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【キミの名前を呼びたくて】
紅茶とスコーンを乗せたカートを押しながら地下にある図書館へと向かう。
「時間は……問題ない。騒々しくもないから、白黒鼠さんは襲来してないはず……。よし」
頼まれていた時間を確認し、少しの間耳をすませる。以前焦って扉を開けた際に逃亡中の白黒鼠……魔理沙さんの突撃をモロに食らったため必要以上に安全確認をしてしまうようになってしまった。
コンコン、と扉を二度ほどノックしてから扉を開け、この図書館の主を呼ぶ。
「失礼します……。パチュリー様。そろそろお茶の時間ですが、いかがされますか?」
図書館に入って少し進んだところにある三日月型のテーブルと深く座れる椅子。ここの主である魔法使い、『パチュリー・ノーレッジ』さんは静かに佇んでいた。
「あら、もうそんな時間なのね。それじゃあいただこうかしら。……って小悪魔は一緒じゃないの?」
「えっと、今日は見かけてないですね」
「あの子ったら、まったく……。とりあえずカートはここに置いていいわよ。すぐにテーブルの上を片しちゃうから」
「かしこまりました。それで、小悪魔さんの分もいま用意しますか?」
カートの上でカップとソーサーを準備しながら尋ねる。
「そうねぇ……。今日の準備は私がしておくから、ナナシくんが探してきて貰える?」
「お任せください!」
そう息巻いて書架の方へ足を運んだはいいが……さすが地下『大』図書館。そうだよね、大図書館だもんね。広い。広すぎる……。果たして見つかるのか……。
「念のためパチュリー様の許可を貰って目印代わりに魔力石を通ってきた道に置いているけど……」
そもそもそのストックが持つかどうか……。
途方に暮れつつも、紅茶が冷める前に見つけなくては、と意気込み次の書架へ。
「でナナシさんは熱心に何の本を探してるのかな?もしや、お仕事の至難書とか?」
「いや、探してるのは本じゃなくて、小悪魔さんなんですよ……って小悪魔さん!?」
「はーい、小悪魔ですよー……えっと、なにか用かな?」
あまりにも唐突に現れたせいで面食らってしまう。一体いつからこちらの事を見つけていたのだろうか?
「お茶の時間ですので呼びに来たんですけど」
「もうそんな時間なんだ。いやー作業してると早いよね。……あれ。もしかしてパチュリー様お待たせしてたり?」
「待っていただくにも、この図書館の広さじゃ探すのにどれくらいかかるか見当がつかなかったので、先に一息いれても大丈夫とは伝えたんですが……」
準備まで手伝って貰ったから、なるべく待たせないようにしたいんだけど……。
置いてきた目印がだいぶ図書館の奥に来ている事を物語っている。
「そっか。なら、ちょっと急がないとだね。ナナシさんが置いてきた魔力石も拾わないとだし……あっ、だけど走らないようにね!」
「それは心得てますとも」
図書館ではお静かに、このルールはもといた世界と変わらないようだ。
.
「ただいま戻りまし……あれ?」
先ほどの場所に戻ると二人分のお茶の用意がされており、図書館の主の姿はどこにも見当たらなかった。
「どこいったんだろ?」
「ティーセットが一組丸々ないからレミリアお嬢様のところか、急なお客様が来たんじゃないかな?」
小悪魔さんに言われ、カートの上も確認し直すと、確かに持ってきたときよりも一組分ティーセットが少なくなっている。
パチュリー様が持ち運んで移動する姿は思い浮かばないので、恐らく咲夜さんがぱっと持っていったのだろう。
さて、そうすると戻ってくるまでは片付けたりしない方がいいのだろうか?
「あのナナシさん、良かったら二人でお茶しませんか?」
パチュリーさまは居ませんけど、折角準備されてるんだし……と悩んでいる僕に小悪魔さんは控えめに提案してきた。
「えーと……。僕でよろしければ、是非」
断る理由もないので、その提案に肯定する。そんなわけで珍しくも従者二人きりでのお茶会が始まったのだった。
「いつもはナナシさんに用意して貰ってるから、今日は私に任せて貰える?」
そう言い、張り切った様子で小悪魔さんはこちらを見つめてくる。
頼まれたのは僕なのだけど……なんだか断りにくい……。
「えっと、それじゃあお願いしてもいいかな?」
「はい!」
元気な返事をして手早く紅茶の準備をしだす小悪魔さん。安心した様子でこちらに話を振ってくる。
「でも良かったー。ナナシさんって仕事の良いサボり方知らないみたいだから、『僕が頼まれたから小悪魔さんは座ってて下さい』……とか言われるんじゃないかなって思ってたんだよ?」
「うっ……そ、そんなわけないじゃないですかー」
図星である。よくこっちのことわかってるなぁ。
「全く……。ここに来てから働き詰めでしょ?そんなんじゃ倒れちゃうから、適度に力抜かなきゃ」
「あはは……善処します……」
「それと、将来的には紅魔館の執事というよりも図書館付きの執事みたいな立ち位置になるんだからさ、もうちょっと砕けた言葉使いでもいいんだよ?」
試しにもう少しフランクにお話しようよ。と目の前に淹れ終わった紅茶とスコーンを出しながら提案してきた。
「頑張ってみま……みるよ。小悪魔さん」
「その、『小悪魔さん』っていうのも他人行儀に聞こえるんだけどなぁ」
少し意地悪く尋ねてくる小悪魔さん。そりゃ僕だって出来ることならもう少し親しみをこめて呼んでみたい。だけど……。
「その、小悪魔さんは固有の名前って……」
「あー……そういうことね」
固有の名前。それだけで彼女は僕の言わんとしていることを理解したらしい。
「役職名で呼ぶのもちょっと違うじゃないですか」
「なるほどね。私の個人名…… はもう契約の一環でパチュリー様が管理してるわけだし……あー!もどかしいなぁ!せっかく仲良くなれるチャンスなのに!」
個人名、その部分だけは音が書き消されたかのように口が動いても音がしない。魔女との契約の際に色々あったんだろうか。
.
「えっと……『こあさん』なんてどう?」
響きがいいからこう呼んでみたいな、と思ったあだ名で一度呼んでみる。
「ちょっとー、あだ名でもさん付けなのー?」
お気に召さなかったのか少しむっとした表情で言い返される。
「それじゃあ……『こあ』」
「な……なな……!?い、いきなりはずるいって……!」
あだ名とはいえ、呼び捨てで呼んでみると今度は顔を赤くし、そのまま机に突っ伏してしまう。
「……まったく、こっちの気も知らないで」
「こあ?大丈夫?」
「ストップストップ!まだ私が慣れないから、しばらくはこあさんでお願いします!」
「わかったよ、こあさん」
息を整え、あービックリした。と紅茶に口をつけるこあさん。
「……どれくらいで呼び捨てに慣れそうですか?」
一口飲み終えた所でそう尋ねてみた。
「だいぶ時間はかかると思うけど……って、そんなに私のこと呼び捨てにしたいの?」
「フランクに、って言ったのはこあさんじゃないですか!」
「そーだけどさー……」
間髪いれずに呼んでくるとは思ってないから心の準備とか出来てないし……と彼女は小さな声で呟く。
「これからフランクに喋るようにのを頑張るから、小悪魔さんもあだ名呼びに慣れて欲しいと思うんですけど」
「むー……難易度違いすぎじゃない?」
「それは、まあ……仕方ないといいますか」
「……早速口調が丁寧になってるよ」
「難易度差は仕方ないで……から、お詫びというか、こあ……さんが良かったら今度のお休みの日に人里に行かない?」
「いいけど……突然だね」
「最近、紅茶を美味しく淹れる練習や、お茶請けのお菓子を作ったりしてて……もちろん咲夜さん監修なので厳しい分着実に腕はあがってる……はずなんですけど……」
紅茶に関しては及第点、お菓子はまだ赤点で一回里で食べてきたらと言われるくらいだ。
「ま、そういう技術は一朝一夕に身に付かないもんねー」
「それだから勉強も兼ねて甘味処に行きたいなって」
「勉強も兼ねてって、他に何かあるの?」
「その……デートのお誘いなんだけど」
「えっ!?……わ、私で良ければよろしくお願いします」
再度顔を赤くし、俯きながらもこあさんは返事をくれた。
次のお休みが正念場か……その時までにちゃんと伝えられるようにしないと。
「それで、話は終わったかしら?」
「パチュリー様!?いつ戻ったんですか?」
「というよりも、どこから聞いてらしたんですか!?」
いつの間にかこの図書館の主は戻ってきていた。
話し込んでいて気がつかなかった。
「戻ったのはちょっと前よ。どこから聞いてたかっていうのは……貴女があだ名で呼ばれ出したところからかしら?」
「ほとんど全部聞いてるじゃないですかー!なんですか?盗み聞きの魔女なんですか!?」
先程のやり取りまで聞かれていると思うと顔が熱くなってくる。
ただ、それはこあさんも同じようで、赤い顔で自分の主を問い詰め出していた。
「あのねぇ、盗み聞きもなにもこの共用スペースで惚気てるのが行けないのよ?」
「それは、そうかもしれませんけど……!ナナシさんも、この人に何か言ってやってくださいよ!」
そう言い、こあさんは僕の背中を押す。突然だったのでよろけながらパチュリーさんの前に出てしまった。
「えっと……パチュリーさん」
「ナナシくん、小悪魔のことよろしくね?」
「え、あっ……はい、お任せください!……じゃなくて」
何を言うか迷っていたが、こあさんの契約者……主人の一言に条件反射で頷いてしまう。
「そろそろ休憩もおしまいかしら?急がないと咲夜に怒られちゃうわよ?」
「そうだった……。それじゃあ先に失礼します!」
手早く出していた食器類をワゴンに乗せ急ぎ足で厨房へと駆け出した。
お休みの時はこんなに慌ただしくなければいいんだけど……。
END.
あとがきのようなもの
お久しぶりです、だいたい月1更新目指しておりますくりゅです。
ひとまず今作の夢主設定は以下の通りです。
夢主設定
紅魔館の雇われ執事(見習い)。
外界(日本のとある街)の出身。偶々境界を越えてしまい幻想郷へ……。
昼間だったため運よく妖怪には襲われず、五体満足で博麗神社に辿り着く。
巫女が送り返そうとしたところ、丁度来ていた幼い吸血鬼に男手が足りないという事で紅魔館へ住み込みで働くことに……。
基本的な作業は咲夜一人で足りるが図書館周りの雑務はメイド妖精と小悪魔だけでは手が回らず、その解消のため図書館付きの執事見習いとして生活することになった。
って感じの設定で今回は書きました。
はじめて書いたときはもっと設定薄かったので練れるところを練って破綻しないように追加してみました。
リクエスト作もリメイクしていくつもりですが、新規の短篇も書きたいですね
それではまた
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紅茶とスコーンを乗せたカートを押しながら地下にある図書館へと向かう。
「時間は……問題ない。騒々しくもないから、白黒鼠さんは襲来してないはず……。よし」
頼まれていた時間を確認し、少しの間耳をすませる。以前焦って扉を開けた際に逃亡中の白黒鼠……魔理沙さんの突撃をモロに食らったため必要以上に安全確認をしてしまうようになってしまった。
コンコン、と扉を二度ほどノックしてから扉を開け、この図書館の主を呼ぶ。
「失礼します……。パチュリー様。そろそろお茶の時間ですが、いかがされますか?」
図書館に入って少し進んだところにある三日月型のテーブルと深く座れる椅子。ここの主である魔法使い、『パチュリー・ノーレッジ』さんは静かに佇んでいた。
「あら、もうそんな時間なのね。それじゃあいただこうかしら。……って小悪魔は一緒じゃないの?」
「えっと、今日は見かけてないですね」
「あの子ったら、まったく……。とりあえずカートはここに置いていいわよ。すぐにテーブルの上を片しちゃうから」
「かしこまりました。それで、小悪魔さんの分もいま用意しますか?」
カートの上でカップとソーサーを準備しながら尋ねる。
「そうねぇ……。今日の準備は私がしておくから、ナナシくんが探してきて貰える?」
「お任せください!」
そう息巻いて書架の方へ足を運んだはいいが……さすが地下『大』図書館。そうだよね、大図書館だもんね。広い。広すぎる……。果たして見つかるのか……。
「念のためパチュリー様の許可を貰って目印代わりに魔力石を通ってきた道に置いているけど……」
そもそもそのストックが持つかどうか……。
途方に暮れつつも、紅茶が冷める前に見つけなくては、と意気込み次の書架へ。
「でナナシさんは熱心に何の本を探してるのかな?もしや、お仕事の至難書とか?」
「いや、探してるのは本じゃなくて、小悪魔さんなんですよ……って小悪魔さん!?」
「はーい、小悪魔ですよー……えっと、なにか用かな?」
あまりにも唐突に現れたせいで面食らってしまう。一体いつからこちらの事を見つけていたのだろうか?
「お茶の時間ですので呼びに来たんですけど」
「もうそんな時間なんだ。いやー作業してると早いよね。……あれ。もしかしてパチュリー様お待たせしてたり?」
「待っていただくにも、この図書館の広さじゃ探すのにどれくらいかかるか見当がつかなかったので、先に一息いれても大丈夫とは伝えたんですが……」
準備まで手伝って貰ったから、なるべく待たせないようにしたいんだけど……。
置いてきた目印がだいぶ図書館の奥に来ている事を物語っている。
「そっか。なら、ちょっと急がないとだね。ナナシさんが置いてきた魔力石も拾わないとだし……あっ、だけど走らないようにね!」
「それは心得てますとも」
図書館ではお静かに、このルールはもといた世界と変わらないようだ。
.
「ただいま戻りまし……あれ?」
先ほどの場所に戻ると二人分のお茶の用意がされており、図書館の主の姿はどこにも見当たらなかった。
「どこいったんだろ?」
「ティーセットが一組丸々ないからレミリアお嬢様のところか、急なお客様が来たんじゃないかな?」
小悪魔さんに言われ、カートの上も確認し直すと、確かに持ってきたときよりも一組分ティーセットが少なくなっている。
パチュリー様が持ち運んで移動する姿は思い浮かばないので、恐らく咲夜さんがぱっと持っていったのだろう。
さて、そうすると戻ってくるまでは片付けたりしない方がいいのだろうか?
「あのナナシさん、良かったら二人でお茶しませんか?」
パチュリーさまは居ませんけど、折角準備されてるんだし……と悩んでいる僕に小悪魔さんは控えめに提案してきた。
「えーと……。僕でよろしければ、是非」
断る理由もないので、その提案に肯定する。そんなわけで珍しくも従者二人きりでのお茶会が始まったのだった。
「いつもはナナシさんに用意して貰ってるから、今日は私に任せて貰える?」
そう言い、張り切った様子で小悪魔さんはこちらを見つめてくる。
頼まれたのは僕なのだけど……なんだか断りにくい……。
「えっと、それじゃあお願いしてもいいかな?」
「はい!」
元気な返事をして手早く紅茶の準備をしだす小悪魔さん。安心した様子でこちらに話を振ってくる。
「でも良かったー。ナナシさんって仕事の良いサボり方知らないみたいだから、『僕が頼まれたから小悪魔さんは座ってて下さい』……とか言われるんじゃないかなって思ってたんだよ?」
「うっ……そ、そんなわけないじゃないですかー」
図星である。よくこっちのことわかってるなぁ。
「全く……。ここに来てから働き詰めでしょ?そんなんじゃ倒れちゃうから、適度に力抜かなきゃ」
「あはは……善処します……」
「それと、将来的には紅魔館の執事というよりも図書館付きの執事みたいな立ち位置になるんだからさ、もうちょっと砕けた言葉使いでもいいんだよ?」
試しにもう少しフランクにお話しようよ。と目の前に淹れ終わった紅茶とスコーンを出しながら提案してきた。
「頑張ってみま……みるよ。小悪魔さん」
「その、『小悪魔さん』っていうのも他人行儀に聞こえるんだけどなぁ」
少し意地悪く尋ねてくる小悪魔さん。そりゃ僕だって出来ることならもう少し親しみをこめて呼んでみたい。だけど……。
「その、小悪魔さんは固有の名前って……」
「あー……そういうことね」
固有の名前。それだけで彼女は僕の言わんとしていることを理解したらしい。
「役職名で呼ぶのもちょっと違うじゃないですか」
「なるほどね。私の個人名…… はもう契約の一環でパチュリー様が管理してるわけだし……あー!もどかしいなぁ!せっかく仲良くなれるチャンスなのに!」
個人名、その部分だけは音が書き消されたかのように口が動いても音がしない。魔女との契約の際に色々あったんだろうか。
.
「えっと……『こあさん』なんてどう?」
響きがいいからこう呼んでみたいな、と思ったあだ名で一度呼んでみる。
「ちょっとー、あだ名でもさん付けなのー?」
お気に召さなかったのか少しむっとした表情で言い返される。
「それじゃあ……『こあ』」
「な……なな……!?い、いきなりはずるいって……!」
あだ名とはいえ、呼び捨てで呼んでみると今度は顔を赤くし、そのまま机に突っ伏してしまう。
「……まったく、こっちの気も知らないで」
「こあ?大丈夫?」
「ストップストップ!まだ私が慣れないから、しばらくはこあさんでお願いします!」
「わかったよ、こあさん」
息を整え、あービックリした。と紅茶に口をつけるこあさん。
「……どれくらいで呼び捨てに慣れそうですか?」
一口飲み終えた所でそう尋ねてみた。
「だいぶ時間はかかると思うけど……って、そんなに私のこと呼び捨てにしたいの?」
「フランクに、って言ったのはこあさんじゃないですか!」
「そーだけどさー……」
間髪いれずに呼んでくるとは思ってないから心の準備とか出来てないし……と彼女は小さな声で呟く。
「これからフランクに喋るようにのを頑張るから、小悪魔さんもあだ名呼びに慣れて欲しいと思うんですけど」
「むー……難易度違いすぎじゃない?」
「それは、まあ……仕方ないといいますか」
「……早速口調が丁寧になってるよ」
「難易度差は仕方ないで……から、お詫びというか、こあ……さんが良かったら今度のお休みの日に人里に行かない?」
「いいけど……突然だね」
「最近、紅茶を美味しく淹れる練習や、お茶請けのお菓子を作ったりしてて……もちろん咲夜さん監修なので厳しい分着実に腕はあがってる……はずなんですけど……」
紅茶に関しては及第点、お菓子はまだ赤点で一回里で食べてきたらと言われるくらいだ。
「ま、そういう技術は一朝一夕に身に付かないもんねー」
「それだから勉強も兼ねて甘味処に行きたいなって」
「勉強も兼ねてって、他に何かあるの?」
「その……デートのお誘いなんだけど」
「えっ!?……わ、私で良ければよろしくお願いします」
再度顔を赤くし、俯きながらもこあさんは返事をくれた。
次のお休みが正念場か……その時までにちゃんと伝えられるようにしないと。
「それで、話は終わったかしら?」
「パチュリー様!?いつ戻ったんですか?」
「というよりも、どこから聞いてらしたんですか!?」
いつの間にかこの図書館の主は戻ってきていた。
話し込んでいて気がつかなかった。
「戻ったのはちょっと前よ。どこから聞いてたかっていうのは……貴女があだ名で呼ばれ出したところからかしら?」
「ほとんど全部聞いてるじゃないですかー!なんですか?盗み聞きの魔女なんですか!?」
先程のやり取りまで聞かれていると思うと顔が熱くなってくる。
ただ、それはこあさんも同じようで、赤い顔で自分の主を問い詰め出していた。
「あのねぇ、盗み聞きもなにもこの共用スペースで惚気てるのが行けないのよ?」
「それは、そうかもしれませんけど……!ナナシさんも、この人に何か言ってやってくださいよ!」
そう言い、こあさんは僕の背中を押す。突然だったのでよろけながらパチュリーさんの前に出てしまった。
「えっと……パチュリーさん」
「ナナシくん、小悪魔のことよろしくね?」
「え、あっ……はい、お任せください!……じゃなくて」
何を言うか迷っていたが、こあさんの契約者……主人の一言に条件反射で頷いてしまう。
「そろそろ休憩もおしまいかしら?急がないと咲夜に怒られちゃうわよ?」
「そうだった……。それじゃあ先に失礼します!」
手早く出していた食器類をワゴンに乗せ急ぎ足で厨房へと駆け出した。
お休みの時はこんなに慌ただしくなければいいんだけど……。
END.
あとがきのようなもの
お久しぶりです、だいたい月1更新目指しておりますくりゅです。
ひとまず今作の夢主設定は以下の通りです。
夢主設定
紅魔館の雇われ執事(見習い)。
外界(日本のとある街)の出身。偶々境界を越えてしまい幻想郷へ……。
昼間だったため運よく妖怪には襲われず、五体満足で博麗神社に辿り着く。
巫女が送り返そうとしたところ、丁度来ていた幼い吸血鬼に男手が足りないという事で紅魔館へ住み込みで働くことに……。
基本的な作業は咲夜一人で足りるが図書館周りの雑務はメイド妖精と小悪魔だけでは手が回らず、その解消のため図書館付きの執事見習いとして生活することになった。
って感じの設定で今回は書きました。
はじめて書いたときはもっと設定薄かったので練れるところを練って破綻しないように追加してみました。
リクエスト作もリメイクしていくつもりですが、新規の短篇も書きたいですね
それではまた
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