最近部屋の様子が変わってきた。
前まではノーマル。今は‥とてもフェアリーだ。
なんでだ？なんでタイプが変わったんだ？
そうだ、あれだ。あれがキッカケだった。
先日ユイがニコニコしながらキュウコンのぬいぐるみを持ってきたんだ。

「それ、どうしたんだ？」
「出かけた先でクジをやっていたんです。ちょうど今日消えちゃうポイントがあったのでそれを使ってクジを引いたら1等のぬいぐるみが当たったんです！」
「へぇ。随分と気に入ってるな。」
「はい！触ってみてください！この毛並み。この凛々しい瞳。さすがクジの1等だけあって細部まで細かく作られていますよね！」
「お、手触り良いな。確かに本物に近いな。」
「はい！素晴らしいです！でも‥。」
「どうした？」
「‥他の子達もいないと寂しいですよね。キュウコン1匹だけじゃ‥。」
「他のぬいぐるみはないからなぁ。元々ユイも俺様もぬいぐるみを集めないからな。」
「‥。」
「‥？」

そう、この日からどんどん増えていったんだ。
ユイが言うには、ぬいぐるみブームが来ているらしくポケモンセンターで細部までこだわったポケモンのぬいぐるみを販売しているらしい。キュウコンに友達を作るんだと奮起している。
おかげでシンプルだった部屋の至る所にキュウコン、ユキメノコ、ニンフィアなど‥自分の手持ちのぬいぐるみを飾り、最近ではジュラルドン、フライゴン、バクガメスなど俺様のポケモン達も揃った。
‥ユイがこんなにぬいぐるみ好きだったのは初めて知った。今では寝る時にぬいぐるみを抱きしめて寝るくらいだ。
ぬいぐるみを抱きしめて寝るユイは可愛いからいいんだけど、俺様が目の前にいるのにぬいぐるみ‥。少し嫉妬しそうだ。


そんな嫉妬心を持ち始めて半月経った。
‥疲れた。最近は時期もあってジムの仕事が忙しい。全くユイの待つ部屋に帰れず、ほぼ仕事部屋に篭りっきりかリーグバトル。

‥ユイの待つ部屋に帰りたい。でもユイはぬいぐるみとポケモン達がいるから‥大丈夫なんだろうな‥。
今もきっとぬいぐるみを抱いて寝てるんだろうな。
悲しみで拗ねている俺様にショウタが声をかけてきた。

「キバナ様。最近ユイさんの所に帰ってませんよね？」
「まあな。この時期は忙しいからしょうがねぇな。」
「いつから帰ってないんですか？」
「もう半月くらいになるか？」
「‥キバナ様。飲み物は何飲んでいますか？」
「へ？なんとなく甘いものが欲しくなったからエネココア飲んでるけど‥。」
「今日は早めに切り上げて帰りましょう。ユイさんも心配してましたよ。」
「ユイが？」
「はい。ヒトミに連絡が来ているそうです。キバナ様は疲れてくると甘い物を欲しがる。性格的に仕事中は食事をしないだろうから、飲み物がエネココアあたりになったら注意してって。」
「‥。」
「僕たちが帰った後も仕事をしているんですよね？ちょうど仕事もキリもいいですし、帰ったらどうですか？」
「‥悪りぃ。今日は先に帰るわ。そろそろみんなも帰って大丈夫だからな。」
「はい。後は任せてください！」

後の事をショウタに任せてユイの待つ部屋に帰る。
時間は‥夜の10時少し過ぎか。
ユイの事だからもう寝てるかもな。

部屋の前まで着き、チラッと部屋の中を覗くと真っ暗だ。やっぱり寝ちまったか。
晩ご飯を食べて風呂に入り、ベットまで行くとぬいぐるみを抱きながら眠るユイ。近づいてみるとある事に気がついて、つい口角が上がってしまった。

マジかよ‥。

役目を終えたぬいぐるみを脇に退かして、空いたスペースに入りユイを抱きしめると無意識なのかユイも俺様の事を抱き返してきた。

あぁ、この温もり。‥幸せだ。





「‥バナさん。‥キバナさん！」
「ユイ‥。おはよ‥。」
「おはようございます。昨日の夜帰ってきたんですか？」
「ああ。」
「起こしてくれても良かったのに‥。」
「‥よく寝てたからな。どうだった俺様のぬいぐるみの抱き心地は？」
「ッ！‥見たんですね。隣にあったぬいぐるみがなくなって、キバナさんが寝てたからなんとなく分かっていましたが‥。」
「ユイちゃんはそんなに俺様が恋しかったのかな？」
「‥そういうキバナさんはどうだったんですか？」
「俺様？俺様はすげーユイが恋しかった！だから、今夜からはぬいぐるみじゃなくて本物の俺様と抱き合おうな！」
「‥はい。」
「さてと、ぬいぐるみと浮気をしていたユイにはお仕置きが必要だな！」
「浮気って‥ぬいぐるみですよ？！しかもキバナさんの！」
「知るか！この半月間ぬいぐるみに取られてたんだ。穴埋めはしっかりさせてもらうぜ？」






ぬいぐるみだろうと侮れない
（にしても俺様のぬいぐるみなんて出てたんだな‥。知らなかった。）
（はい。全ジムリーダーのぬいぐるみが出たんですが、各ジムリーダー限定1点だけだったので3日前から並びました。）
（は？！嘘だろ？！）
（ぬいぐるみだろうがキバナさんを盗られるのは良い気分ではないので。）