銀魂BL小説
春の陽光をはこぶやわらかな風が撫でるように頬にふれる。あたたかな光の粒を感じながら、銀時はそっと目を伏せた。
三月もそろそろ終わろうかという頃合いの日差しは、まるで薄くて白い膜を破ろうとしているみたいだ。冬特有のどこか霞がかったような曖昧さをはらんだ光から、きらきらした金色の光へと少しずつ変化している。伏せたままの視線の先では、少し前までよりもはっきりした輪郭を与えられた影が自分の歩みに合わせてうごめいていた。
昼下がりの往来を行く人たちは皆、訪れた春をめいっぱいに楽しんでいる。花見の予定についてはしゃいだ声で話す若い女の子たち、緋毛氈の縁台に腰掛けながら日差しに目を細めるじいさん、ひらひらと舞う紋白蝶を追いかけて競うように駆けていく子どもの群れ。何もかもを壊しつくさんとするような二度の大戦を乗り越えたばかりの江戸の人々にとって、ようやく訪れた再生の季節だ。あちこちつぎはぎだらけになった街を風がやわく吹き抜けていく。
ふと視界の端に入った甘味処の張り紙には「桜餅売ってます」の文字が躍っていた。たしか、つい数日前までは「おしるこあります」だったはずなのに。桜餅のさっぱりした優しい匂いが鼻先を掠めるのを感じつつ、銀時はぽりぽりと頭をかいた。
長い冬が明けて春が来て、そろそろ中綿の詰まった羽織がいらなくなるみたいに、照らす日差しが鮮明になるみたいに、時の移ろいにつられて変わっていくものがあるということ。ゆっくりと欠伸まじりに歩きながら、銀時は考える。
午前中に三人でこなした依頼は、店の大掃除と模様替えを手伝ってくれ、というものだった。依頼主は古い貸本屋の老婆で、新八が貰って来た依頼だった。銀時が江戸を空けていた二年の間に繋いだ伝手らしい。
作業は予想をはるかに超えて順調に進んだ。新八はさすがに神楽ほどではないものの筋力が増していて、重い木の本棚をひょいひょいと動かして老婆の指示通りに並べていく。神楽もかつてのようなぞんざいさはなりを潜めていて、扱いの難しい古書の山を丁寧な手つきで運んでいく。銀時がしたことと言えば、埃払いや雑巾がけなどのこまごまとした掃除くらいだ。ちらちらと埃が舞う小さな店の中で、てきぱきと働く二人の姿はなんだかやけに大きく見えた。
頼もしくなった子どもたちの背中を眺めながら感じるのは、ふわりと浮かぶ泡沫のような淡い喜びと、それからほんの少しのつめたさを引きずる風のような淋しさだ。
広くなった背中で、しなやかになった腕で、彼らはあの頃よりもうんと多くのものを抱えられるようになったはずだ。けれど、彼らは相変わらず銀時の隣で笑っていて、万事屋であることを選んでいる。ならば、自分もそれを大事にするだけだ。
分かっているのだ、そんなことは。あの日あのひとに万事屋であることを告げたときから──いや、ほんとうはもっと前から、そうでありたいと願っていたのだから。
だからこそ、どうしたって慎重になる。のろのろと歩く黒いブーツの中で、かかとの先のあたりがかすかに強張る。これからも彼らと同じ道を歩いていきたいと願っているからこそ、歩きだすために持ち上げた足をどこに踏み出せばいいのか分からなくなってしまう。そうして踏み出すことをためらっているうちにも、彼らは昔よりも大きくなった歩幅でずっとずっと前に進んで行ってしまっているような気になるのだ。それがただの気のせいであることはじゅうぶん分かっているけれど。
ふと、目の前をちいさな白色が横切る。いっしゅん雪かと思って顔を上げたが、当然そんなわけはなく、それは風に吹かれて飛んできた桜の花びらだった。
物思いに耽るうちに、いつのまにか街のはずれの公園のあたりまで歩いてきてしまっていたらしい。見上げれば、薄い雲がたなびく蒼穹のすそを淡く染め上げた桜色が、風に吹かれてさわさわと揺れている。
まだ五分咲き程度の桜の花は見頃と言うには早すぎるから、公園に花見客はひとりも見当たらない。満開になればどんちゃん騒ぎの喧騒で満ちるだろうけれど、今は風に揺られる花のささやかな音だけが静かに響いている。
だらりと下がった枝がゆらゆら手を振るたびに、ちいさな花びらが不規則な道をたどりながら宙を舞う。のどかな春の日差しが燦々とそそぐにつれて、あたためられた蕾がそっと綻ぶ。ひとつまたひとつと花びらが舞い落ちるごとに、花が開くごとに、刻一刻とそのすがたを変えていく桜の木。癖毛の白髪に桜色が絡まるのも気に留めず、銀時は足を止めたままじっと桜を見上げた。
と、そのとき、道の向こうを歩いてくる人影があった。
剥がれるようにこぼれる花びらから視線を移してその人を見やる。その人影は、よく見知った姿をしていた。
ひらひらと無数に舞う桜色にも染まらない、ただただ鮮明な黒い隊服。風になぶられてはためくそれと同じ色をした短い髪が、少し上を向いた頭のかたちにそってさらさらと流れている。かすかに尖った唇の先から吐き出された灰色の煙が、揺れる花びらに絡まりながら溶けていった。
金色の陽光がやわらかく降りそそぐ道を歩く土方は、相変わらずの様子だった。ゆらゆらと煙草をもてあそぶ唇も、ふてぶてしくポケットに突っ込まれた左手も、凛と伸ばされた背筋さえも。いや、桜を見上げる瞳だけは、記憶の中にあるものより幾分かやさしさを帯びているように見える。わずかに緩められた眦の先を、ちいさな花びらがひらりと通り過ぎる。
眩しさに目を細めつつその姿を眺めていると、男の深い藍色をした瞳がついと銀時を捉えた。すこし驚いたように瞠目した彼の、いつもは涼しげな目が丸くなるさまがなぜかとても鮮やかだった。
「よぉ、見廻り?」
ひらひらと片手を上げながら銀時は尋ねる。
永く幕府の中枢に巣食っていた天導衆が消えたこと、二度に及ぶ大きな反乱があったことで、天人と江戸の人々の関係は少しずつ変化している。その影響で最近では攘夷浪士たちの活動は下火になっているらしく、世間を騒がすような大きな捕り物やテロのニュースはほとんど聞かなくなった。とは言え、空には当たり前のように宇宙船が飛び交っているし、土方は腰に刀を帯びて真選組副長として江戸の治安維持に務めている。
霞んだ煙を吐き出してから、土方は顎を引くようにして頷いた。
「ああ。お前はなにしてんだ、散歩か?」
「まあ、そんなとこ」
「暇そうだなァ、平社員。ああ、社長だった頃もプラプラしてたか」
「うるせーよ」
ぎゅっと眉を寄せてみせると、土方は対照的に眉を開いてふふ、とちいさく微笑んだ。
「で、その社長と副社長はどうしたんだ、万事屋?」
深い色をした瞳が覗きこむように銀時を見やる。まるで詰問するような口調だけれど、その声はまるで雲を掴もうとするかのように静謐だった。桜を見ていたあの眼差しに似た、記憶の中にあるものより幾分かやわらかくなったその声音。そんな声に紡がれる、相変わらずの呼び方。
ちいさく開いた唇から、知らず言葉がこぼれていた。
「……俺は、万事屋かな」
言ってしまってから銀時ははっと我に返る。随分とおかしなことを訊いてしまった。銀時の胸のうちの逡巡なんて土方はなにも知らないのだから、きっと怪訝に思うだろう。ついに頭の中までパーになったか、なんて嫌味を言われるかもしれない。じっとこちらを見つめる男の視線に耐えられなくて、花びらが落ちる足元へと目を伏せる。あー……、と不明瞭なうめき声を漏らしつつなにか弁明する言葉を探して、銀時は髪が跳ね回る頭をぽりぽりとかいた。髪に絡まっていた花びらが指先にふれる。
土方がくすりと笑った。
「そりゃあ当然だろ。だってお前、もう苔どころか根っこまで生えちまってんだから」
さも愉快そうに土方が言う。銀時はまじまじと彼の顔を見た。
ああ、ぜんぶお見通しってわけか。やわく細められた彼の藍色の瞳から、銀時は悟る。相変わらずのものと変わっていくもののあわいで揺れる心境や、それでも手放したくないという祈りにも似た誓い。そういう、銀時の胸のうちに渦巻くものを見透かしたうえで、それでも彼はあまりに簡単に軽やかに「万事屋」であることを肯定したのだ。
激動の末の道を相変わらずの姿のまま歩く彼の黒い隊服がひらりと風になびく。同じ風が、銀時の流雲模様の着物の袖に絡まって揺らした。
「そうだな。うん、たしかにそうだわ」
銀時はふと口許を緩めた。
「なあ、また花見しようぜ。アイツらもお前らも一緒に、みんなで」
顔を上げ、振り返る。内ポケットから取り出した新しい煙草に火をつけていた土方も「ああ」と頬を緩めた。
「そうだな。みんなで飲める酒でも用意しとく」
ささいな約束を彩るように、こまかな桜色が空を舞ってふたりの間に降りそそぐ。銀時と土方は揃って春の青空を見上げた。
足を踏み出す場所は定まった。変化に取り巻かれながらもずっと変わらない黒い隊服を纏ったこの男の隣、そして自分がいちばん居たいと願う彼らと同じ道だ。それを忘れなければ、きっともう迷うことはないだろう。
穏やかな日差しがきらきらと煌めきながら頬をあたためる。ゆっくりと花びらが舞う、そして新しく花が開く桜のしたで、銀時はそっとちいさく口許を綻ばせた。
三月もそろそろ終わろうかという頃合いの日差しは、まるで薄くて白い膜を破ろうとしているみたいだ。冬特有のどこか霞がかったような曖昧さをはらんだ光から、きらきらした金色の光へと少しずつ変化している。伏せたままの視線の先では、少し前までよりもはっきりした輪郭を与えられた影が自分の歩みに合わせてうごめいていた。
昼下がりの往来を行く人たちは皆、訪れた春をめいっぱいに楽しんでいる。花見の予定についてはしゃいだ声で話す若い女の子たち、緋毛氈の縁台に腰掛けながら日差しに目を細めるじいさん、ひらひらと舞う紋白蝶を追いかけて競うように駆けていく子どもの群れ。何もかもを壊しつくさんとするような二度の大戦を乗り越えたばかりの江戸の人々にとって、ようやく訪れた再生の季節だ。あちこちつぎはぎだらけになった街を風がやわく吹き抜けていく。
ふと視界の端に入った甘味処の張り紙には「桜餅売ってます」の文字が躍っていた。たしか、つい数日前までは「おしるこあります」だったはずなのに。桜餅のさっぱりした優しい匂いが鼻先を掠めるのを感じつつ、銀時はぽりぽりと頭をかいた。
長い冬が明けて春が来て、そろそろ中綿の詰まった羽織がいらなくなるみたいに、照らす日差しが鮮明になるみたいに、時の移ろいにつられて変わっていくものがあるということ。ゆっくりと欠伸まじりに歩きながら、銀時は考える。
午前中に三人でこなした依頼は、店の大掃除と模様替えを手伝ってくれ、というものだった。依頼主は古い貸本屋の老婆で、新八が貰って来た依頼だった。銀時が江戸を空けていた二年の間に繋いだ伝手らしい。
作業は予想をはるかに超えて順調に進んだ。新八はさすがに神楽ほどではないものの筋力が増していて、重い木の本棚をひょいひょいと動かして老婆の指示通りに並べていく。神楽もかつてのようなぞんざいさはなりを潜めていて、扱いの難しい古書の山を丁寧な手つきで運んでいく。銀時がしたことと言えば、埃払いや雑巾がけなどのこまごまとした掃除くらいだ。ちらちらと埃が舞う小さな店の中で、てきぱきと働く二人の姿はなんだかやけに大きく見えた。
頼もしくなった子どもたちの背中を眺めながら感じるのは、ふわりと浮かぶ泡沫のような淡い喜びと、それからほんの少しのつめたさを引きずる風のような淋しさだ。
広くなった背中で、しなやかになった腕で、彼らはあの頃よりもうんと多くのものを抱えられるようになったはずだ。けれど、彼らは相変わらず銀時の隣で笑っていて、万事屋であることを選んでいる。ならば、自分もそれを大事にするだけだ。
分かっているのだ、そんなことは。あの日あのひとに万事屋であることを告げたときから──いや、ほんとうはもっと前から、そうでありたいと願っていたのだから。
だからこそ、どうしたって慎重になる。のろのろと歩く黒いブーツの中で、かかとの先のあたりがかすかに強張る。これからも彼らと同じ道を歩いていきたいと願っているからこそ、歩きだすために持ち上げた足をどこに踏み出せばいいのか分からなくなってしまう。そうして踏み出すことをためらっているうちにも、彼らは昔よりも大きくなった歩幅でずっとずっと前に進んで行ってしまっているような気になるのだ。それがただの気のせいであることはじゅうぶん分かっているけれど。
ふと、目の前をちいさな白色が横切る。いっしゅん雪かと思って顔を上げたが、当然そんなわけはなく、それは風に吹かれて飛んできた桜の花びらだった。
物思いに耽るうちに、いつのまにか街のはずれの公園のあたりまで歩いてきてしまっていたらしい。見上げれば、薄い雲がたなびく蒼穹のすそを淡く染め上げた桜色が、風に吹かれてさわさわと揺れている。
まだ五分咲き程度の桜の花は見頃と言うには早すぎるから、公園に花見客はひとりも見当たらない。満開になればどんちゃん騒ぎの喧騒で満ちるだろうけれど、今は風に揺られる花のささやかな音だけが静かに響いている。
だらりと下がった枝がゆらゆら手を振るたびに、ちいさな花びらが不規則な道をたどりながら宙を舞う。のどかな春の日差しが燦々とそそぐにつれて、あたためられた蕾がそっと綻ぶ。ひとつまたひとつと花びらが舞い落ちるごとに、花が開くごとに、刻一刻とそのすがたを変えていく桜の木。癖毛の白髪に桜色が絡まるのも気に留めず、銀時は足を止めたままじっと桜を見上げた。
と、そのとき、道の向こうを歩いてくる人影があった。
剥がれるようにこぼれる花びらから視線を移してその人を見やる。その人影は、よく見知った姿をしていた。
ひらひらと無数に舞う桜色にも染まらない、ただただ鮮明な黒い隊服。風になぶられてはためくそれと同じ色をした短い髪が、少し上を向いた頭のかたちにそってさらさらと流れている。かすかに尖った唇の先から吐き出された灰色の煙が、揺れる花びらに絡まりながら溶けていった。
金色の陽光がやわらかく降りそそぐ道を歩く土方は、相変わらずの様子だった。ゆらゆらと煙草をもてあそぶ唇も、ふてぶてしくポケットに突っ込まれた左手も、凛と伸ばされた背筋さえも。いや、桜を見上げる瞳だけは、記憶の中にあるものより幾分かやさしさを帯びているように見える。わずかに緩められた眦の先を、ちいさな花びらがひらりと通り過ぎる。
眩しさに目を細めつつその姿を眺めていると、男の深い藍色をした瞳がついと銀時を捉えた。すこし驚いたように瞠目した彼の、いつもは涼しげな目が丸くなるさまがなぜかとても鮮やかだった。
「よぉ、見廻り?」
ひらひらと片手を上げながら銀時は尋ねる。
永く幕府の中枢に巣食っていた天導衆が消えたこと、二度に及ぶ大きな反乱があったことで、天人と江戸の人々の関係は少しずつ変化している。その影響で最近では攘夷浪士たちの活動は下火になっているらしく、世間を騒がすような大きな捕り物やテロのニュースはほとんど聞かなくなった。とは言え、空には当たり前のように宇宙船が飛び交っているし、土方は腰に刀を帯びて真選組副長として江戸の治安維持に務めている。
霞んだ煙を吐き出してから、土方は顎を引くようにして頷いた。
「ああ。お前はなにしてんだ、散歩か?」
「まあ、そんなとこ」
「暇そうだなァ、平社員。ああ、社長だった頃もプラプラしてたか」
「うるせーよ」
ぎゅっと眉を寄せてみせると、土方は対照的に眉を開いてふふ、とちいさく微笑んだ。
「で、その社長と副社長はどうしたんだ、万事屋?」
深い色をした瞳が覗きこむように銀時を見やる。まるで詰問するような口調だけれど、その声はまるで雲を掴もうとするかのように静謐だった。桜を見ていたあの眼差しに似た、記憶の中にあるものより幾分かやわらかくなったその声音。そんな声に紡がれる、相変わらずの呼び方。
ちいさく開いた唇から、知らず言葉がこぼれていた。
「……俺は、万事屋かな」
言ってしまってから銀時ははっと我に返る。随分とおかしなことを訊いてしまった。銀時の胸のうちの逡巡なんて土方はなにも知らないのだから、きっと怪訝に思うだろう。ついに頭の中までパーになったか、なんて嫌味を言われるかもしれない。じっとこちらを見つめる男の視線に耐えられなくて、花びらが落ちる足元へと目を伏せる。あー……、と不明瞭なうめき声を漏らしつつなにか弁明する言葉を探して、銀時は髪が跳ね回る頭をぽりぽりとかいた。髪に絡まっていた花びらが指先にふれる。
土方がくすりと笑った。
「そりゃあ当然だろ。だってお前、もう苔どころか根っこまで生えちまってんだから」
さも愉快そうに土方が言う。銀時はまじまじと彼の顔を見た。
ああ、ぜんぶお見通しってわけか。やわく細められた彼の藍色の瞳から、銀時は悟る。相変わらずのものと変わっていくもののあわいで揺れる心境や、それでも手放したくないという祈りにも似た誓い。そういう、銀時の胸のうちに渦巻くものを見透かしたうえで、それでも彼はあまりに簡単に軽やかに「万事屋」であることを肯定したのだ。
激動の末の道を相変わらずの姿のまま歩く彼の黒い隊服がひらりと風になびく。同じ風が、銀時の流雲模様の着物の袖に絡まって揺らした。
「そうだな。うん、たしかにそうだわ」
銀時はふと口許を緩めた。
「なあ、また花見しようぜ。アイツらもお前らも一緒に、みんなで」
顔を上げ、振り返る。内ポケットから取り出した新しい煙草に火をつけていた土方も「ああ」と頬を緩めた。
「そうだな。みんなで飲める酒でも用意しとく」
ささいな約束を彩るように、こまかな桜色が空を舞ってふたりの間に降りそそぐ。銀時と土方は揃って春の青空を見上げた。
足を踏み出す場所は定まった。変化に取り巻かれながらもずっと変わらない黒い隊服を纏ったこの男の隣、そして自分がいちばん居たいと願う彼らと同じ道だ。それを忘れなければ、きっともう迷うことはないだろう。
穏やかな日差しがきらきらと煌めきながら頬をあたためる。ゆっくりと花びらが舞う、そして新しく花が開く桜のしたで、銀時はそっとちいさく口許を綻ばせた。