宇佐見菫子の困惑
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「いやーすまぬすまぬ。待たせてしまったかの?」
「ううん、私もいま着いたところ。……それにしても本当にこっちにこれるんだ」
先日、込み入った話があるとカセンちゃんとマミさんに相談したところ、それなら目が覚めるまでという時間制限がない『こっち』で会いましょう。……ということで現代で話をすることになった。
喫茶店……だと呪文のような注文になるから、もっと簡単な場所を……とお願いされて学生の味方であるファーストフード店に足を運ぶ。
そういえばカセンちゃんはたまにこちらに来て食べ歩きしているみたいだけど、本来こういうことは許されてないんじゃ?
「そう言われても幻想郷に身を置いているとはいえ、儂は古い友人に呼ばれてあっちに赴いたからのぅ……。それまではこちらでひっそりと暮らしていたのじゃがな。……余り大声では言えぬが、入る方法があるならその逆もあって然るべきとは思わぬか?」
「あっ……言われてみれば」
マミさんぐらいの大妖怪なら、確かに可能なのかもしれない。
「それに、何処かの誰かのように結界を壊して無理矢理こちらに来ている……といった事はないから安心するのじゃ」
「ちょっと!その事はあんまり言わないでよー!」
その何処かの誰かって言うのは私の事なんだから。
「ふぉっふぉっふぉっ……。まぁ、充分反省してたようだしこれ以上蒸し返すのは止めておこうかの」
勿論反省している。そんなに経ってないけど、あの夜はかなりバイオレンスだった。突然幻想郷に誘われて、都市伝説を味方につけた妖怪たちとの連戦に、レイムっち……いや、博麗の巫女とのガチ勝負と。たった数時間で色々ありすぎたのだ。
そのおかげなのか、今は夢の中で彼女たちの世界である幻想郷に足を運ぶことができるようになったのだけど。
「して、今回はどういった用件なんじゃ?」
「えっとね……」
これまであったことと、何に悩んでいるかを説明する。
全て聞き終えたマミさんは「ふむ……」と口に手を当て、考える素振りをみせてから私の方を見据えゆっくりと口を開いた。
「なるほどなぁ。お前さんがしっかりと考えて、それで悩んでいることはよくわかった。軽率に話すのではなく、一度踏みとどまってくれたことも嬉しく思う。
ただ、お前さんの能力が人に知られてしまうと消えてしまうかどうか……こればかりはその時にならんとわからないからのぅ。儂個人としては、その境遇に理解のある友は作った方が良いとは思うのじゃがなぁ……」
最後の方は普段に比べ歯切れが悪くなっていた。
「……たまにぼやいてるけどさ、幻想郷で暮らすこと事態は構わないのよ?」
レイムっちやカセンちゃんはこの話をすると良い顔をしないけど。
「守矢の巫女は様々な要因が重なって向こうで暮らすことを決めたと聞くが……、はたしておぬしは一人で暮らしていけるのか?」
「でも、一人って言っても友達はいるし……」
「あー違う違う、そうではないのじゃ。儂が言いたいのは、この世界の……科学の恩恵を受けて生活することに慣れきっているおぬしが、その恩恵のほとんどを捨て去ってでもこちらで暮らしていけるのかと聞いている」
こちらを見据え、私の目をしっかりと見ながらマミさんは聞いてきた。
「それは、その……」
改めて聞かれるとすぐに首を縦に振れなかった。
幻想郷には身を置きたいが、文明の利器は手放したくない。
「……」
良いとこ取りをしたいというのを見透かされているようで、ついマミさんから目を逸らしてしまった。
「はは。まぁ、直ぐには答えられぬよな。この件は時間をかけてじっくり考えて答えを出せばよい。
……それよりも、話すかどうかについてじゃが、これは儂一人の判断で決められるわけでもないしなぁ。お前さんも危惧している通り、能力が喪失する可能性や、存在そのものが幻想郷に住まう妖怪や神霊と同等な扱いになるのかは……さっきも言ったがその時にならないと対処できないのが大きな問題じゃな」
はじめから答えられないのを悟っていたかのように本来の話を続けてくれる彼女。
その心遣いに感謝しながら、改めて自分がどれだけ綱渡りな状態で過ごしているのかを確認する。
「……そうですよね」
やっぱりこの事はずっと隠し通していくしかないのかな。
と、そんな考えが頭によぎる。なんでそんな風に思ったのかはわからないけど、今までの自分と違った考え方に、私自身が一番驚いている。
「ふむ……そこまで落胆することでもなかろう?今すぐになにかが起こるわけでもないのじゃから、まずは華扇殿にも話してから改めて考えるとよい」
「……そう、ね。うん。ありがと、マミさん」
マミさんの励ましの言葉に力なく笑って返す。
カセンちゃんに話せば、このもやもやした気持ちも解消されるかな……。
「なぁに気にするでない。若人は悩むのも仕事のうちじゃ。
その時に道標になるのが儂みたいな年長者なんじゃから、存分に頼るが良い」
「うん。カセンちゃんとも話し終わったら、また頼らせて貰うね」
ありがと、マミさん。
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「いやーすまぬすまぬ。待たせてしまったかの?」
「ううん、私もいま着いたところ。……それにしても本当にこっちにこれるんだ」
先日、込み入った話があるとカセンちゃんとマミさんに相談したところ、それなら目が覚めるまでという時間制限がない『こっち』で会いましょう。……ということで現代で話をすることになった。
喫茶店……だと呪文のような注文になるから、もっと簡単な場所を……とお願いされて学生の味方であるファーストフード店に足を運ぶ。
そういえばカセンちゃんはたまにこちらに来て食べ歩きしているみたいだけど、本来こういうことは許されてないんじゃ?
「そう言われても幻想郷に身を置いているとはいえ、儂は古い友人に呼ばれてあっちに赴いたからのぅ……。それまではこちらでひっそりと暮らしていたのじゃがな。……余り大声では言えぬが、入る方法があるならその逆もあって然るべきとは思わぬか?」
「あっ……言われてみれば」
マミさんぐらいの大妖怪なら、確かに可能なのかもしれない。
「それに、何処かの誰かのように結界を壊して無理矢理こちらに来ている……といった事はないから安心するのじゃ」
「ちょっと!その事はあんまり言わないでよー!」
その何処かの誰かって言うのは私の事なんだから。
「ふぉっふぉっふぉっ……。まぁ、充分反省してたようだしこれ以上蒸し返すのは止めておこうかの」
勿論反省している。そんなに経ってないけど、あの夜はかなりバイオレンスだった。突然幻想郷に誘われて、都市伝説を味方につけた妖怪たちとの連戦に、レイムっち……いや、博麗の巫女とのガチ勝負と。たった数時間で色々ありすぎたのだ。
そのおかげなのか、今は夢の中で彼女たちの世界である幻想郷に足を運ぶことができるようになったのだけど。
「して、今回はどういった用件なんじゃ?」
「えっとね……」
これまであったことと、何に悩んでいるかを説明する。
全て聞き終えたマミさんは「ふむ……」と口に手を当て、考える素振りをみせてから私の方を見据えゆっくりと口を開いた。
「なるほどなぁ。お前さんがしっかりと考えて、それで悩んでいることはよくわかった。軽率に話すのではなく、一度踏みとどまってくれたことも嬉しく思う。
ただ、お前さんの能力が人に知られてしまうと消えてしまうかどうか……こればかりはその時にならんとわからないからのぅ。儂個人としては、その境遇に理解のある友は作った方が良いとは思うのじゃがなぁ……」
最後の方は普段に比べ歯切れが悪くなっていた。
「……たまにぼやいてるけどさ、幻想郷で暮らすこと事態は構わないのよ?」
レイムっちやカセンちゃんはこの話をすると良い顔をしないけど。
「守矢の巫女は様々な要因が重なって向こうで暮らすことを決めたと聞くが……、はたしておぬしは一人で暮らしていけるのか?」
「でも、一人って言っても友達はいるし……」
「あー違う違う、そうではないのじゃ。儂が言いたいのは、この世界の……科学の恩恵を受けて生活することに慣れきっているおぬしが、その恩恵のほとんどを捨て去ってでもこちらで暮らしていけるのかと聞いている」
こちらを見据え、私の目をしっかりと見ながらマミさんは聞いてきた。
「それは、その……」
改めて聞かれるとすぐに首を縦に振れなかった。
幻想郷には身を置きたいが、文明の利器は手放したくない。
「……」
良いとこ取りをしたいというのを見透かされているようで、ついマミさんから目を逸らしてしまった。
「はは。まぁ、直ぐには答えられぬよな。この件は時間をかけてじっくり考えて答えを出せばよい。
……それよりも、話すかどうかについてじゃが、これは儂一人の判断で決められるわけでもないしなぁ。お前さんも危惧している通り、能力が喪失する可能性や、存在そのものが幻想郷に住まう妖怪や神霊と同等な扱いになるのかは……さっきも言ったがその時にならないと対処できないのが大きな問題じゃな」
はじめから答えられないのを悟っていたかのように本来の話を続けてくれる彼女。
その心遣いに感謝しながら、改めて自分がどれだけ綱渡りな状態で過ごしているのかを確認する。
「……そうですよね」
やっぱりこの事はずっと隠し通していくしかないのかな。
と、そんな考えが頭によぎる。なんでそんな風に思ったのかはわからないけど、今までの自分と違った考え方に、私自身が一番驚いている。
「ふむ……そこまで落胆することでもなかろう?今すぐになにかが起こるわけでもないのじゃから、まずは華扇殿にも話してから改めて考えるとよい」
「……そう、ね。うん。ありがと、マミさん」
マミさんの励ましの言葉に力なく笑って返す。
カセンちゃんに話せば、このもやもやした気持ちも解消されるかな……。
「なぁに気にするでない。若人は悩むのも仕事のうちじゃ。
その時に道標になるのが儂みたいな年長者なんじゃから、存分に頼るが良い」
「うん。カセンちゃんとも話し終わったら、また頼らせて貰うね」
ありがと、マミさん。
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