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【相合い傘】
「あー……畜生、やはり降ってきたか」
家を出た時から降るんじゃないかと思ったが、それでも傘は持たずに噂の夜雀が営業している屋台へと歩いていた。そんな最中でこの雨だ。そこまで濡れはしないものの、このままではたどり着く頃にはずぶ濡れだろう。
「ん?……あれは」
出来るだけ濡れないように木陰を少し駆け足で走っていると、途中に紫色の傘が落ちていた。
「忘れ傘だよな……。持ち主には悪いが使わせてもらおう」
雨に濡れている傘を拾い、それをさしながらいくらか進んだ所で突然背後から声がした。
「うらめしや~」
と
.
「はいはい表は蕎麦屋……って、えぇ!?」
「やった!やっと人間が驚いてくれた」
なぜ驚いたかって?
後ろで跳びはねている少女が急に現れたんだ。
本当に突然、足音も何もせずに後ろから。
「えっと……君は?」
雨にも関わらず、傘もささないで跳ね回っている少女はこちらに跳ねてきた。
「あたしは多々良小傘。貴方が拾った傘の付喪神だよ」
「……まさか、俺を喰う気か?」
付喪神は永く使われた道具や物に精神が宿った妖怪と聞いたことがある。妖怪と人間、つまり喰う者と喰われる者。
ああ、俺の人生もここまでか。短かったな……。
「そんな、食べるだなんて。あたしは人間を驚かすのが生き甲斐で、食べようなんてこれっぽっちも思ってないよ」
「……本当に?」
「うん。だからその傘を返して貰える?それがないと人間を驚かせられないからね」
この子の言っている事が嘘でも本当でも返す答えは一つだった。
「ごめん、それ無理だわ」
「えぇ!?」
.
「な、何で?食べないって言ったよ、あたし」
「そうすると俺が食べれないんだよ」
「あ……あたしや傘は食べても美味しくないよ?」
「そういう意味じゃなくて、今から屋台に行くからその間だけでも借りていいか?この雨の中を傘をささずに歩いてたら確実に風邪をひくだろうし」
付喪神の小傘はそれを聞くと少し安心したようだ。
「よかったぁ。えと、その屋台って……夜雀がやってる屋台?」
「知ってるのか?」
「うん。でも、前に通り過ぎただけなんだけどね」
.
「いらっしゃい……ってナナシが一人じゃないなんて珍しいね」
「俺もびっくりだよ。あっ、雀酒ってまだある?」
「まだあるよー。そっちのあんたはどうする?」
「えと、あたしはお金持ってないんで……」
「それじゃあ、八目鰻と雀酒を二つずつ頼むわ」
「あいよ!よかったね、ナナシが奢ってくれるってさ」
女将の言葉を聞いて、小傘が驚いた様子でこちらを向いた。
「いいの?」
「まあ、商売道具を借りてここまで来たようなもんだしな。そのお礼だよ」
「ありがと、ナナシ」
.
「しかしこの雨じゃ、やっぱり客足も途絶えるよな」
「それを言わないでよ、ナナシ」
「悪い悪い。そんじゃまた来るよ」
「ご馳走様でした、女将さん」
「お粗末様でした。今度は晴れてる日に来なよ?」
「わかってるって。それじゃ行くぞ、小傘」
「えと、あたしも?」
「この雨の中濡れて帰れと言う気か」
結局、雨には降られたまんま。ちょっと風情のある晩飯になってしまった。
「それは……」
「とりあえず、家に来い。さっき雨に打たれてたからそのままだと風邪ひくし」
「う……うん」
来た時と同様に小傘の傘をさして夜の森を進む。
何故かはわからないが、妖怪のくせに人懐っこい付喪神とこのまま別れたくなかったんだ。
END
あとがき→
.
小傘甘夢でした。
甘い要素が一ミリも入ってない気がしますが……
会話文が多くてすみません。
そして、小傘の一人称がわちき派の方々ごめんなさい。
今回はあたしで統一しました。
はじめて小傘を書いたので、キャラを掴みきれてないのです。
ちなみに、星蓮船は未プレイ。
龍様、リクエストありがとうございました。
こんな感じでよろしかったでしょうか?
甘夢と頼まれたのに甘く無くてすみません……
くりゅ
「あー……畜生、やはり降ってきたか」
家を出た時から降るんじゃないかと思ったが、それでも傘は持たずに噂の夜雀が営業している屋台へと歩いていた。そんな最中でこの雨だ。そこまで濡れはしないものの、このままではたどり着く頃にはずぶ濡れだろう。
「ん?……あれは」
出来るだけ濡れないように木陰を少し駆け足で走っていると、途中に紫色の傘が落ちていた。
「忘れ傘だよな……。持ち主には悪いが使わせてもらおう」
雨に濡れている傘を拾い、それをさしながらいくらか進んだ所で突然背後から声がした。
「うらめしや~」
と
.
「はいはい表は蕎麦屋……って、えぇ!?」
「やった!やっと人間が驚いてくれた」
なぜ驚いたかって?
後ろで跳びはねている少女が急に現れたんだ。
本当に突然、足音も何もせずに後ろから。
「えっと……君は?」
雨にも関わらず、傘もささないで跳ね回っている少女はこちらに跳ねてきた。
「あたしは多々良小傘。貴方が拾った傘の付喪神だよ」
「……まさか、俺を喰う気か?」
付喪神は永く使われた道具や物に精神が宿った妖怪と聞いたことがある。妖怪と人間、つまり喰う者と喰われる者。
ああ、俺の人生もここまでか。短かったな……。
「そんな、食べるだなんて。あたしは人間を驚かすのが生き甲斐で、食べようなんてこれっぽっちも思ってないよ」
「……本当に?」
「うん。だからその傘を返して貰える?それがないと人間を驚かせられないからね」
この子の言っている事が嘘でも本当でも返す答えは一つだった。
「ごめん、それ無理だわ」
「えぇ!?」
.
「な、何で?食べないって言ったよ、あたし」
「そうすると俺が食べれないんだよ」
「あ……あたしや傘は食べても美味しくないよ?」
「そういう意味じゃなくて、今から屋台に行くからその間だけでも借りていいか?この雨の中を傘をささずに歩いてたら確実に風邪をひくだろうし」
付喪神の小傘はそれを聞くと少し安心したようだ。
「よかったぁ。えと、その屋台って……夜雀がやってる屋台?」
「知ってるのか?」
「うん。でも、前に通り過ぎただけなんだけどね」
.
「いらっしゃい……ってナナシが一人じゃないなんて珍しいね」
「俺もびっくりだよ。あっ、雀酒ってまだある?」
「まだあるよー。そっちのあんたはどうする?」
「えと、あたしはお金持ってないんで……」
「それじゃあ、八目鰻と雀酒を二つずつ頼むわ」
「あいよ!よかったね、ナナシが奢ってくれるってさ」
女将の言葉を聞いて、小傘が驚いた様子でこちらを向いた。
「いいの?」
「まあ、商売道具を借りてここまで来たようなもんだしな。そのお礼だよ」
「ありがと、ナナシ」
.
「しかしこの雨じゃ、やっぱり客足も途絶えるよな」
「それを言わないでよ、ナナシ」
「悪い悪い。そんじゃまた来るよ」
「ご馳走様でした、女将さん」
「お粗末様でした。今度は晴れてる日に来なよ?」
「わかってるって。それじゃ行くぞ、小傘」
「えと、あたしも?」
「この雨の中濡れて帰れと言う気か」
結局、雨には降られたまんま。ちょっと風情のある晩飯になってしまった。
「それは……」
「とりあえず、家に来い。さっき雨に打たれてたからそのままだと風邪ひくし」
「う……うん」
来た時と同様に小傘の傘をさして夜の森を進む。
何故かはわからないが、妖怪のくせに人懐っこい付喪神とこのまま別れたくなかったんだ。
END
あとがき→
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小傘甘夢でした。
甘い要素が一ミリも入ってない気がしますが……
会話文が多くてすみません。
そして、小傘の一人称がわちき派の方々ごめんなさい。
今回はあたしで統一しました。
はじめて小傘を書いたので、キャラを掴みきれてないのです。
ちなみに、星蓮船は未プレイ。
龍様、リクエストありがとうございました。
こんな感じでよろしかったでしょうか?
甘夢と頼まれたのに甘く無くてすみません……
くりゅ