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宇佐見菫子の困惑

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「友達……か」
 先ほどのやり取りを思い出しそう呟く。
 わりと無理矢理巻き込んだような気がしなくもないが、それでも彼はついてきてくれていた。
 向こうで……幻想郷にいる時には友達を作るのも悪くないとは思ったけど、実際のところ作り方なんてわからないし、彼だってはじめは友人作りの足掛かりになると思って勧誘してみたけど……なんだか共通の目的の仲間、みたいな意識が強くなってて、私からすると友人とは呼べないと思っていた。
 多分、隠さなくちゃいけない事があるから……。その一点が後ろめたくなって、騙しているみたいに感じてしまって、友達じゃないと心のどこかで思ってしまったのだろうか?
 向こうの皆には隠してないから、それを知ってこその友人関係なのではと考えているのかもしれない。
「それなのにあっちは既に友達と思っていたと……」
 ほんの少しだけ嬉しく思うが、その分罪悪感が生まれてくる。
 まだ私は全て伝えてないよ、と。
「菫子!良かった……やっと見つけた……」
 そんなことを考えながら足早に進んでいると、道の向こうから息を切らせてカセンちゃんが駆け寄ってきた。
「カセンちゃん……探してくれてたの?」
「当たり前でしょ!こっちの声に耳を貸さずに急に走り出しちゃうし、人混みに紛れ込んじゃってすぐ見失っちゃったし、こっちじゃ飛べないから地道に足で探さなきゃいけないし……。でも見つかって良かったわ。それで、もう大丈夫なの?」
「……大丈夫、ではないかな。わかんなくなってきちゃった」
 力なく笑って返す。話した方がいいのか黙っていた方がいいのか……もうわからないのだ。
「……そう。
 ねぇ、菫子。さっきの話の続き、しても平気?」
「……うん」
「貴女には、普通の生活を送って欲しい。でも、今すぐにって訳じゃない。
 今みたいに幻想郷で過ごして、こっちでも過ごしていく生活がいつまでも続くわけがないのは解るわよね?」
「だから向こうに行くのは諦めてこっちで過ごせって話なのよね?」
 先程とは違いしっかりと彼女の言葉を聞いて、しっかりと聞き返す。
「そうじゃないの。幻想郷には確かに貴女の居場所はあるわ。香霖堂だったり、神社だったり……それに霊夢や魔理沙がいればそれだけで居場所になるのかもしれない。けど、こっちの世界にそれと同等な場所はあるの?」
「……」
 私の居場所……。家、家族は確かに私の居場所だけど、大人になったら……自立したらまた違ってくるだろうし、自分で作った部活動だって高校を卒業したら……。こんなときに心を許せる友人なんて、昔から周りを拒絶して来たんだからいるわけがない。
「幻想郷に来ること自体は構わないのよ。それでも、私は菫子に此方での居場所を作って欲しいの。時間がかかっちゃうかもしれないし、難しいことなのは百も承知でね」
「だからさっき『普通の生活をして欲しい』なんて言ったんだ」
「その通り。此方で貴女の居場所ができて、その時に信じられる誰かがいれば、その人には秘密を打ち明けてもいいんじゃないの?」
「……そんな人が出来ればね」
「出来るわよ。自力で幻想郷に辿り着いた貴女なら」
「……ありがと、カセンちゃん」
「あとはね、考えて考えて考え抜いてもどうしようもなくて、身動きがとれなくなったら自分の心に正直に動きなさい。その時はとても怖いかもしれないけど、絶対に後悔はしないから」
 仙人である彼女からの大事なアドバイス。
 それは聞いてすぐに納得できた。さっきまでの私じゃ素直に聞き入れられなかった気がするけど。
「うん、忘れないようにしておくね」
「よろしい。……よーしっ!それじゃこのまま何か美味しいものでも食べに行きましょ!」
 私の返事を聞くと何度か頷き、急に俗っぽいことを彼女は提案してきた。
「ちょっとー、仙人なのに食べ歩きしていいの?」
「あっちじゃ仙人かもしれないけど、こっちじゃ貴女の友達の一人なんだから気にしない気にしない。ほら、行きましょ菫子!」
 そう言って包帯の巻かれていない方の手を伸ばしてくるカセンちゃん。
 クスリと笑ってその手を取る。
 多分これは彼女なりの励ましなんだろう。さっきまでの仙人としての彼女でなく、私の友人の茨木華扇としての。
 いい友達を持ったなと心の中で呟きつつ、先ほどよりも軽快な足取りで一緒に歩きだす。
 何かこの仙人が気に入る食事があったかなぁと考えながら。




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