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【海水浴】
どこぞのサナドゥ様ではないが、四季が過ぎ、世間は移り変わり行く。それは人の世であろうが、人外の世であろうが変わりない。
そして、今は初夏。暑すぎない程度の日差しがジリジリと肌を焼く、そんな季節だ。
「ナナシー、早く行きましょうよー」
外にでるのも億劫になる日差しの下をダラダラと歩く。俺の先を歩く日傘をさした女性は待ちきれないと言わんばかりに俺のことを呼ぶが、それには力のない笑顔で返すだけだった。
さて、そんな暑い太陽の下で俺は何をしているのかというと、逢い引きをしていたりする。現代風に言えばデートというやつだ。
「そんな急がなくても海は逃げたりしないぞ?」
「そうだけど、久しぶりのデートなんだからはしゃいだっていいじゃない」
まったくもってその通りだ。なんせ冬は冬眠、春に起きるかと思いきや「春眠暁を覚えず」と呟くと再び布団に潜り込む始末。立夏手前にようやく起きてきた感じなのだ。
「だからっていきなり、外の海に行くわよ。って言われるとは思わなかったよ」
幻想郷に海はない。湖や河はあるが海と言われるものがないのだ。
「思い立ったが吉日と言うじゃない」
「まぁそうだけど」
結界の管理をしているこの女性、八雲紫がこうして結界の外に出て来ているので、現在、その管理は紫の式である藍が取り仕切っているんだろう。
……お土産に油揚げでも買って帰ろう。
浜辺につき、適度な場所を陣取る。今日は思いの外利用者も多く、人で溢れかえりそうとは言わないがそれなりの混み具合だろう。
「……にしても遅いな」
着替えに入ったのが大体10分前。いくら時間がかかると言ってももうそろそろ来る頃だろう。
何度目になるかわからないが、辺りを見回してみると、今回は見覚えのある日傘が視界の中に入った。
……その付近にいる男共と一緒に。
一歩一歩息を殺して近づく。こういったときは多少のサプライズが合った方がいいのだ。
男共の後ろに立って、さも今来たかのように紫に声をかける。
「紫、随分遅かったな」
「あっ、ナナシ」
紫に群がっていた奴らは、俺のことを見ると「チッ、男いんのかよ……」と一言吐き捨てて散り散りに捌けていく。
「全く、呼んでくれれば直ぐに行ったんだがな」
「あら?もしかして妬いちゃったかしら」
「妬いてはないさ。紫が俺以外の男に靡くとは微塵も思って無いからな」
「アリガト、それにしても随分な自信ね」
そりゃそうだとも。このくらいの自信がないと紫の相手は出来ないからな。
「とにかく、今日は遊びに来たんだから、しっかり遊ぼう。な?」
「そうね。それじゃあきちんとエスコートしてよね、ナナシ」
夕陽が海へと沈んでいく。あたりまえなのだが、幻想郷では見られない光景に息をのんでしまう。
あの後は二人で海に入ったり、浜辺で遊んだり、今度は俺が女性達に言い寄られて紫が妬いてしまったりと、随分と充実した一日になった。
「あとは荷物まとめて帰るだけか」
「ナナシ、これなんだ?」
疲れを感じさせない口調でそう言ってきた紫の手にあったのは───
「……花火か?」
「そっ。もう少し暗くなったらあっちの岩場の方でやりたいんだけど……ダメ?」
「ダメじゃないんだけど、危なくないか?」
「岩場のほうにちょっとだけ砂浜があるのよ。そこでならいいでしょ?」
半ば押し切られる感じで帰路につく前に花火をする事になった。
「綺麗ね……」
「だな……」
紫の言ったとおり、岩場の奥は少しだけ砂浜になっていた。
しかし、ここにたどり着くまでの足場は悪く、夜の暗さも相まって二三度つまづきかけてしまった。
一通りの花火をし、締めに線香花火をしているときだった。
「ナナシ、今日楽しかった?」
「……?どうしたんだ。急に」
「ほら、いくらデェトと言っても、なんか私が振り回しているだけな気がしてね……ナナシは楽しめてないんじゃないかなって」
「まぁ、昼間は振り回されてばっかな気がしたな」
「やっぱり……」
「でもま、それも含めて楽しかったさ。久しぶりに紫と二人っきりだったわけだし」
「ありがと、ナナシ」
紫がそう応えるのと、線香花火の球が砂の上に落ちたのは同時だった。
それだから、線香花火の微かな灯りで見えていた彼女の笑顔を一瞬でも見れたのは幸運だったのかもしれない。
「終わっちゃったわね」
「だな」
「……帰りましょうか」
「……あぁ」
まとめていた荷物を担ぎ、紫が開けたスキマに入る。
その直前、波打ち際にこっそりと書いたメッセージを知っているのは、俺と…それを消した海だけだろう。
end
あとがき→
紫夢でした。
糾さん、完成遅くなってすみませんです。
時期が夏なんで、外での海水浴ってかんじです。
誤字脱字、その他何かありましたらご一報下さい。
それでは~
どこぞのサナドゥ様ではないが、四季が過ぎ、世間は移り変わり行く。それは人の世であろうが、人外の世であろうが変わりない。
そして、今は初夏。暑すぎない程度の日差しがジリジリと肌を焼く、そんな季節だ。
「ナナシー、早く行きましょうよー」
外にでるのも億劫になる日差しの下をダラダラと歩く。俺の先を歩く日傘をさした女性は待ちきれないと言わんばかりに俺のことを呼ぶが、それには力のない笑顔で返すだけだった。
さて、そんな暑い太陽の下で俺は何をしているのかというと、逢い引きをしていたりする。現代風に言えばデートというやつだ。
「そんな急がなくても海は逃げたりしないぞ?」
「そうだけど、久しぶりのデートなんだからはしゃいだっていいじゃない」
まったくもってその通りだ。なんせ冬は冬眠、春に起きるかと思いきや「春眠暁を覚えず」と呟くと再び布団に潜り込む始末。立夏手前にようやく起きてきた感じなのだ。
「だからっていきなり、外の海に行くわよ。って言われるとは思わなかったよ」
幻想郷に海はない。湖や河はあるが海と言われるものがないのだ。
「思い立ったが吉日と言うじゃない」
「まぁそうだけど」
結界の管理をしているこの女性、八雲紫がこうして結界の外に出て来ているので、現在、その管理は紫の式である藍が取り仕切っているんだろう。
……お土産に油揚げでも買って帰ろう。
浜辺につき、適度な場所を陣取る。今日は思いの外利用者も多く、人で溢れかえりそうとは言わないがそれなりの混み具合だろう。
「……にしても遅いな」
着替えに入ったのが大体10分前。いくら時間がかかると言ってももうそろそろ来る頃だろう。
何度目になるかわからないが、辺りを見回してみると、今回は見覚えのある日傘が視界の中に入った。
……その付近にいる男共と一緒に。
一歩一歩息を殺して近づく。こういったときは多少のサプライズが合った方がいいのだ。
男共の後ろに立って、さも今来たかのように紫に声をかける。
「紫、随分遅かったな」
「あっ、ナナシ」
紫に群がっていた奴らは、俺のことを見ると「チッ、男いんのかよ……」と一言吐き捨てて散り散りに捌けていく。
「全く、呼んでくれれば直ぐに行ったんだがな」
「あら?もしかして妬いちゃったかしら」
「妬いてはないさ。紫が俺以外の男に靡くとは微塵も思って無いからな」
「アリガト、それにしても随分な自信ね」
そりゃそうだとも。このくらいの自信がないと紫の相手は出来ないからな。
「とにかく、今日は遊びに来たんだから、しっかり遊ぼう。な?」
「そうね。それじゃあきちんとエスコートしてよね、ナナシ」
夕陽が海へと沈んでいく。あたりまえなのだが、幻想郷では見られない光景に息をのんでしまう。
あの後は二人で海に入ったり、浜辺で遊んだり、今度は俺が女性達に言い寄られて紫が妬いてしまったりと、随分と充実した一日になった。
「あとは荷物まとめて帰るだけか」
「ナナシ、これなんだ?」
疲れを感じさせない口調でそう言ってきた紫の手にあったのは───
「……花火か?」
「そっ。もう少し暗くなったらあっちの岩場の方でやりたいんだけど……ダメ?」
「ダメじゃないんだけど、危なくないか?」
「岩場のほうにちょっとだけ砂浜があるのよ。そこでならいいでしょ?」
半ば押し切られる感じで帰路につく前に花火をする事になった。
「綺麗ね……」
「だな……」
紫の言ったとおり、岩場の奥は少しだけ砂浜になっていた。
しかし、ここにたどり着くまでの足場は悪く、夜の暗さも相まって二三度つまづきかけてしまった。
一通りの花火をし、締めに線香花火をしているときだった。
「ナナシ、今日楽しかった?」
「……?どうしたんだ。急に」
「ほら、いくらデェトと言っても、なんか私が振り回しているだけな気がしてね……ナナシは楽しめてないんじゃないかなって」
「まぁ、昼間は振り回されてばっかな気がしたな」
「やっぱり……」
「でもま、それも含めて楽しかったさ。久しぶりに紫と二人っきりだったわけだし」
「ありがと、ナナシ」
紫がそう応えるのと、線香花火の球が砂の上に落ちたのは同時だった。
それだから、線香花火の微かな灯りで見えていた彼女の笑顔を一瞬でも見れたのは幸運だったのかもしれない。
「終わっちゃったわね」
「だな」
「……帰りましょうか」
「……あぁ」
まとめていた荷物を担ぎ、紫が開けたスキマに入る。
その直前、波打ち際にこっそりと書いたメッセージを知っているのは、俺と…それを消した海だけだろう。
end
あとがき→
紫夢でした。
糾さん、完成遅くなってすみませんです。
時期が夏なんで、外での海水浴ってかんじです。
誤字脱字、その他何かありましたらご一報下さい。
それでは~