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【恋文】
天狗が娯楽好きというなら、僕もそうなんだろう。
今僕は、滝の裏で河童のにとりと『オセロ』という陣取りゲームをしていた。
周りの天狗達は好まないらしいが、僕は好きな方だ。
これは将棋みたいにいちいち駒の役割を考える必要がない。
だけど…
「……参りました」
「ナナシ…また勝負に急いだでしょ?」
「な、なんで分かるの?」
「ナナシのことだし。別に陣取りだから、一気に奪おうとするのは良いんだよ? けど、よく戦局を見極めないと」
オセロ盤を見ると、これはどうしようもないと思う。僕は黒、にとりは白で始めたんだけど……
今は白に塗り潰された中にポツンと、一枚の黒い駒が置かれているだけだった。
「よく言うでしょ? 『将を射んと欲すればまず馬を射よ』って」
「将を射んと欲すれば将を射ればいいじゃん」
「それじゃあダメなんだよ」
うう…ここまで弱いと泣けてくる。
「そういえば、椛は?」
「たしか椛は、少し遅れて来るって……いま来たね」
滝の裏だけど、誰かの足音は聴こえるみたいだ。
「どうも、射命丸文です。ナナシ、やっと見つけましたよ!」
「あっ文さん!? どうしてここに?」
「どうしてって、今日は一緒に取材する約束だったじゃないですか!」
「あ…」
「もしかして、忘れてたんです…か?」
目尻にうっすらと涙を浮かべ、文さんは僕を見詰めてくる。
「ご、ごめんね、文さん」
「構いませんよ。その分働いてもらうだけですから」
僕が謝ると、一瞬で表情を暗いものから明るい笑顔に変えてきた。
「にとり、と言うことだからナナシ借りてくわよ」
「椛はもうすぐ来るんでしょ? なら、持っていっていいよ。ナナシじゃ将棋もオセロも相手にならないし」
「それは言い過ぎだよ、にとり…」
「ほらほら、無駄口叩かないでさっさと行きますよ」
「ち、ちょっと待ってよ、文さーん」
僕は近くにたたんでおいたお気に入りの羽織を手に持って、滝の外に出た文さんを追いかけた。
―――――――――――――――――――
妖怪の山の中腹辺りにある開けた場所。
そこで僕は文さんに質問した。
「それで、今回は誰を取材するんですか?」
「貴方です」
………えっ? 聞き間違えかな…
「すみません、文さん。もう一度言ってもらえますか?」
「だから、貴方ですよ。ナナシ」
「なんで、僕なんですか?」
「気分ですよ。それに、ナナシを一度取材したかった、というのもありますね」
「はぁ……」
「じゃあまずは―――――」
質問の内容は名前や年齢、趣味など簡単なものが多かった。
質問を初めてからどれくらい経ったのか…、気が付くと、あれほど晴れていた空は分厚い雲に覆われていた。
「次で最後ですよ」
その直後だった。
ものすごい突風が吹き抜けて、文さんの持っていた手帳の中から一片の紙をさらっていった。
「なっ!? ちょっと待ちなさーい!!」
「文さん!? 手帳の一切れぐらいいいじゃ…」
「よくないんです!」
「追いかけるんですか? 雨降りそうですよ」
「降って来たら、近くに横穴がありましたから、そこにいてください!! ではっ!」
「文さん、ちょっ……もう見えない」
はぁ、とため息をついて文さんの飛んでいった方を眺めた。
少しして雨が降りだした。思ったより激しく降っている。
「文さん、大丈夫かな……」
横穴の奥で、集めておいた木の枝に火をつける。
木の爆ぜる音が空しく響く。
「た…ただいま戻りました」
入り口から疲れきっている文さんの声が聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
「このくらい平気ですよ…くしゅん」
「奥で火を焚いてありますから、そこで暖まって下さい。それと、これを」
「これって…ナナシの羽織じゃないですか? なぜ私に…」
「濡れた服のままだと風邪引きやすいので、その…/// 今着ている服を乾かしてる間着ててください…」
「わかりました…ナナシ」
「な、なんですか?」
「その、覗かないで下さいね…///」
「のっ覗きませんよ!!/// 奥から見えない場所にいますから、着替えたら声をかけて下さい」
「はーい」
文さんはそう言って奥に向かった。
僕はその場に座りこみ、雨の音をただ聴いていた。衣擦れの音が聞こえないように……
「えっと…ナナシ、もういいですよ」
文さんに呼ばれ、さっきまでいた横穴の奥に行く。
「どうですか…?」
「いや、どうと聞かれても…」
大きすぎたかな? 何となく文さんが浴衣を着ているように見える。
「はぁ……わかりました」
いや、わかりましたって…まだなにも言ってないよ?
「先に取材の続きをしましょう」
「えっ…は、はい」
「じゃあ、これで最後です。ナナシには好きな人いますか?」
「そんな、僕にいるわけないじゃないですか」
「だったら、私と付き合いませんか?」
「えっ……文さん、じょ、冗談ですよね?」
「冗談じゃありませんよ…。もう一度聞きますよ。ナナシ、私と付き合ってくれますか?」
「えーと、僕でよければ、よろしくお願いします」
その言葉を聞いた文さんは僕にもたれ掛かってきた。
「よかった…断られなくて」
「どうして?」
「苦しかったんですよ…怖かったんですよ…でも! 言わないと自分が壊れてしまいそうで……」
そう言って涙を流している文さんは、いつもの彼女じゃなく、何の力もない少女の様に見えた。
「文さまーー傘を持って来ました……よ」
「もみ…じ…? 」
「ごめんなさい!! 二人がそんな関係だったなんて……じ、邪魔するつもりはなかったんです!!」
「ちょっと待って椛! 邪魔じゃないから!」
「でも、私は二人の愛の巣を……///」
「椛!」
「な…なんですか? 文さま…」
文さんが錯乱している椛を一喝で制し、そして、弁解の言葉を――――
「私の服のなかにカメラがありますから、一枚写真を撮りなさい」
言わなかった。
「ちょっと、なに言ってるんですか!?」
「まあ、そんなに怒らないで下さいよ、ナナシ」
「いやっ、怒ってはないですよ」
「えっと…文さま…? 撮っていいのですか?」
「ええ、準備はできてます」
「二人とも笑ってくださーい」
「ほら、ピースピース」
「こ、こう?」
「撮りますよー。はい、チーズ」
「とりゃ!!」
「えっ?」
文さんはかけ声とともに、僕に抱きついてきて、そして、
カシャッ
「椛、ありがとうございました」
「どういたしまして、文さま。ところで、今の写真はどうするんですか?」
「これは…ナナシ以外の人には見せません」
「どうして?」
「二人の宝物にしたいですし、何より…
誰にもナナシといちゃついてる姿を見せたくありませんからね♪」
→あとがき
ということで文夢でした。
後半部分gdgdでサーセン
挿し絵には後々清書したのを上げるつもりです。
夢主設定
鴉天狗。将棋などのゲームは好きだが、下手。自分から誘っても負ける。
時々射命丸と共に取材しまわることがある。
天狗が娯楽好きというなら、僕もそうなんだろう。
今僕は、滝の裏で河童のにとりと『オセロ』という陣取りゲームをしていた。
周りの天狗達は好まないらしいが、僕は好きな方だ。
これは将棋みたいにいちいち駒の役割を考える必要がない。
だけど…
「……参りました」
「ナナシ…また勝負に急いだでしょ?」
「な、なんで分かるの?」
「ナナシのことだし。別に陣取りだから、一気に奪おうとするのは良いんだよ? けど、よく戦局を見極めないと」
オセロ盤を見ると、これはどうしようもないと思う。僕は黒、にとりは白で始めたんだけど……
今は白に塗り潰された中にポツンと、一枚の黒い駒が置かれているだけだった。
「よく言うでしょ? 『将を射んと欲すればまず馬を射よ』って」
「将を射んと欲すれば将を射ればいいじゃん」
「それじゃあダメなんだよ」
うう…ここまで弱いと泣けてくる。
「そういえば、椛は?」
「たしか椛は、少し遅れて来るって……いま来たね」
滝の裏だけど、誰かの足音は聴こえるみたいだ。
「どうも、射命丸文です。ナナシ、やっと見つけましたよ!」
「あっ文さん!? どうしてここに?」
「どうしてって、今日は一緒に取材する約束だったじゃないですか!」
「あ…」
「もしかして、忘れてたんです…か?」
目尻にうっすらと涙を浮かべ、文さんは僕を見詰めてくる。
「ご、ごめんね、文さん」
「構いませんよ。その分働いてもらうだけですから」
僕が謝ると、一瞬で表情を暗いものから明るい笑顔に変えてきた。
「にとり、と言うことだからナナシ借りてくわよ」
「椛はもうすぐ来るんでしょ? なら、持っていっていいよ。ナナシじゃ将棋もオセロも相手にならないし」
「それは言い過ぎだよ、にとり…」
「ほらほら、無駄口叩かないでさっさと行きますよ」
「ち、ちょっと待ってよ、文さーん」
僕は近くにたたんでおいたお気に入りの羽織を手に持って、滝の外に出た文さんを追いかけた。
―――――――――――――――――――
妖怪の山の中腹辺りにある開けた場所。
そこで僕は文さんに質問した。
「それで、今回は誰を取材するんですか?」
「貴方です」
………えっ? 聞き間違えかな…
「すみません、文さん。もう一度言ってもらえますか?」
「だから、貴方ですよ。ナナシ」
「なんで、僕なんですか?」
「気分ですよ。それに、ナナシを一度取材したかった、というのもありますね」
「はぁ……」
「じゃあまずは―――――」
質問の内容は名前や年齢、趣味など簡単なものが多かった。
質問を初めてからどれくらい経ったのか…、気が付くと、あれほど晴れていた空は分厚い雲に覆われていた。
「次で最後ですよ」
その直後だった。
ものすごい突風が吹き抜けて、文さんの持っていた手帳の中から一片の紙をさらっていった。
「なっ!? ちょっと待ちなさーい!!」
「文さん!? 手帳の一切れぐらいいいじゃ…」
「よくないんです!」
「追いかけるんですか? 雨降りそうですよ」
「降って来たら、近くに横穴がありましたから、そこにいてください!! ではっ!」
「文さん、ちょっ……もう見えない」
はぁ、とため息をついて文さんの飛んでいった方を眺めた。
少しして雨が降りだした。思ったより激しく降っている。
「文さん、大丈夫かな……」
横穴の奥で、集めておいた木の枝に火をつける。
木の爆ぜる音が空しく響く。
「た…ただいま戻りました」
入り口から疲れきっている文さんの声が聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
「このくらい平気ですよ…くしゅん」
「奥で火を焚いてありますから、そこで暖まって下さい。それと、これを」
「これって…ナナシの羽織じゃないですか? なぜ私に…」
「濡れた服のままだと風邪引きやすいので、その…/// 今着ている服を乾かしてる間着ててください…」
「わかりました…ナナシ」
「な、なんですか?」
「その、覗かないで下さいね…///」
「のっ覗きませんよ!!/// 奥から見えない場所にいますから、着替えたら声をかけて下さい」
「はーい」
文さんはそう言って奥に向かった。
僕はその場に座りこみ、雨の音をただ聴いていた。衣擦れの音が聞こえないように……
「えっと…ナナシ、もういいですよ」
文さんに呼ばれ、さっきまでいた横穴の奥に行く。
「どうですか…?」
「いや、どうと聞かれても…」
大きすぎたかな? 何となく文さんが浴衣を着ているように見える。
「はぁ……わかりました」
いや、わかりましたって…まだなにも言ってないよ?
「先に取材の続きをしましょう」
「えっ…は、はい」
「じゃあ、これで最後です。ナナシには好きな人いますか?」
「そんな、僕にいるわけないじゃないですか」
「だったら、私と付き合いませんか?」
「えっ……文さん、じょ、冗談ですよね?」
「冗談じゃありませんよ…。もう一度聞きますよ。ナナシ、私と付き合ってくれますか?」
「えーと、僕でよければ、よろしくお願いします」
その言葉を聞いた文さんは僕にもたれ掛かってきた。
「よかった…断られなくて」
「どうして?」
「苦しかったんですよ…怖かったんですよ…でも! 言わないと自分が壊れてしまいそうで……」
そう言って涙を流している文さんは、いつもの彼女じゃなく、何の力もない少女の様に見えた。
「文さまーー傘を持って来ました……よ」
「もみ…じ…? 」
「ごめんなさい!! 二人がそんな関係だったなんて……じ、邪魔するつもりはなかったんです!!」
「ちょっと待って椛! 邪魔じゃないから!」
「でも、私は二人の愛の巣を……///」
「椛!」
「な…なんですか? 文さま…」
文さんが錯乱している椛を一喝で制し、そして、弁解の言葉を――――
「私の服のなかにカメラがありますから、一枚写真を撮りなさい」
言わなかった。
「ちょっと、なに言ってるんですか!?」
「まあ、そんなに怒らないで下さいよ、ナナシ」
「いやっ、怒ってはないですよ」
「えっと…文さま…? 撮っていいのですか?」
「ええ、準備はできてます」
「二人とも笑ってくださーい」
「ほら、ピースピース」
「こ、こう?」
「撮りますよー。はい、チーズ」
「とりゃ!!」
「えっ?」
文さんはかけ声とともに、僕に抱きついてきて、そして、
カシャッ
「椛、ありがとうございました」
「どういたしまして、文さま。ところで、今の写真はどうするんですか?」
「これは…ナナシ以外の人には見せません」
「どうして?」
「二人の宝物にしたいですし、何より…
誰にもナナシといちゃついてる姿を見せたくありませんからね♪」
→あとがき
ということで文夢でした。
後半部分gdgdでサーセン
挿し絵には後々清書したのを上げるつもりです。
夢主設定
鴉天狗。将棋などのゲームは好きだが、下手。自分から誘っても負ける。
時々射命丸と共に取材しまわることがある。