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【これまでも、これからも……】
「ナナシさん、このメモに書いてある本なんだけど……後で探してもらえるかしら?」
「ナナシさん、実験に使う薬品なのだけれど……高い位置に閉まってしまったから、代わりに取ってくれる?」
「ナナシさん、その……紅茶淹れたのだけど、一緒にいかがかしら……?」
幻想郷、そう呼ばれる土地に迷い込んで紆余曲折あり、そのまま永住することになってはや数年。
最近は紅魔館というお屋敷の大図書館に居候させてもらっている。
「うん、もうすぐで作業終わるからちょっとだけ待ってて欲しいな」
先ほど頼まれた資料探しをしながら、この大図書館の管理人でもあるパチュリーさんにそう返事をする。
すると彼女は、「なら、少し見ていようかしら?」と近くにあった椅子に腰掛けこちらの様子を眺め始めた。
お茶に誘われてから五分くらい経っただろうか。最後の一冊を書架から引き抜くのと同じタイミングで座っていた彼女から声をかけられる。
「それで終わりかしら?」
「うん、終わりだよ」
そう笑いながら答える。
「小悪魔はお使いに行かせてるからあとでもいいとして……今日のお茶は咲夜じゃなくて私が用意したんだけど……ナナシさんはそれでも平気?」
少し不安そうにパチュリーさんは尋ねてきた。
「え?パチュリーさんが淹れてくれたの!?」
「え、えぇ。だから咲夜と比べると美味しくないかも知れないけど……」
「嬉しいなぁ、この前一回淹れてくれた時あったでしょ。そのとき美味しかったから、また飲んでみたかったんだ」
僕の返答に彼女は顔を赤くする……といっても図書館内は少し薄暗いから、そんな気がしたぐらいなんだけど。
「そ、そう?貴方のお口にあったのなら良かったわ」
「咲夜さんのも美味しいんだけど、あの時の紅茶は、なんだろう……比べると優しい味だったっていうか……。そっか、パチュリーさんが淹れてくれたんだ」
「そんなに褒めたって何もでないわよ?それよりも、冷めちゃうから早くお茶にしましょ」
「そうだね」
褒められて恥ずかしかったのか、パチュリーさんは普段より少し早歩きで休憩室へと歩き出す。
その後ろを置いていかれないように付いていった。
.
休憩室でお茶と一緒に、これまたパチュリーさんお手製のスコーンをいただく。
……やっぱり美味しい。咲夜さんの用意するお茶請けの時よりもなんだか美味しい気がする。
「……どうかしら?」
「うん、美味しいよ」
ほっと胸を撫で下ろすパチュリーさん。
「やっぱり、パチュリーさんのが好きだなぁ」
「へっ……いや、どうしたの急にそんな……」
「咲夜さんのももちろん美味しいけどさ、なんかパチュリーさんが作ってくれたものの方が僕は好きだな……ってどうしたの、パチュリーさん?」
「いや、そうよね。お茶請けの話だったものね……でも、うん。ありがと、ナナシさん」
何故か深い溜め息をついていた彼女はとびきり……とはいわないが、はにかんだ優しい笑顔を向けてくれた。
「どういたしまして」
その笑顔を受け、頬が熱くなるのを感じる。
図書館と比べると明るい休憩室だと気がつかれているかもしれないが、それを悟られないように出されていたティーカップをとり、口を付ける。
少しの間、心地よい無言の空間がそこにあった。
それを破ったのはーーーー
「たっだいまもどりましたーーーー!」
図書館の司書さんでもある小悪魔さんだった。
「お帰りなさい、小悪魔さん」
「小悪魔……貴女もう少し静かに入ってきなさいよ……」
「別にいーじゃないですかー!ここって図書館じゃなくて休憩室ですしー。
それじゃこれ、パチュリー様に頼まれたものです」
小悪魔さんはテーブルの上に幾つかの本を置いていった。珍しく魔導書や妖魔本ではなく、外の世界……僕が住んでいた現代の、外来本と呼ばれる括りの書籍だった。
書かれている言葉から日本のものということが窺える。
「ちょっと!それは私の……」
「あっ、パチュリー様のお部屋に持っていくんでしたね。失敬失敬……」
積んでいた本をそそくさと戻し、小悪魔さんは休憩室を出ようとする。
「そういえば、ナナシくん。鈴奈庵の子が寂しがってたよ?『張り合いがある話し相手が来ない』って」
「あーうん。小鈴ちゃんのところには近いうちに顔出すね」
「はいはーい。また私がお使い頼まれたらそんな感じに伝えておくね」
「ありがとう、小悪魔さん」
ばたり、と休憩室のドアが閉まる。
そういえばお茶の準備してあることを小悪魔さんに伝えそびれたなと思い、パチュリーさんの方を向くと、さっきまでののんびりとした雰囲気はなくなっていた。
.
「ねぇ、ナナシさん。その……急にここに誘ってしまって迷惑じゃなかった?」
「……いきなりどうしたの?お茶は美味しかったし、全然……」
「そうじゃなくて!前は里で暮らせていたのに……引き抜きみたく貸本屋の所からこっちの図書館に連れてきてしまって、迷惑じゃなかったの?」
神妙な面持ちで彼女は問いかけてくる。
「幻想郷に住むって決めたならここよりも里で普通に暮らして人らしく生きていたかったんじゃないの?
同郷の山の神社の面々とも話は合うでしょうし、貸本屋の看板娘だってナナシさんとならお似合いなのよ?
なのにわざわざこんな埃っぽい図書館にスカウトされて、住み込みで働きながら……もしナナシさんが嫌っていうならいつでも里に戻ってもいいんだからね?」
と、段々涙混じりの声になりながらパチュリーさんは僕に尋ねてきた。
「……迷惑なんかじゃないよ」
そんな彼女を見据え、はっきりと告げる。
「……ほんとに?」
「うん。……というよりも嬉しかったんだ、ここに誘われたのが」
貸本屋で手伝いをしていた時から、何度かパチュリーさんのことを見かけたことがある。はじめは「すごい綺麗な人だなぁ」ってぐらいだったのに、いつの間にか「また来ないかなぁ」と思うようになっていた。
その時の事を思い出しながら話続ける。
「貸本屋でさ、高いところの本に届かなくて背伸びして取ろうとしてたじゃない?」
「……あったわねぇ。私としては忘れて欲しいけど」
「あの時手伝ったの迷惑だったんじゃないかなぁって思ってたから、その後にお礼どころかスカウトされるなんて思ってなかったんだよ」
「でも、里にいた方が……」
「確かに里にいた方が色々と楽だったかも知れないんだけどさ、このチャンスは逃しちゃいけないっていう気持ちの方が強かったんだ」
「……チャンス?」
涙を拭いた彼女を見つめながら、これまで胸に秘めていた思いを口にする。
「そう……好きな相手と近づける、そんなチャンスは逃せないじゃん」
口に出すと耳まで熱くなるのを感じた。すごいキザったらしい台詞で内心言ってて恥ずかしくなっている。
「……嘘じゃないわよね」
「うん」
「……ちゃんと言ってくれないとわからないわよ」
「ちゃんとって……」
完全に聞き返す前に理解する。
目の前にいる人は長命の魔法使いだけど、それ以前に女の子なのだ。
彼女の前に行き、目線を合わせて改めて思いを伝える。
「パチュリーさん、好きです。付き合っていただけませんか?」
「……ええ、喜んで!」
嬉しさのあまり、その勢いで彼女をぎゅっと抱き締めてしまった。
「ちょっと、痛いわよ……」
「あ、ごめん……嬉しくって、つい」
慌てて手を離す……が彼女の方からこちらに抱き付いていた。
「離してとは言ってないでしょ?もう少し優しくして頂戴」
言われるがまま、抱えるようにパチュリーさんを包容する。
「こ、こうかな?」
「ありがと、ナナシさん。私も大好きよ。これまでも、これからも……」
そう告げる彼女の声色はとても優しいものだった。
END
→あとがき
.
初めましての方は初めまして。
お久しぶりの方は……え、約10年ぶり?そんなまさか……
お久しぶりです。くりゅです。
一時期エタってた期間ありますが、なんだかんだで13年目に突入したみたいです。
自分でも驚き……。
長編に移行したから書いてはいるけど、短編夢は10年ぶりの新作ですよ。
そして始めてのパチュリー夢ですよ!
プロットなし、原動力は『書きたい!』って気持ちのみで出力しきりました。
このジャンルにハマってから13年、そんでもって嫁は変わらずパチュリー……
今では推しって概念の方が強いから、推し変せずに13年間パチュリー最推しを続けてるのね……。
長編夢でヒロインに据えてるから既に何本か書いてあるという存在しない記憶があったのは秘密っす。
そのうち短編夢を一つ書きたいなと、菫子甘夢とか書きたいなと思っております。
長編は亀でも進めておりますゆえ、お待ちを……
次回の短編更新は何年後か……。
それではー
追記(5/21)
確認したら一度、運営初期の頃に一件パチュリー夢リクエストいただいておりました…大変申し訳ない……
「ナナシさん、このメモに書いてある本なんだけど……後で探してもらえるかしら?」
「ナナシさん、実験に使う薬品なのだけれど……高い位置に閉まってしまったから、代わりに取ってくれる?」
「ナナシさん、その……紅茶淹れたのだけど、一緒にいかがかしら……?」
幻想郷、そう呼ばれる土地に迷い込んで紆余曲折あり、そのまま永住することになってはや数年。
最近は紅魔館というお屋敷の大図書館に居候させてもらっている。
「うん、もうすぐで作業終わるからちょっとだけ待ってて欲しいな」
先ほど頼まれた資料探しをしながら、この大図書館の管理人でもあるパチュリーさんにそう返事をする。
すると彼女は、「なら、少し見ていようかしら?」と近くにあった椅子に腰掛けこちらの様子を眺め始めた。
お茶に誘われてから五分くらい経っただろうか。最後の一冊を書架から引き抜くのと同じタイミングで座っていた彼女から声をかけられる。
「それで終わりかしら?」
「うん、終わりだよ」
そう笑いながら答える。
「小悪魔はお使いに行かせてるからあとでもいいとして……今日のお茶は咲夜じゃなくて私が用意したんだけど……ナナシさんはそれでも平気?」
少し不安そうにパチュリーさんは尋ねてきた。
「え?パチュリーさんが淹れてくれたの!?」
「え、えぇ。だから咲夜と比べると美味しくないかも知れないけど……」
「嬉しいなぁ、この前一回淹れてくれた時あったでしょ。そのとき美味しかったから、また飲んでみたかったんだ」
僕の返答に彼女は顔を赤くする……といっても図書館内は少し薄暗いから、そんな気がしたぐらいなんだけど。
「そ、そう?貴方のお口にあったのなら良かったわ」
「咲夜さんのも美味しいんだけど、あの時の紅茶は、なんだろう……比べると優しい味だったっていうか……。そっか、パチュリーさんが淹れてくれたんだ」
「そんなに褒めたって何もでないわよ?それよりも、冷めちゃうから早くお茶にしましょ」
「そうだね」
褒められて恥ずかしかったのか、パチュリーさんは普段より少し早歩きで休憩室へと歩き出す。
その後ろを置いていかれないように付いていった。
.
休憩室でお茶と一緒に、これまたパチュリーさんお手製のスコーンをいただく。
……やっぱり美味しい。咲夜さんの用意するお茶請けの時よりもなんだか美味しい気がする。
「……どうかしら?」
「うん、美味しいよ」
ほっと胸を撫で下ろすパチュリーさん。
「やっぱり、パチュリーさんのが好きだなぁ」
「へっ……いや、どうしたの急にそんな……」
「咲夜さんのももちろん美味しいけどさ、なんかパチュリーさんが作ってくれたものの方が僕は好きだな……ってどうしたの、パチュリーさん?」
「いや、そうよね。お茶請けの話だったものね……でも、うん。ありがと、ナナシさん」
何故か深い溜め息をついていた彼女はとびきり……とはいわないが、はにかんだ優しい笑顔を向けてくれた。
「どういたしまして」
その笑顔を受け、頬が熱くなるのを感じる。
図書館と比べると明るい休憩室だと気がつかれているかもしれないが、それを悟られないように出されていたティーカップをとり、口を付ける。
少しの間、心地よい無言の空間がそこにあった。
それを破ったのはーーーー
「たっだいまもどりましたーーーー!」
図書館の司書さんでもある小悪魔さんだった。
「お帰りなさい、小悪魔さん」
「小悪魔……貴女もう少し静かに入ってきなさいよ……」
「別にいーじゃないですかー!ここって図書館じゃなくて休憩室ですしー。
それじゃこれ、パチュリー様に頼まれたものです」
小悪魔さんはテーブルの上に幾つかの本を置いていった。珍しく魔導書や妖魔本ではなく、外の世界……僕が住んでいた現代の、外来本と呼ばれる括りの書籍だった。
書かれている言葉から日本のものということが窺える。
「ちょっと!それは私の……」
「あっ、パチュリー様のお部屋に持っていくんでしたね。失敬失敬……」
積んでいた本をそそくさと戻し、小悪魔さんは休憩室を出ようとする。
「そういえば、ナナシくん。鈴奈庵の子が寂しがってたよ?『張り合いがある話し相手が来ない』って」
「あーうん。小鈴ちゃんのところには近いうちに顔出すね」
「はいはーい。また私がお使い頼まれたらそんな感じに伝えておくね」
「ありがとう、小悪魔さん」
ばたり、と休憩室のドアが閉まる。
そういえばお茶の準備してあることを小悪魔さんに伝えそびれたなと思い、パチュリーさんの方を向くと、さっきまでののんびりとした雰囲気はなくなっていた。
.
「ねぇ、ナナシさん。その……急にここに誘ってしまって迷惑じゃなかった?」
「……いきなりどうしたの?お茶は美味しかったし、全然……」
「そうじゃなくて!前は里で暮らせていたのに……引き抜きみたく貸本屋の所からこっちの図書館に連れてきてしまって、迷惑じゃなかったの?」
神妙な面持ちで彼女は問いかけてくる。
「幻想郷に住むって決めたならここよりも里で普通に暮らして人らしく生きていたかったんじゃないの?
同郷の山の神社の面々とも話は合うでしょうし、貸本屋の看板娘だってナナシさんとならお似合いなのよ?
なのにわざわざこんな埃っぽい図書館にスカウトされて、住み込みで働きながら……もしナナシさんが嫌っていうならいつでも里に戻ってもいいんだからね?」
と、段々涙混じりの声になりながらパチュリーさんは僕に尋ねてきた。
「……迷惑なんかじゃないよ」
そんな彼女を見据え、はっきりと告げる。
「……ほんとに?」
「うん。……というよりも嬉しかったんだ、ここに誘われたのが」
貸本屋で手伝いをしていた時から、何度かパチュリーさんのことを見かけたことがある。はじめは「すごい綺麗な人だなぁ」ってぐらいだったのに、いつの間にか「また来ないかなぁ」と思うようになっていた。
その時の事を思い出しながら話続ける。
「貸本屋でさ、高いところの本に届かなくて背伸びして取ろうとしてたじゃない?」
「……あったわねぇ。私としては忘れて欲しいけど」
「あの時手伝ったの迷惑だったんじゃないかなぁって思ってたから、その後にお礼どころかスカウトされるなんて思ってなかったんだよ」
「でも、里にいた方が……」
「確かに里にいた方が色々と楽だったかも知れないんだけどさ、このチャンスは逃しちゃいけないっていう気持ちの方が強かったんだ」
「……チャンス?」
涙を拭いた彼女を見つめながら、これまで胸に秘めていた思いを口にする。
「そう……好きな相手と近づける、そんなチャンスは逃せないじゃん」
口に出すと耳まで熱くなるのを感じた。すごいキザったらしい台詞で内心言ってて恥ずかしくなっている。
「……嘘じゃないわよね」
「うん」
「……ちゃんと言ってくれないとわからないわよ」
「ちゃんとって……」
完全に聞き返す前に理解する。
目の前にいる人は長命の魔法使いだけど、それ以前に女の子なのだ。
彼女の前に行き、目線を合わせて改めて思いを伝える。
「パチュリーさん、好きです。付き合っていただけませんか?」
「……ええ、喜んで!」
嬉しさのあまり、その勢いで彼女をぎゅっと抱き締めてしまった。
「ちょっと、痛いわよ……」
「あ、ごめん……嬉しくって、つい」
慌てて手を離す……が彼女の方からこちらに抱き付いていた。
「離してとは言ってないでしょ?もう少し優しくして頂戴」
言われるがまま、抱えるようにパチュリーさんを包容する。
「こ、こうかな?」
「ありがと、ナナシさん。私も大好きよ。これまでも、これからも……」
そう告げる彼女の声色はとても優しいものだった。
END
→あとがき
.
初めましての方は初めまして。
お久しぶりの方は……え、約10年ぶり?そんなまさか……
お久しぶりです。くりゅです。
一時期エタってた期間ありますが、なんだかんだで13年目に突入したみたいです。
自分でも驚き……。
長編に移行したから書いてはいるけど、短編夢は10年ぶりの新作ですよ。
そして始めてのパチュリー夢ですよ!
プロットなし、原動力は『書きたい!』って気持ちのみで出力しきりました。
このジャンルにハマってから13年、そんでもって嫁は変わらずパチュリー……
今では推しって概念の方が強いから、推し変せずに13年間パチュリー最推しを続けてるのね……。
長編夢でヒロインに据えてるから既に何本か書いてあるという存在しない記憶があったのは秘密っす。
そのうち短編夢を一つ書きたいなと、菫子甘夢とか書きたいなと思っております。
長編は亀でも進めておりますゆえ、お待ちを……
次回の短編更新は何年後か……。
それではー
追記(5/21)
確認したら一度、運営初期の頃に一件パチュリー夢リクエストいただいておりました…大変申し訳ない……