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【河童のにとりと冬休み】
東京近郊の田舎。そこに僕の家はあった。
これから話すのは、小さな頃の夢の様な話……
夏のある日、僕は川の土手を歩いていた。
その時、ふと川端に近づいたのは、ある人の言葉を借りて言うならば『運命』だろう。
背の高い林の中から女の子の声が聞こえてきた。
「あちゃー、こりゃ今年のきゅうりは不作かな?」
「だれかいるの?」
好奇心から尋ねたんだと思う。
だけどその女の子は、驚いた様にこっちを見て、すぐに林の中に歩いて行ってしまった。
「ちょっとまってよ!!」
少し走って女の子の手を掴むと、また驚いた顔をしてこう聞いてきた。
「もしかして、私の事見えてる?」
「みえるよ」
その時にちんぷんかんぷんな事を呟いていたのを覚えている。
そして、女の子が急に涙ぐんだのだ。
「えっ、どうしたの?」
「うちに、帰れなくなった…」
どうしよう…と不安がっているその子に僕はこう提案した。
「じゃあ、ぼくのうちにきなよ」
「えっ、でも」
ちょっと戸惑っているその子の手を引いて、「だいじょうぶ! トモダチだもん!」と言って僕の家に連れていった。
家に帰って、母さんにすぐ
「あら? ナナシのガールフレンド?」
と茶化されたのを覚えている。
全力で否定した僕はその子としゃべったり、一緒に遊んだ。
両親は家に帰れない事を聞くと、「何日でも泊まっていいからね」と暖かく迎えてくれた。
それから三日程経った。
あの河原に、また散歩しに行った。少し違うのは、隣に女の子がいること。
日も西に傾きはじめた頃、彼女は口を開いた。
「あのね、ナナシ。私帰れることになったの」
「そうなんだ。よかったね」
「今までありがとう」
「こんどはいつあえるの?」
今思うと、彼女にとってこの言葉はとても酷に聞こえただろう。
「たぶん、もう会えないよ。私、河童だから…」
「かっぱ?」
その時、妖怪だの、お化けだの不思議なものは何一つ怖くなかったし、意味がわからなったからつい、彼女の名前が『かっぱ』だと思った。
「うん。だから、もしもまた会えたら…」
「あえたら?」
「ナナシのお嫁さんになってあげる」
そう言って、彼女は僕に軽くキスをすると、林の中へ走って行った。
追い掛けたけど、もう見えなかった。
これが、僕の体験した夢のような時間だった。
東京の高校に入ったのをきっかけに……いやそうでもないな。
僕の両親は不慮の事故で他界した。それは高校に入って、もうすぐ冬休みになる時だった。
それからは一人暮らし。一年経った今じゃ、大半のことは出来るようになった。
……勉強を除いて。
物置を整理していると懐かしい物を見つけた。それは写真と一本のスパナ。
僕と一緒に写っている少女は、誰か思い出せないが、このスパナはその娘の物だとわかった。
写真の日付を見てみると、今から十一年前のものだった。
じゃあ、あれはそんな前の事だったんだ…
懐かしさ、それと写真の娘に会えるかもしれない。そう頭の片隅で考えた僕は、コートとマフラーを付けて、その娘に会いにあの背の高い林へ向かった。
久しぶりに来たにも関わらず、あの林は残っていた。
「あんな高く見えたのに、いまじゃ腰辺りの高さだ」
よっぽど小さかったんだな、と小さく笑った。
その時、あの頃のように林の中で声がした。
「冬にきゅうりは無いよね…はうすさいばい? じゃこっそりいただけないし…」
声がするのだけど姿は見えない。一応、その言葉にツッコミ、というか注意をした
「それは泥棒じゃない?」
「へっ?」
だいたい僕の目の前にいるのだろうか? 声の主は少し間を置いて、「ナナシ?」と僕の名前を呼んだのだ。
「なんで僕の名前を?」
「見えて無いの?」
「全く見えないよ」
僕のその言葉に応じたのか、女の子が姿を現す。
「えへへ、今度は光学迷彩スーツ壊れてなかったよ」
現れた少女は写真の娘と瓜二つだった。
「えっ? もしかして…かっぱ?」
「確かに河童だけど、私はにとりって名前が…そういえば、前は名前教えてなかったね。また会えてよかった…」
「でも、もう会えないって…」
「うん、だからこれは偶然。今日はここのきゅうりを貰いに来たのさ」
「じゃあ、一緒に行こうよ。にとり」
近くの農家の人にきゅうりを五本ほど貰い、また河原に来た。
「ありがとう。一緒にきゅうり貰いに来てくれて」
「気にしないで、僕もまた会えて嬉しかったから」
「その…ナナシは昔の約束、覚えてる?」
「約束? ああ、あれか。覚えてるよ」
「じゃあ、私はナナシのお…お嫁さんだね?」
顔を赤くして、確認するかのように、にとりは話す。
「そう、改まって言われるとなんだか照れるな」
「それで、もしも…もしもだよ? ナナシがこことは違う場所に行かなきゃならなくなったら、一緒に来てくれる?」
「……」
「やっぱり、無理だよね」
涙ぐんだにとりは振り返り、「さよなら、ナナシ…」と行って林に走り去るのを僕は、彼女の手を握って止めた。
「離して!! 離してよ、ナナシ!! はな――――」
そのまま、僕はにとりを抱き寄せてキスをした。
「一緒に行くよ、どんな所でも。だから、泣かないでにとり」
「ナナシが泣かせたんだよ…」
「ごめん…」
こうして僕は、にとりに連れられて、ここ幻想郷に来た。
来る際に使った道は、八雲さんが作ったスキマと言うものらしい。
これから僕が紅白巫女や白黒魔法使い、紅い吸血鬼などに会うのはまた別の話
あとがき→
どうも、くりゅですね。
にとり夢でした。
タイトルについては何も言うな。異論は認める。
今回は珍しいくらい幻想郷にいない。ていうよりほぼ現代。
夢主については、話の中で言い終わってる。
スパナ? えぇ、返しました。幻想郷に着いてから。
煉様
きゅうりきゅうり言ってごめんなさい!
きゅうり味のビールが頭から離れない私です。
感想等ありましたら、雑談板までお願いします。
東京近郊の田舎。そこに僕の家はあった。
これから話すのは、小さな頃の夢の様な話……
夏のある日、僕は川の土手を歩いていた。
その時、ふと川端に近づいたのは、ある人の言葉を借りて言うならば『運命』だろう。
背の高い林の中から女の子の声が聞こえてきた。
「あちゃー、こりゃ今年のきゅうりは不作かな?」
「だれかいるの?」
好奇心から尋ねたんだと思う。
だけどその女の子は、驚いた様にこっちを見て、すぐに林の中に歩いて行ってしまった。
「ちょっとまってよ!!」
少し走って女の子の手を掴むと、また驚いた顔をしてこう聞いてきた。
「もしかして、私の事見えてる?」
「みえるよ」
その時にちんぷんかんぷんな事を呟いていたのを覚えている。
そして、女の子が急に涙ぐんだのだ。
「えっ、どうしたの?」
「うちに、帰れなくなった…」
どうしよう…と不安がっているその子に僕はこう提案した。
「じゃあ、ぼくのうちにきなよ」
「えっ、でも」
ちょっと戸惑っているその子の手を引いて、「だいじょうぶ! トモダチだもん!」と言って僕の家に連れていった。
家に帰って、母さんにすぐ
「あら? ナナシのガールフレンド?」
と茶化されたのを覚えている。
全力で否定した僕はその子としゃべったり、一緒に遊んだ。
両親は家に帰れない事を聞くと、「何日でも泊まっていいからね」と暖かく迎えてくれた。
それから三日程経った。
あの河原に、また散歩しに行った。少し違うのは、隣に女の子がいること。
日も西に傾きはじめた頃、彼女は口を開いた。
「あのね、ナナシ。私帰れることになったの」
「そうなんだ。よかったね」
「今までありがとう」
「こんどはいつあえるの?」
今思うと、彼女にとってこの言葉はとても酷に聞こえただろう。
「たぶん、もう会えないよ。私、河童だから…」
「かっぱ?」
その時、妖怪だの、お化けだの不思議なものは何一つ怖くなかったし、意味がわからなったからつい、彼女の名前が『かっぱ』だと思った。
「うん。だから、もしもまた会えたら…」
「あえたら?」
「ナナシのお嫁さんになってあげる」
そう言って、彼女は僕に軽くキスをすると、林の中へ走って行った。
追い掛けたけど、もう見えなかった。
これが、僕の体験した夢のような時間だった。
東京の高校に入ったのをきっかけに……いやそうでもないな。
僕の両親は不慮の事故で他界した。それは高校に入って、もうすぐ冬休みになる時だった。
それからは一人暮らし。一年経った今じゃ、大半のことは出来るようになった。
……勉強を除いて。
物置を整理していると懐かしい物を見つけた。それは写真と一本のスパナ。
僕と一緒に写っている少女は、誰か思い出せないが、このスパナはその娘の物だとわかった。
写真の日付を見てみると、今から十一年前のものだった。
じゃあ、あれはそんな前の事だったんだ…
懐かしさ、それと写真の娘に会えるかもしれない。そう頭の片隅で考えた僕は、コートとマフラーを付けて、その娘に会いにあの背の高い林へ向かった。
久しぶりに来たにも関わらず、あの林は残っていた。
「あんな高く見えたのに、いまじゃ腰辺りの高さだ」
よっぽど小さかったんだな、と小さく笑った。
その時、あの頃のように林の中で声がした。
「冬にきゅうりは無いよね…はうすさいばい? じゃこっそりいただけないし…」
声がするのだけど姿は見えない。一応、その言葉にツッコミ、というか注意をした
「それは泥棒じゃない?」
「へっ?」
だいたい僕の目の前にいるのだろうか? 声の主は少し間を置いて、「ナナシ?」と僕の名前を呼んだのだ。
「なんで僕の名前を?」
「見えて無いの?」
「全く見えないよ」
僕のその言葉に応じたのか、女の子が姿を現す。
「えへへ、今度は光学迷彩スーツ壊れてなかったよ」
現れた少女は写真の娘と瓜二つだった。
「えっ? もしかして…かっぱ?」
「確かに河童だけど、私はにとりって名前が…そういえば、前は名前教えてなかったね。また会えてよかった…」
「でも、もう会えないって…」
「うん、だからこれは偶然。今日はここのきゅうりを貰いに来たのさ」
「じゃあ、一緒に行こうよ。にとり」
近くの農家の人にきゅうりを五本ほど貰い、また河原に来た。
「ありがとう。一緒にきゅうり貰いに来てくれて」
「気にしないで、僕もまた会えて嬉しかったから」
「その…ナナシは昔の約束、覚えてる?」
「約束? ああ、あれか。覚えてるよ」
「じゃあ、私はナナシのお…お嫁さんだね?」
顔を赤くして、確認するかのように、にとりは話す。
「そう、改まって言われるとなんだか照れるな」
「それで、もしも…もしもだよ? ナナシがこことは違う場所に行かなきゃならなくなったら、一緒に来てくれる?」
「……」
「やっぱり、無理だよね」
涙ぐんだにとりは振り返り、「さよなら、ナナシ…」と行って林に走り去るのを僕は、彼女の手を握って止めた。
「離して!! 離してよ、ナナシ!! はな――――」
そのまま、僕はにとりを抱き寄せてキスをした。
「一緒に行くよ、どんな所でも。だから、泣かないでにとり」
「ナナシが泣かせたんだよ…」
「ごめん…」
こうして僕は、にとりに連れられて、ここ幻想郷に来た。
来る際に使った道は、八雲さんが作ったスキマと言うものらしい。
これから僕が紅白巫女や白黒魔法使い、紅い吸血鬼などに会うのはまた別の話
あとがき→
どうも、くりゅですね。
にとり夢でした。
タイトルについては何も言うな。異論は認める。
今回は珍しいくらい幻想郷にいない。ていうよりほぼ現代。
夢主については、話の中で言い終わってる。
スパナ? えぇ、返しました。幻想郷に着いてから。
煉様
きゅうりきゅうり言ってごめんなさい!
きゅうり味のビールが頭から離れない私です。
感想等ありましたら、雑談板までお願いします。