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宇佐見菫子の一存

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 本館一階の理科準備室。ここは実験で使う機材や危険品を保管しておく部屋で、本来なら鍵が掛かっている筈なのを扉の前に立つまで忘れていた。
「そういや、鍵はどうするんだ?」
「そこは会長に任せなさい!」
 ドンッと胸を叩いてから鍵穴に何かしていく。残念ながら暗くて何をしているかは一切わからない。
「この暗さなのに大丈夫か?」
「へーきへーき。そろそろ開くわよ……よし!」
 ガチャリと解錠する音が響き、おお……と思わずに口から声が漏れる。
「まさか、ピッキングの技能があったなんて……」
「でしょう?もっと敬っても……ってちが――――」
 宇佐見の声を遮るように横開きの扉が開かれる。勿論、開けたのは俺でも、目の前にいる宇佐見でもない。
 二人してゆっくりと開いた扉の方を向くと、そこにはさも当然のように人体模型と骨格標本が肩を並べていた。
 思わぬ事態にヒュイッと変な声が出る。
「バッ……逃げるよウッチー!」
 宇佐見の声を耳にし、あわてて駆け出す。
「なんであんなのが当然のように動いてんだよ!」
「知らないわよ!学校の七不思議なんてそういうもんでしょ!」
「だぁーかぁーらぁー!ここは後にしようっていってたんだよぉぉぉ!」
「あー、もう!うるっさいわね!そんな口を動かす余裕あるなら足を動かせ足を!」
「うごかしてるっつーの!」
 走りながら振り向いてみると、依然として人ならざる二体が追いかけてきている。
「どうすんだよ!このままじゃ校舎の端まで行ってあいつらに追い付かれるのを待つしかないぞ!」
「あーもう!とりあえず上の階に行きましょ!一瞬でも視界から外れれば隠れてやり過ごせるかもだし!」
「了解っ!」
 そして次に見えた階段を速度はそのままでかけ上がっていく。
 最上階についた所で二人して息を切らしてその場にへたりこんでしまう。
「はぁ……はぁ……。いや、マジでなんなのあれ……」
「くっ……はぁ……はぁ……わ、私だって……知らないわよ……。恐らく動き出す人体模型と骨格標本……じゃないの?……すごいわね、一気に二つも七不思議の正体判明よ……?」
 どっちかひとつじゃなかったのか……。
「これ、二つとカウントしていいのか……?」
「実際微妙なところよね……恐らくだけど、骨格標本は動く人体模型の話から派生して生まれたんじゃない?逆の可能性もあるけどね」
 そんな簡単に七不思議は増えていいのか……。
「まあ、真偽はさておき……あいつらが追ってこないみたいだから、一応上の階は安全ってことかしらね……」
「だろうな……。それで、このまま続けるつもりなのか?」
「当たり前じゃない!まさか通ってる学校でこんなことが起こるだなんて……」
 あんな目にあったと言うのに、宇佐見はまだ元気一杯のようだった。こちらは正直同じようなことが起きるのだけは勘弁願いたい。
「……ま、そうなるよなぁ。四階には何かあるのか」
「この近くなら音楽室……かな。安全ならそのまま下に降りてく感じで。一階のあいつらは今はほっときましょ」
「了解」
 が、二度あることは……という感じでその夜は数多の怪異や怪談、都市伝説がこちらを驚かしに……いや、一部は確実に命を狙いに顕れてきた。

・音楽室の怪
 時間的にも誰もいない筈の音楽室だが、その中からは確かにピアノの旋律が聞こえてきた。
「まあ、人体模型とかが動くんだから当然といえば当然か……?」
「原因は少女の霊か、はたまたベートーベンの肖像画から現れ出た何かか……どちらにせよ正体を曝してやるわ!」
 たのもー!と勢いよく扉を開けた瞬間に、鍵盤に手を叩き付けたかのような音が鳴り響き静まり返ってしまった。
「あ……あれー?」
「そりゃ演奏中に急に大声で入ってきたら手を止めるよなぁ……」
「えっ?いまの私が悪いの?」
「生きてる人間相手なら悪いと思うけど、相手が幽霊とかじゃなんとも言えないかな」
 その後も室内をくまなく調べたが何も起こらず……、意気消沈した宇佐見を引き摺りながら音楽室を後にした。



 ただ、その後下の階を探索中に幽かにピアノの音が聞こえてきたので、恐らくだけど先程ピアノを弾いていた誰かは騒がしくて弾くのをやめてしまったのだろう。
 まあ、確かめようはないんだけどな。

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