「まー。性格上無理だと思うよ？けどねえ、たまにはされてみたいっていうかー」
「名無しさん」

　マユリの手が私の髪を撫でた。私の名前を呼ぶ声は、そういう事をする前の声で、優しいんだけどどこか艶やかで、私はピタと話すのをやめた。
　マユリは私の耳元をかきあげるように髪を撫でて行く。優しい手付きで、少しだけいやらしい。

「少し、体をあげてくれるかネ」
「あっ、うん」

　耳元で優しく話されて、昼間のマユリとは正反対のマユリに慌ててまた体を起こした。
　マユリは立ち上がると、ニヤリと笑って私の両手を取って、グイッと持ち上げた。

「わっ、とと」

　いつもみたいに強引なんじゃなくて、私が立つのを助けるくらいの力の強さ。私はそのままマユリの腕の中に入ってしまった。
　らしくないマユリに思わずドキドキしている。

「あ、の…マユリさん…」
「こういうのが好きなんだろう？」

　マユリがニヤニヤして片手で頭を優しく撫でる。なんだかきゅーっと胸がときめいている気がする。私は恥ずかしくて顔を胸元に隠した。

「どうしたんだネ」
「急にらしくない事するんだもん。なんかちょっとさ」
「恥ずかしくなった？」

　そう言ったマユリの手が、私のうなじをスッと撫でた。触れるか触れないかの指先にゾクゾクっと背中に弱い快感が迫った。