聖女の導き

教団の遺跡発掘作業は、教主ラミアムの指示に依るところが大きい。
教主の持つ不思議な能力が、次なる発掘ポイントを我々に知らしめてくれるのである。
教主曰く──
それは教主自身の能力ではなく、ある種の託宣であるという。
教主の夢に現れる少女の現像が、未だ埋もれたままの遺跡の存在を報せるというのだ。
にわかには信じられない話である。
理想よりも実践に重きを置く、教団の理念とは、まったく異なる活動内容といえよう。
それでも、現実として、教主の見た夢に基づいて、希少な遺産が掘り起こされているのである。
【奇蹟】──
そう呼ぶ事で説明が付くならば、あえて不確かな言葉に定義する意味もあろう。
教主の見た夢の少女、【聖女】は──
我々に何を授け、どこへ導こうとしているのか?
【奇蹟】は授けられるモノ、与えられるモノである。
だが、【奇蹟】は違う。
【奇蹟】とは、自らの手で起こしてこそ、その価値があるモノである。
そうであらねばならぬモノなのだ。
夢に見た聖女が、未来へと導くのなら、その地には、己の足で歩いてゆこう。
それが【運命の箱船】教団の教義である。
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