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【14周年記念短編】
君をはじめて見つけたのはどれほど前だろうか。何かのパーティの時に隅で一人、本を読んでいる姿を見かけ、その神秘的な佇まいに一瞬で魅了されてしまった。
「……なによ、また来たの?」
そう言われる程度にはここの図書館には足繁く通うようになったし、上のお屋敷の方々ともそれなりに良い関係を築けている。
「来ちゃダメだった?」
「別に……、私の読書の邪魔をしなければ構わないけど」
手元の書籍に視線を移しながら、この図書館の管理人は言う。
わかったとだけ伝えて気になっていた本を数冊本棚から拝借し、彼女の正面のソファーの席に腰を下ろす。
「……邪魔をしないでって言ったわよね?」
「正面で読書するなとは言われてないからね」
諦めたのか、呆れられたのかわからないが、彼女が大きなため息をついてからは静かにお互いが本のページを捲る音くらいしか聞こえなくなった。
読書に集中してはいるのだが、時折向かいにいる彼女の顔を見てしまう。
普段もそうなのだが、集中しているときの顔はより素敵に見える。……なんて事を口にしたらすぐに追い出されてしまうかもだけど。
あまり凝視していても彼女の邪魔になってしまうので、すぐに自分の手元の本へ意識を集中させようとしたのだが。
「ふぁあ……あっ、ごめんなさい」
正面にいる彼女が、珍しく大きな欠伸をした。
「寝不足なの?」
「……寝不足ってほどじゃないのだけど、ちょっと魔法の研究が行き詰まっててね。最近だと気がついたら朝……なんて事もたまにあるわ」
「それを寝不足っていうんだよ!?」
「そうね、そうとも言うわね」
「少しここで寝ちゃえば?」
個人的には寝顔が少しでも見れればラッキー程度の提案だったのだが、こちらの言葉を聞いた相手は座っていた席を立つと何故かこちらの隣へ座り込み、
「……今日はお言葉に甘えさせて貰うわね」
とおもむろにこちらの太股を枕にしてきたのだった。
「え?えーと……パチュリー、さん?」
驚いて声をかけた時には既に規則正しい寝息がうっすらと聞こえてきた。
寝つきがいいなぁ……じゃなくて。この状態じゃ本の内容なんて頭に入らない。
.
どうしたものかと小さく唸っていると、司書の小悪魔さんの姿が目に入った。
「こ……」
小悪魔さんと呼びたかったが、それで彼女を起こしては本末転倒と思い、こちらに気が付くよう強く念じる事しか出来なかった。
「!!」
その願いが通じたのかこちらを確認すると驚きの表情を浮かべたあと、サイドテーブルと紅茶を用意してきてくれた。
「ナナシさん、これは一体どういう状況で?」
一通り準備し終えると小さく小悪魔さんは尋ねてきた。
「いや、眠そうにしてたからここで寝ちゃえばって提案したらこんな状況に」
「なるほどねぇ……パチュリーさまー寝室行きますよー」
「……」
「……あー、これはグッスリだね。ナナシさん悪いんだけど、しばらくこのままでいい?」
「構わないよ。……ちょっと役得かなって思ってたし」
寝ているパチュリーさんの頭を撫でようと手が延びそうになるが、グッとこらえてその手で紅茶を頂く。
「んー別に頭撫でるくらい良いんじゃないかなぁ。それくらいじゃパチュリー様怒らないだろうし」
「人が我慢した所に悪魔の囁きするのやめて貰えるかな?」
「ほら私、小悪魔なので!……じゃなくて、パチュリー様以外はもう気がついてるんですから、早く言えば良いのに」
それができたら苦労しないんだって。と心の中で返事をする。
「……伝えるにしても小悪魔さんがいないタイミングでかな?」
「いつ口にするかはナナシさん次第ですけど……あっ!なんなら今はパチュリー様は寝ているんだし、練習してはいかがです?」
頭も撫でながらとか?と面白い悪戯を提案するかのように小悪魔さんは口にする。
「なーんてね。とりあえずパチュリー様が目を覚ましたらまたお呼びください。お飲み物ご用意しますから」
そう言い残し彼女は普段の作業に戻っていく。
「練習……ねぇ」
反芻するように先程言われたことを口にする。確かに練習は必要かもしれないけど……。
悩みつつも寝ているパチュリーさんの頭を優しく撫でる。起きていたら怒られそうだなと言う考えが少しよぎるが眠りが深いのか振り払われたりはされなかった。
自分の気持ちをどう伝えるかと悩んだが、結局素直に伝えるのが一番だろうという結論に至り、寝ている彼女に向けて抱いている気持ちを口にしていた。
「好き、です。パチュリーさん」
寝ているとはいえ本人に言うと恥ずかしいなと照れ隠しのように再び彼女の頭を撫でる。
「あっ……」
その際にあの特徴的な帽子を落としてしまった。起こさないように拾わなきゃと手を伸ばすと
「……」
「……へ?」
顔を真っ赤にしているパチュリーさんと目があってしまった。
「もしかして……聞こえてた?」
恐る恐る尋ねると、彼女はこくりと頷いた。
「お、遅いのよ。ずっと待ってたんだから……」
こちらの太股に頭を預けたまま、彼女は口を動かす。
「ご、ごめん」
「謝るなら……そうね、もう少し撫でて欲しいのだけど」
「へ?」
「いや……その、頭をね……撫でて欲しいの」
消え入りそうな声でそう彼女はお願いしてきた。それならばと、先程と同じように彼女の頭を撫でる。
「ふふっ……可笑しいわね。あなたにこうされると何故かとても落ち着くの」
「そうなの?」
そうなのよ、と少し幸せそうな表情で答えるパチュリーさん。
「それで……その、ありがと。嬉しかった。私も……その、好きよ。ナナシさんのこと」
顔を赤くしたまま、彼女はこちらの気持ちへの返事をくれた。
END
あとがき
くりゅです。まさかまさかの14周年です。続くものですね、途中エタってた期間ありましたが…
未だにここを見にきてくれている方がいることにも感動しております。
最近は長編にかかりっきりで月1程度の更新頻度ですがたまーに突発短編書いたりしてますので色々読んでいただけると幸いです。
それではまた、次の更新にて
2023/4/4
君をはじめて見つけたのはどれほど前だろうか。何かのパーティの時に隅で一人、本を読んでいる姿を見かけ、その神秘的な佇まいに一瞬で魅了されてしまった。
「……なによ、また来たの?」
そう言われる程度にはここの図書館には足繁く通うようになったし、上のお屋敷の方々ともそれなりに良い関係を築けている。
「来ちゃダメだった?」
「別に……、私の読書の邪魔をしなければ構わないけど」
手元の書籍に視線を移しながら、この図書館の管理人は言う。
わかったとだけ伝えて気になっていた本を数冊本棚から拝借し、彼女の正面のソファーの席に腰を下ろす。
「……邪魔をしないでって言ったわよね?」
「正面で読書するなとは言われてないからね」
諦めたのか、呆れられたのかわからないが、彼女が大きなため息をついてからは静かにお互いが本のページを捲る音くらいしか聞こえなくなった。
読書に集中してはいるのだが、時折向かいにいる彼女の顔を見てしまう。
普段もそうなのだが、集中しているときの顔はより素敵に見える。……なんて事を口にしたらすぐに追い出されてしまうかもだけど。
あまり凝視していても彼女の邪魔になってしまうので、すぐに自分の手元の本へ意識を集中させようとしたのだが。
「ふぁあ……あっ、ごめんなさい」
正面にいる彼女が、珍しく大きな欠伸をした。
「寝不足なの?」
「……寝不足ってほどじゃないのだけど、ちょっと魔法の研究が行き詰まっててね。最近だと気がついたら朝……なんて事もたまにあるわ」
「それを寝不足っていうんだよ!?」
「そうね、そうとも言うわね」
「少しここで寝ちゃえば?」
個人的には寝顔が少しでも見れればラッキー程度の提案だったのだが、こちらの言葉を聞いた相手は座っていた席を立つと何故かこちらの隣へ座り込み、
「……今日はお言葉に甘えさせて貰うわね」
とおもむろにこちらの太股を枕にしてきたのだった。
「え?えーと……パチュリー、さん?」
驚いて声をかけた時には既に規則正しい寝息がうっすらと聞こえてきた。
寝つきがいいなぁ……じゃなくて。この状態じゃ本の内容なんて頭に入らない。
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どうしたものかと小さく唸っていると、司書の小悪魔さんの姿が目に入った。
「こ……」
小悪魔さんと呼びたかったが、それで彼女を起こしては本末転倒と思い、こちらに気が付くよう強く念じる事しか出来なかった。
「!!」
その願いが通じたのかこちらを確認すると驚きの表情を浮かべたあと、サイドテーブルと紅茶を用意してきてくれた。
「ナナシさん、これは一体どういう状況で?」
一通り準備し終えると小さく小悪魔さんは尋ねてきた。
「いや、眠そうにしてたからここで寝ちゃえばって提案したらこんな状況に」
「なるほどねぇ……パチュリーさまー寝室行きますよー」
「……」
「……あー、これはグッスリだね。ナナシさん悪いんだけど、しばらくこのままでいい?」
「構わないよ。……ちょっと役得かなって思ってたし」
寝ているパチュリーさんの頭を撫でようと手が延びそうになるが、グッとこらえてその手で紅茶を頂く。
「んー別に頭撫でるくらい良いんじゃないかなぁ。それくらいじゃパチュリー様怒らないだろうし」
「人が我慢した所に悪魔の囁きするのやめて貰えるかな?」
「ほら私、小悪魔なので!……じゃなくて、パチュリー様以外はもう気がついてるんですから、早く言えば良いのに」
それができたら苦労しないんだって。と心の中で返事をする。
「……伝えるにしても小悪魔さんがいないタイミングでかな?」
「いつ口にするかはナナシさん次第ですけど……あっ!なんなら今はパチュリー様は寝ているんだし、練習してはいかがです?」
頭も撫でながらとか?と面白い悪戯を提案するかのように小悪魔さんは口にする。
「なーんてね。とりあえずパチュリー様が目を覚ましたらまたお呼びください。お飲み物ご用意しますから」
そう言い残し彼女は普段の作業に戻っていく。
「練習……ねぇ」
反芻するように先程言われたことを口にする。確かに練習は必要かもしれないけど……。
悩みつつも寝ているパチュリーさんの頭を優しく撫でる。起きていたら怒られそうだなと言う考えが少しよぎるが眠りが深いのか振り払われたりはされなかった。
自分の気持ちをどう伝えるかと悩んだが、結局素直に伝えるのが一番だろうという結論に至り、寝ている彼女に向けて抱いている気持ちを口にしていた。
「好き、です。パチュリーさん」
寝ているとはいえ本人に言うと恥ずかしいなと照れ隠しのように再び彼女の頭を撫でる。
「あっ……」
その際にあの特徴的な帽子を落としてしまった。起こさないように拾わなきゃと手を伸ばすと
「……」
「……へ?」
顔を真っ赤にしているパチュリーさんと目があってしまった。
「もしかして……聞こえてた?」
恐る恐る尋ねると、彼女はこくりと頷いた。
「お、遅いのよ。ずっと待ってたんだから……」
こちらの太股に頭を預けたまま、彼女は口を動かす。
「ご、ごめん」
「謝るなら……そうね、もう少し撫でて欲しいのだけど」
「へ?」
「いや……その、頭をね……撫でて欲しいの」
消え入りそうな声でそう彼女はお願いしてきた。それならばと、先程と同じように彼女の頭を撫でる。
「ふふっ……可笑しいわね。あなたにこうされると何故かとても落ち着くの」
「そうなの?」
そうなのよ、と少し幸せそうな表情で答えるパチュリーさん。
「それで……その、ありがと。嬉しかった。私も……その、好きよ。ナナシさんのこと」
顔を赤くしたまま、彼女はこちらの気持ちへの返事をくれた。
END
あとがき
くりゅです。まさかまさかの14周年です。続くものですね、途中エタってた期間ありましたが…
未だにここを見にきてくれている方がいることにも感動しております。
最近は長編にかかりっきりで月1程度の更新頻度ですがたまーに突発短編書いたりしてますので色々読んでいただけると幸いです。
それではまた、次の更新にて
2023/4/4
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