ニーズヘッグは貪欲な悪竜。
森の木立の向こうにて、餌食を求めて顎を開く。
ニーズヘッグは貪欲な悪竜。
夜よりも深き、その顎は、双つの首に、それぞれひとつ。
ニーズヘッグは貪欲な悪竜。
悪竜を討伐せんと、巨人がふたり、剣を掲げる。
巨人のひとりは、胸に青き良心をいただき、首を獲らんと、森へ分け入る。
巨人のひとりは、胸に赤き邪心をいただき、首を獲らんと、森へ分け入る。
だが、ふたりの巨人は知らなかった。
ニーズヘッグの首が、双つにわかれていた事を。
双つの首を知る事で、はじめて、本体に攻め込める事を。
ニーズヘッグは貪欲な悪竜。
今日も、森の木立の向こうにて、餌食を求めて顎を開く。
──そして…
ふたりの巨人の行方は、余人の知るところにあらず。