それでも前へ進む
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ナナシは教室の窓からボーッと宙を見ていた
あの時見た、この時代に呼び出された時のことを思い出していた
サーヴァントは夢をみない、マスターが見た夢を共有したり、生前のサーヴァントの記憶を夢見たり
つまり、あの映像はナナシのマスターが見た夢である
「マスターか...」
「ナナシ」
宙を見ながらマスターの事を考えていたら自分を呼ぶ声と同時に隣へニカは座ってきた
ナナシとニカの関係は共犯者とでも呼ぶべきか、お互いの情報を交換している
そしてナナシにとって重要なのは魔力供給、本来ならマスターから貰うべきなのだが、事情があり今はパスが繋がっておらずマスター不在の状況だ
ニカはそれが自然だと言わんばかりに机の下においてあるナナシの手を握る
魔力供給の話は昨日今日の話しだったのだけど
「ニカって、モテますよね?」
「えっ?どうしたの急に」
「いえ」
ナナシはニコッと笑い、こんな自然にやってのけて、顔色も全然変わらなくて涼しい顔して笑っているのだ、慣れている
「あれあれー?なんでアーシアンがスペーシアンの隣にすわってるんだよ」
「そこ、あたしらの席だからどいてくんなーい?」
メカニック科のスペーシアンの女子たちがニカを見ながらクスクス笑っている
どうにも、差別っていうのは根強く、アーシアンであるニカ達は肩身の狭いおもいをしている
「すいません、すぐにどきますね」
「ナナシはいいんだよ、さっさとどいてほしいのはそこのアーシアン」
「アーシアンのくせに調子に乗んなよ、あたしらに許可とってから座れよ」
クスクス笑いながらニカの胸ぐらを掴もうとしたので咄嗟に前へでようとした
さすがにそこまでされそうになっているのを黙って見ていられなかった
「そんじゃ、オレ今ここ座りたいんだけどいいですかおたくら」
そう言って返事を聞かずニカの隣に荷物をドサッとおいて座ってきたのはロビンフッド
アーシアンではあるが彼の持ち前の容姿からか、ロビンを狙っている女子は多数
「もー、ちょっとロビン、邪魔しないでよ」
「許可貰ったんだからいいじゃないですかっと」
「許可なんかあげてないし」
「そんなことよりロビン、今日あたしら暇なんだけど」
「おっとすいませんねぇ、もう今日5人口説いたばっかなんだよ」
「はぁ?節操無さすぎ」
「おたくらまとめて明日相手するんで、今日のところは引いてくんない?」
口々に文句を言いながらも2人は渋々退いていった
やはりモテる男は違うらしい、簡単にこの場をおさめてしまう
「助かりましたロビン」
「これくらい朝飯前だって、そんなことよりも、ニカ、今日オレとデートしない?」
褒めたと思ったらこれだ、息をするようにニカを口説き始めた
さっきの女子生徒たちも言った通りロビンは遊び人で有名でもある
だけどこれも情報収集の手段の1つ、容姿が良いものだから女子生徒たちは聞いたことをすぐ喋ってくれる
「さっきもう5人口説き終わったって言ってなかった?」
「そんなのあいつら追い返す口実に決まってるだろ?で、どう?」
「ごめんね?」
にこっとやんわり断る姿にも見慣れたもの、なぜならロビンはずっとニカを口説いているけどいまだにOKを貰ったことがないのだ
残念そうにまた振られたなどと言いながら全く残念そうな表情をせず笑うロビン、そんなやり取りをしているうちに授業が始まった
「おたく、なんか隠し事してない?」
授業が終わっての帰宅路でなんの脈路もなくロビンはナナシに問う
ナナシは変わらぬ表情のままなんのことですか?と歩きながら言う
ロビンはそれ以上深く追求することなくフッとわらい
「なにもねーんならいいってもんよ、ただ、わかってると思うけど」
「もちろん、わかってますよ」
「ならいいさ。まっ、旦那に勘づかれないように気をつけるんだな」
ロビンと別れたあと、森林エリアのベンチに座り棒付きの飴を舐めながら考えていた
隠してる訳では無い、ただ判断に迷っているだけ
わかってはいる、それがどんなに重要なことであるか
そして、自分の身のこともロビンや他のサーヴァントたちにもバレているだろう
それでも、まだ、言うわけには
「あんたここでなにやってんの」
「ミオリネ」
ナナシはニコッと笑いながら彼女をみるが、ミオリネは険しい表情を見せる
彼女はナナシの事をよく思っていない
よく思ってないと言うよりミオリネにとって御三家と同じ部類だと思っているらしく敵と認識しているらしい
これ以上彼女の機嫌をそこねるわけにはいかないと思い立とうとしたら、ベンチの端に座った
「なに?あんたも座ったら?」
まさか座るとも思ってなかったし、座れとも言われると思わなかったため一瞬動きを止めてしまったが、不機嫌そうに見てくるので大人しく座った
「...最近」
しばらくただ座ってるだけの時間がながれていたが、ミオリネはぽつりぽつり言葉を発した
「夢を見るのよ」
「夢ですか?」
「内容は覚えてないけど同じ夢、顔も覚えてないけど同じ人が出てくる夢。覚えてないのに同じだってわかる」
「なぜそれをボクに?」
「わかんないわよ!でもあんたに言わなきゃって、どうしてかわからない、なによこれ」
ナナシは驚きはしなかった、夢とは朧気で現実とはかけ離れている
だけど同じ夢を何度も見ているのはおかしい、それなのにナナシは驚きもしなかったむしろ
ハッとしてナナシはミオリネを突き飛ばす
飛ばされた彼女は盛大に地面に身体を転げた
「っつぅ、なにすんのよっ」
そうナナシを睨みつけようとした瞬間、ドスッとした音とともに何かが切り裂かれたような音が響いた
その音がしたと同時に何か生暖かいものが顔にあたる
触れて見ると、ミオリネの手に赤い液体がついていた
意味がわからなかった、この赤い液体はなんだ、何故か鉄が錆びたようなにおいがはなにつく
視線を前に向ければ、ナナシが何か鋭い刃物ようなもので貫かれている姿が視界に入った
「は?な、なんで...? ナナシっ」
荒く息をあげ、勢いよく身体を起こした彼女にかけられていたタオルケットは、ベッドの下に落ちてしまっていた
しばらく放心状態だったミオリネは、冷や汗で張り付いた前髪をかきあげた
「ゆ、め?」
妙にリアリティがある夢だったためまだ心臓が早く鳴り響いていた
ゆめ、夢ならよかった、とタオルケットを拾い、また目を閉じた
「なーちゃん、もうほんとびっくりしたんだから」
ナナシをなーちゃんと呼ぶのは刑部姫、経営戦略科の2年
本人は陽キャが嫌い引きこもり大好きのサーヴァント、本当なら学校にも行きたくないしひたすら引きこもっていたいのだが、マスターのために頑張っているらしい
「だってだって、駆けつけた時には血まみれでミオミオ抱き抱えてるんだもん」
「おたくも無茶しますねぇ」
「ナナシこの制服血まみれでもう着れないよ」
「新しいの"パパ"に用意してもらわないとですね」
そうニコッといえば、3人は肩を震わせ笑いを堪えている
「ぱ、パパっ...だめ、おかしくてお腹痛い」
「おいおいマスター、後で大目玉くらっちまうぜ?」
「ぶふっ...どこで聞いてるかわかんないよ」
実際このアスティカシア学園に入学する時、みんなの保護者として入れてもらえたのだからパパでも間違いでは無い
「ついに、動き出してきたね、皆!気を引き締めて行こうね!」