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宇佐見菫子の一存

そしてその後はいくつかの怪談を目の当たりにした。

・あぎょうさん
・家庭科室の包丁
・体育館の亡霊
・段数の変わる階段
・ブリッジマン
・生首リフティング

 ……と昼間に話していた分と合わせれば七不思議どころの騒ぎじゃなかった。
 こちらに明確な敵意を持った現象もあれば、ただ起きているだけのほぼ無害なものもあり、しっかりと調べだせばまだまだあるのだろう……。
「意外と多かったな……」
「本当ね……。想定外がありすぎたし、小学校だけと思っていた怪談もあったんじゃ、まだまだ見つけてないものもありそうだけどね」
 部室へと戻った時には二人とも息絶え絶えであった。それだけ連続して怪異が襲ってきたからしばらくは何があっても動じない自信がある。
「さすがにこの時間からはもう厳しいだろ?」
 ただ、体力の方はすでに尽きているようなもので……そもそもこっちを追ってくる存在が多すぎるのだ。
「うーん。確かに今日はこれくらいでいいかな。……正直なところ七不思議の全体像がわからなすぎるものね」
 七つどころじゃなかったし、と宇佐見は笑う。
「……で、これからどうするんだ?」
 窓の外はまだ夜闇で暗い状態だが、もう少しすれば徐々に白みだして来るだろう。
「時間的にもそろそろお暇しなきゃ不味いわよね。誰かに見つかっても面倒だし……」
「かといって駅の近くの店なんて空いてないもんなぁ……始発って何時だっけ?」
「だいたい五時くらいじゃなかったかしら。それに合わせて動くの?」
「それが一番無難じゃないか?始発に乗るくらいならお咎めないだろうしさ」
「……そうね。今は四時過ぎでしょ?一時間くらいはあるのかぁ……」
「かといって待ちすぎると抜け出しにくくなるんだよな。とりあえず出てから考えようぜ」
 一時間かぁ……とため息を尽きながら宇佐見は帰り支度を始める。先に廊下で待ってると伝え、部室のドアを開けると小さな女の子がこちらを見上げながら立ち尽くしていた。
 突然の事態にその場で固まってしまう。
『きょうはあそんでくれてありがとう。うしろのおねえちゃんはだいじょうぶだけど、あなたはふつうのにんげんなんだから、もっときをつけてね』
 この子は一体……。
「そんな所で立ち止まってどうしたの……もしかして、びびって外に出れないとか?」
 宇佐見に声をかけられたことで強ばりがほぐれ、自由に体が動かせるようになっていた。
「そういうわけじゃ……」
「いいっていいって。明け方が一番暗いもんね。それにこの部屋から漏れ出てる光のせいで左右の影なんかより暗く感じるんだからそりゃ怖くもなるって……ってドア開けてこんなのが目の前にあったら誰でもビビるわよ」
 目を離した隙に女の子はいなくなっていたようで、先程まで女の子がいた場所には洋風の人形が落ちていた。
「……さっきまで人形なんてなかったんだけどな」
「綺麗な青い目、学校の怪談に人形の話ってあったっけ?……けど、このまま放っとくのも可愛そうだし、部室に置いておこうかしら」
「え?……本気か?」
「持ち主がいない人形が起こす有名な怪奇現象といえば?」
「えっと……有名なのはメリーさんの電話とか?」
「正解。ここで捨て置いて何か起きてしまうより、目の届く範囲に保管しておけば対処できるでしょ?……それにもしも危ないことが起きたとしても、知り合いに人形に詳しい人や鑑定士がいるから私に任せておきなさいって」
 そこまで言うならと渋々ながら食い下がる。今日のところはここで我慢してねと、部室の長机の上に丁寧に置かれた人形はどことなく嬉しそうな顔をしているように見えた。
「それじゃ、いきましょうか」
「そうだな」
 夜が開ける前に、侵入してきた時と同じ様に誰にも気がつかれないように学校を後にする。
 さて、電車が動き出すまでの時間はどうやって過ごそうか……。頭の片隅でそんなことを考えながら先に進んでいく会長の背中を追った。

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