手で覆う。
落ち着け、落ち着くのよ、私。ここはまず、どんな風に噂されてるのかをしっかり把握しないと……。
「あっ、ごめん。……その話って誰から聞いたの?というかどこまで広がってるの?」
「いや、私も又聞きなんだけどね。ペア決めの翌日くらいからそんな感じの話ちらほら聞くようになったんだけど……」
誤解を解こうと思ったが……なるほど、彼女は噂の真偽を確かめたかっただけみたいだ。これなら簡単にーーー
「だいぶ前にたまたまウッチーと宇佐見さん二人で帰ってるの見かけたことあったからあながち間違いでもないのかなぁって」
あっ、これ簡単には行かないやつだ。
下手すると誤解を解くどころか余計に誤解されかねない……。部活でオカルトスポット行く時に喋りながら駅に向かうことは何度もあったから、柏野さんの見かけたって話は恐らく事実だろうし……。何て言えば正解なんだろ。
「いや、柏野さん……それはーーー」
とにかくなにか弁解を……と口を開いたのと同時ぐらいに扉が開かれる。私は出入り口に背を向けていたからわからないが、恐らくお客さんが入ってきたのだろう。
「あっ、ほら宇佐見さん。お客さん来たよ。挨拶あいさーーーって林田じゃん」
慣れない接客を始めることになるのかと一瞬身構えたが、入ってきたのは同じクラスでいつも騒がしい男子だった。
「……お茶を一つ」
普段に比べ覇気がない彼は隅の方の席に着くとそれだけを注文して窓の外を眺めだした。
ただ、彼の来店をを皮切りに少しずつ一般のお客さんも入ってくるようになった。
柏野さんとは別のホールの子の対応を見よう見まねで接客を始める。
「はい、お茶。……というかなんでそんな暗いのよ?普段の調子じゃなくて皆調子狂うんだけど…」
「……聞いてくれるのか、柏野ぉ!あいつ……あいつに裏切られたんだよぉ!」
他のお客さんの相手をしている中、柏野さんと男子の会話が耳にはいる。
……それよりも柏野さん、というかクラスの一部の勘違いをどう正すかなんだけど。交代のタイミングが一番かなぁ?
「あいつって……いつもつるんでるウッチーか小野寺のこと?裏切るっていうのは言い過ぎなんじゃない?……詳しい内容聞いてないからわからないけどさ」
「そうだよ、ウッチーなんだよ!あいつ、彼女居たのにいままで黙ってたなんて……」
「んー多分その噂クラスではだいぶ浸透して……」
あーなんか誤解とくのかなりめんどくさそうになってきたなぁ……。
男子の方がバンッと机を叩き忌々しげに声をあげる。
「さっき小野寺が学外の女子を口説いてそうだからって割り込んだら、その子俺には会釈するだけだったのに、ウッチーの手を取ってさっさとどっかに行っちまったんだぞ!これを裏切りと称せずなんというか!」
その言葉を聞いたクラスの子達が一様に私の方を向いた。
あれ、これ誤解とけたけど余計面倒になってない?
「……とりあえず、あんたの言い分はわかったから、それ飲んだら自分のシフトには遅れないように時間潰してきなさいよ」
「……ああ、そうする。なんか愚痴ってスッキリしたわ。サンキュな柏野」
「はいはい、わかったわかった」
相手をし終えた柏野さんは手が空いている私を見つけると手招きをしてきた。
何となく嫌な予感がするが、それに応じて柏野さんの方へ向かう。
「どうかしたの?」
「宇佐見さん、大丈夫だからね?別にさ、男なんて他にもいるんだし、気にしすぎちゃダメだよ?」
問いに対する答えとは違う言葉が返ってきて頭を抱えてしまう……。
「いや、大丈夫もなにも……そもそも山内くんとはーーー」
「ほら、こういう時は強がらなくて良いんだよ?泣きたかったら泣いてもいいんだから」
新しい誤解を弁解しようとしたら急に抱き締められそのまま頭を撫でられる。
……いやほんとに違うんだけど!
「ちょっと、柏野さん!私の話をーーー」
私の言葉を遮るかのように柏野さんのスマホのアラームが鳴る。時計を見ると別グループが交代の時間となっていた。
「時間……宇佐見さん、今日の予定変わっちゃうけどこのまま自由時間にして良いよ。その代わり明日の時間ちょっと調整するからさ」
「いや、だから私の話を……」
「いいのいいの。失恋した子をそのままにするほど私も鬼じゃないし。……しっかりリフレッシュしてきなよ?ここには3時に戻ってきてくれればいいからさ」
そう言い切るのと、室内から柏野さんが呼ばれるのは同時だったと思う。
「……これどうしよ?」
自分への勘違い、早々に誤解は解かなきゃならないんだけど……。
「というよりも、失恋もなにも告白すらしてない……じゃなくて。そもそもそういう関係じゃないんだから」
それ以前に彼の話が本当だったら……倶楽部活動は迷惑なんじゃないか?
一人になりマイナスな方向へと考えが向かってしまう。あぁ、当事者じゃなければ良かったのに。
しかし起きてしまった事はどうにもならない。それなのでとりあえず、ホールの衣装から制服へと着替えるため更衣室代わりの部屋に入る。
文化祭の喧騒と切り離されたように静かな室内、その空気もどこか重たく感じた。
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もしかすると暖房も使わないでも今日は乗り越えられるかもしれない。
「それじゃ、まずは一日目!頑張っていきましょー!」
「「「「おおーー!!」」」」
実行委員の柏野やノリがいい男子達が、さながら体育会系の部活を思わせるテンションで円陣を組み、叫んでいた。
いきなりのハイテンションに一部のクラスメイトはついてこれていないようだ。
「それじゃ、各自シフト通りにねー」
そう言われ教室にいた面々は各々着替えや部活の方の出し物へ行ったり、改めて他のクラスや学年、部活が何をしているかをチェックしどう回ろうかと相談しはじめている
「私立校とはいえ、それなりにお客さん来るみたいだから昼の時間帯の人は時間守ってよねー!あと、サボり厳禁!」
当たり前な注意を聞きながらとりあえず廊下に出て辺りを見回すと、どこも普段とは違い、華やかな感じの装飾だったり、お化け屋敷なのか明らかに暗くなっている廊下があったりと文化祭らしさを醸し出していた。
ここにきて改めて高校なんだなぁと感慨に浸っていると校内放送でも文化祭の開会が知らされ、それから徐々に校内も騒がしくなってくる。
廊下の窓の外を見るとほんの少しではあるがお客さんが入ってくるのが見えた。
混み出す前に行っておきたい所を見ておこうとした矢先に、
「ウッチー!一緒に文化祭回ろうぜっ!」
といつもの相手に声をかけられてしまった。
「林田……たまには別の相手と行動するとか考えないのか?」
「いーじゃねぇーかよー。小野寺と俺とお前、三人ともなにも入ってないのが今日の午前くらいなんだぞ?
それにさ最近はあんまり一緒に遊んでるわけでもないんだから、いいだろ?」
そう言われると……秘封倶楽部の活動のために意識的に関わらないようにする時も多々あるが、それを抜きにしても最近は準備だなんだで少ない遊び時間がより少なくなっている。
「……たまにはいいかな」
「さっすが、話がわかるじゃないか!」
「で、小野寺はどこにいるんだ?」
「それはこれから探しにいくんだよ」
あてはあるのだろうか……と少し不安に思いながらも前をいく林田の後ろを付いていく。
「……さて、ウッチー、お前小野寺と中学同じだったんだろ?どういう所にいそうか検討付かないのか?」
「そんなのわかるわけ……ってあそこにいるの小野寺じゃ」
二階への階段を下った先、適度に人の邪魔にならない位置に小野寺はいた。隣には見知った顔が一人。
「あいつ普段はナンパなんて……って態度の癖にこういう時だけ抜け駆けしやがって……!
行くぞ、ウッチー!」
「ちょっと待て!あれは――」
そう告げると階段を駆け降り、小野寺の元へと走りだす林田。
引き留めようとしたこちらの声は届かなかった。
「……はぁ。なんかもう嫌な予感しかしないんだが……」
かといって放っておくことも出来ないので渋々駆け降りた奴を追うことにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それじゃ、まずは一日目!頑張っていきましょー!」
「「「「おおーー!!」」」」
柏野さんを中心とした何人かが円陣を組み気合いを入れていた。
その輪には入れなかったけど心のなかで自分も「おー!」と叫び気合いを入れる。
開場時間に間に合うように着替え用の教室へ入り、制服から浴衣に着替えエプロンをつける。
そしてマリサっちに連れていってもらった屋台の女将さんを倣い、三角巾をつけて準備完了。
「……よしっ!」
改めて気合いを入れ、初めての接客をする覚悟を決めてお店となる教室に入る。
室内はクラスの子達によって飾り付けられて華やかになっていた。
「おっ、宇佐見さん似合ってるねー」
「柏野さん……あ、ありがと」
「いや、こちらこそありがとね。シフトの件とかさ」
気さくに笑いながら彼女は声をかけてくる。
「……だって手が空いてるの私くらいだったんでしょ?他の人は展示だったり発表ある部活だったりでさ……」
それに、クラス一丸となってるところに変に水を差す分けにもいかないからね、と心の中で呟く。
「そうだけどさ、断らずに受けてくれたでしょ?それだけでも助かったのよ」
「まぁ……皆を焚き付けたのは私の意見みたいな部分もあるからね」
「まーたそんなこと言ってー、もうちょっと素直にありがとうでいいのに。
……私はあの時宇佐見さんが意見だしてくれて嬉しかったんだよ」
「えっ?」
「これまで友達作ろうとしてない……のは別に自由だからいいんだけどさ。一人が好きって子もいるわけだし。そんな子がさ、あの時突然声を上げてくれたんだもの」
「いや、あのときはさ……あの会議というかホームルームを早く終わらせたかったってのもあったし……」
まさかそんなに感謝されていたなんて思っておらず、申し訳無さが勝ってしまう。
「それだから、ウッチーと休憩時間があんまり重なってないのが心苦しいと言いますか……」
「まってまってまって、どうしてそこで山内くんの名前がでてくるのよ?」
だからこそ本当に申し訳なさそうに柏野さんが喋るのを聞いてつい普通のテンションで聞き返してしまった。
「えっ?だって宇佐見さんってウッチーと付き合ってるんじゃないの?」
「はぁあ!?そんなわけないでしょ!?」
「ちょっ、宇佐見さん声大きい!もう文化祭始まってるんだし、お店から大声聞こえたらお客さん入ってこなくなっちゃうから!」
そう諭され、あわてて自分の口を手で覆う。
落ち着け、落ち着くのよ、私。ここはまず、どんな風に噂されてるのかをしっかり把握しないと……。
「あっ、ごめん。……その話って誰から聞いたの?というかどこまで広がってるの?」
「いや、私も又聞きなんだけどね。ペア決めの翌日くらいからそんな感じの話ちらほら聞くようになったんだけど……」
誤解を解こうと思ったが……なるほど、彼女は噂の真偽を確かめたかっただけみたいだ。これなら簡単にーーー
「だいぶ前にたまたまウッチーと宇佐見さん二人で帰ってるの見かけたことあったからあながち間違いでもないのかなぁって」
あっ、これ簡単には行かないやつだ。
下手すると誤解を解くどころか余計に誤解されかねない……。部活でオカルトスポット行く時に喋りながら駅に向かうことは何度もあったから、柏野さんの見かけたって話は恐らく事実だろうし……。何て言えば正解なんだろ。
「いや、柏野さん……それはーーー」
とにかくなにか弁解を……と口を開いたのと同時ぐらいに扉が開かれる。私は出入り口に背を向けていたからわからないが、恐らくお客さんが入ってきたのだろう。
「あっ、ほら宇佐見さん。お客さん来たよ。挨拶あいさーーーって林田じゃん」
慣れない接客を始めることになるのかと一瞬身構えたが、入ってきたのは同じクラスでいつも騒がしい男子だった。
「……お茶を一つ」
普段に比べ覇気がない彼は隅の方の席に着くとそれだけを注文して窓の外を眺めだした。
ただ、彼の来店をを皮切りに少しずつ一般のお客さんも入ってくるようになった。
柏野さんとは別のホールの子の対応を見よう見まねで接客を始める。
「はい、お茶。……というかなんでそんな暗いのよ?普段の調子じゃなくて皆調子狂うんだけど…」
「……聞いてくれるのか、柏野ぉ!あいつ……あいつに裏切られたんだよぉ!」
他のお客さんの相手をしている中、柏野さんと男子の会話が耳にはいる。
……それよりも柏野さん、というかクラスの一部の勘違いをどう正すかなんだけど。交代のタイミングが一番かなぁ?
「あいつって……いつもつるんでるウッチーか小野寺のこと?裏切るっていうのは言い過ぎなんじゃない?……詳しい内容聞いてないからわからないけどさ」
「そうだよ、ウッチーなんだよ!あいつ、彼女居たのにいままで黙ってたなんて……」
「んー多分その噂クラスではだいぶ浸透して……」
あーなんか誤解とくのかなりめんどくさそうになってきたなぁ……。
男子の方がバンッと机を叩き忌々しげに声をあげる。
「さっき小野寺が学外の女子を口説いてそうだからって割り込んだら、その子俺には会釈するだけだったのに、ウッチーの手を取ってさっさとどっかに行っちまったんだぞ!これを裏切りと称せずなんというか!」
その言葉を聞いたクラスの子達が一様に私の方を向いた。
あれ、これ誤解とけたけど余計面倒になってない?
「……とりあえず、あんたの言い分はわかったから、それ飲んだら自分のシフトには遅れないように時間潰してきなさいよ」
「……ああ、そうする。なんか愚痴ってスッキリしたわ。サンキュな柏野」
「はいはい、わかったわかった」
相手をし終えた柏野さんは手が空いている私を見つけると手招きをしてきた。
何となく嫌な予感がするが、それに応じて柏野さんの方へ向かう。
「どうかしたの?」
「宇佐見さん、大丈夫だからね?別にさ、男なんて他にもいるんだし、気にしすぎちゃダメだよ?」
問いに対する答えとは違う言葉が返ってきて頭を抱えてしまう……。
「いや、大丈夫もなにも……そもそも山内くんとはーーー」
「ほら、こういう時は強がらなくて良いんだよ?泣きたかったら泣いてもいいんだから」
新しい誤解を弁解しようとしたら急に抱き締められそのまま頭を撫でられる。
……いやほんとに違うんだけど!
「ちょっと、柏野さん!私の話をーーー」
私の言葉を遮るかのように柏野さんのスマホのアラームが鳴る。時計を見ると別グループが交代の時間となっていた。
「時間……宇佐見さん、今日の予定変わっちゃうけどこのまま自由時間にして良いよ。その代わり明日の時間ちょっと調整するからさ」
「いや、だから私の話を……」
「いいのいいの。失恋した子をそのままにするほど私も鬼じゃないし。……しっかりリフレッシュしてきなよ?ここには3時に戻ってきてくれればいいからさ」
そう言い切るのと、室内から柏野さんが呼ばれるのは同時だったと思う。
「……これどうしよ?」
自分への勘違い、早々に誤解は解かなきゃならないんだけど……。
「というよりも、失恋もなにも告白すらしてない……じゃなくて。そもそもそういう関係じゃないんだから」
それ以前に彼の話が本当だったら……倶楽部活動は迷惑なんじゃないか?
一人になりマイナスな方向へと考えが向かってしまう。あぁ、当事者じゃなければ良かったのに。
しかし起きてしまった事はどうにもならない。それなのでとりあえず、ホールの衣装から制服へと着替えるため更衣室代わりの部屋に入る。
文化祭の喧騒と切り離されたように静かな室内、その空気もどこか重たく感じた。
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