(小説)魂成鬼伝の章
【あの世の薙翔小説解説】
●竜神様と閻魔大王の関係性と竜神様の時を戻した際の制約について
竜神様は地球の神であり現世の生命の竜の神でもあるお方。
一方で閻魔大王様はあの世と現世の狭間の冥府を治める王です。
お互いの存在を認識し、共に互いを見続けて来た為お互いの事をよく理解している二人。
(竜神様は閻魔大王様の御心についてはなんとなくでしか分かっておりませんが)
そんな二人は互いの世界を見る事は出来ても直接その世界に干渉する事を許されてはおりません。
あくまで鑑賞のみが許されております。
そんな中で竜神様が時を戻したら
既にあの世へと旅立った魂達はどうなるのか。
竜神様が時を戻した際は、薙翔と寧々がそうであったように生者の魂も死者の魂も皆等しく時を遡っております。
記憶を無くし、死者の魂も戻された時からまた再び現世で生き続けることに。
あの世の世界への干渉は竜神様も閻魔大王様同様許されていないので、
それでは時を遡るという形であの世から現世へと蘇った死者達は果たしてこの場合どうなるのか?
それが先程申し上げた制約に繋がってきますが、地獄や黄泉の国へと渡った死者が現世へと戻った場合、竜神様はその運命を変える事は許されません。
つまり、竜神様は一度でも地獄や黄泉の国へと渡った魂に干渉が出来なくなります。
それが制約です。
ただしこれは地獄と黄泉の国に限った事であって、あの世と現世の間にある冥府に居る死者達は実は含まれてません。
審判を受け、地獄もしくは黄泉の国への門をくぐってはじめて竜神様の干渉外の存在となります。
なのであの世と現世の間におり、地獄門をくぐらずその前で待ち続けた薙翔は時を戻されても竜神様が干渉し続ける事が出来る対象となってしまうのです。
ちなみに冥府にいる間は竜神様にも手出しが出来ません。
自分の居る世界に戻ってきてはじめて竜神様は手が出せるといった形となります。
●閻魔大王様の隠された想い
先程書いた通り、あの世と現世の狭間にいる死者は制約の対象外となる為
時を戻されたら再び薙翔は竜神様の干渉内の存在となってしまいます。
実は閻魔大王様はこれを危惧し、どうにか薙翔を黄泉の国へと送ろうと作中で動いていたのです。
竜神様から薙翔を守る為に。
閻魔大王様は現世の世界を見る事が出来るので、薙翔と寧々が竜神様により苦しめられその上で寧々は鬼に薙翔は命を落とした事を存じておりました。
そして、その二人の辿った結末を見て心をとても痛めておられました。
なので、自分の元へと来た薙翔だけでもせめて竜神様の手から救おうとしていたのです。
正直その御心にはそれが果たして正しいのかという複雑な迷いもありました。
作中最後でも書いた通り、生命の竜の目覚めの事もあります。
ここはあまり深く語れませんが薙翔ならもしかしたらヂィエウェイの支えとなってくれるかもしれないという考えがありましたので。
そして迷いは他にも。
薙翔がもし黄泉の国へと渡ってしまったら、竜神様はもう薙翔には二度と手を出す事が出来なくなる為、
それでは寧々だけが竜神様にこの先苦しめられ続けてしまう事になってしまいます。
薙翔は絶対にそれを望まない。
しかし、薙翔を苦しむ事を寧々も望んでいない。
ですが、現世にいる寧々を閻魔大王様では救い出す事は叶わない。
なら…、ならせめて今目の前に居る薙翔だけでもどうにか救おうと黄泉の国へと行かせようとしていたのです。
途中怒りを見せ薙翔を傷付けもしましたが、それも本意ではありません。
本当は傷付けたくなどありませんでしたが、薙翔が黄泉の国へと行く事を承諾しないので心を鬼にして怒るフリをして薙翔に手をだしたのです。
その証拠に傷付けた直後に薙翔の酷い魂の損傷を見てかなしげな表情を閻魔様は見せております。
すべては薙翔の為の行動。
しかし、それでも薙翔がどこまでもそれを拒み続けた為最後は致し方なく篁(たかむら)に地獄門の前へと案内させました。
作中最後の方で閻魔大王様は、世界の秩序を選び清い心を持つ二人を差し出す事をどうか許してほしいと言っておりますが、
閻魔大王様はけして二人を差し出す事が本意ではありませんでしたし、どうにか閻魔様なりに必死に守ろうとしてくれていたのです。
冥府の王と呼ばれる閻魔大王様ですが、一説では菩薩の化身とも呼ばれております。
そんな閻魔大王様ですから薙翔を現世へ再び戻す事には心の中で涙を流していた事でしょう。
●寧々が100年心穏やかに過ごせた理由
ここまでの解説でもう察しがついてる方も居るかもしれませんが、これは薙翔が現世と黄泉の国の狭間に留まり続けたからです。
竜神様には冥府や地獄門の前に居る薙翔も見えていたので、
薙翔が寧々を待ち続けるなら寧々が寿命までをどう生き続けるのかのんびり見届ける事にしよう
その後、時を戻して望む物はその時に手に入れれば良いと考えた竜神様
薙翔は作中で寧々を守れない事にとても心を痛めておりましたが、
地獄門の前で薙翔が待ち続けたからこそ、時を戻されたその後寧々のみが苦しむ事にならずに済みました。
薙翔の行動は自分でも気付かない所ですべて寧々を守る事に繋がっていたのです。
●閻魔大王の罰と篁の想い
作中でも記載があった通り、閻魔大王様は罪人を裁くうえで自身も罰を受けて日々審判を行っております。
これは恋猫月夜の中での設定ではなく、そういう言い伝えが実際にあります。
閻魔大王はまず、人間で最初の死者で、死後の世界を最初に発見したといわれている人物とされております。
閻魔大王様の元の名前はヤマといい、最初にヤマが発見した死後の世界はいわゆる天国と呼ばれるところでした。
最初は死者も少なかったので、天国で平和に暮らしておりましたが、
死者が増えるにつれて、悪人も天国に入ってくるようになり、これでは平和なはずの天国の秩序が乱れてしまうと考えたヤマは
悪人と善人の住み分けをするために地獄を作った言われております。
そして、「誰が天国に行き、誰が地獄に行くべきか」を決める人が必要になり、ヤマがその仕事を請け負うことになったのです。
現代では恐ろしいイメージをもってしまいがちな閻魔大王様ですが、
しかし彼は「良い人が安心して天国で過ごせるように、悪い人が地獄で罰を受けるように」と、自ら人々から恐れられる仕事をしているのです。
これが閻魔大王様が菩薩の化身と言われている所以とされてます。
そして罰についてですが、閻魔様は「1日に3回、焼けた鉄板の上に寝かされ、どろどろに溶けた銅を口に流し込まれる」という罰を受けております。
どろどろに溶けた銅を飲めば、喉や内臓は焼けただれてしまいます。
しかし地獄の住人は傷の治りが早いとされており、銅の熱で痛めつけられた閻魔大王の体もすぐに治ります。
そうしてまた、閻魔大王は銅を飲むことになるのです。
先にも書いた通り、死者を裁くという罪を背負うため、彼自身も罰せられております。
(ちなみにどろどろに溶けた銅を飲んでいるから、閻魔大王の顔は赤いとされております。)
閻魔様の罰はこういった経緯が御座います。
次に作中に出て来た篁ですが、本名は小野篁といい彼は歴史上にも存在する人物で
参議小野岑守の子で嵯峨天皇につかえた平安初期の官僚です。
彼は一説では
昼は朝廷で役人
夜は冥界で 閻魔大王の裁判の手伝いをしたと言われております。
閻魔大王様を今回の小説で描く際に色々と調べていた中で黒木はこの小野篁という人物を知り今回の作品でも出させて頂きました。
彼については正直あまり詳しくは調べておりません。
どのような人間と歴史で実際に伝えられていようと私の作品の中での篁という存在がどういうものなのか既に決まっていたので敢えて調べませんでした。
私は、この恋猫月夜では篁さんには閻魔大王のよき理解者として描きたいという気持ちがありましたので。
今回、作品を描くにあたって閻魔大王という存在を描きたく私なりに色々見て彼の詳しい背景を知りました。
先にも書いた通り彼は、善人である死者が心穏やかに過ごせるようにと地獄を作り、自分が罰されてでも人々の為に働いているお方
そんな方ですから、どうかお傍にいる方だけでもその御心を深く知る方にそばに居てほしいと思い篁さんにはその役に回ってもらいました。
彼は作中では、常に閻魔大王様を気遣っております。
薙翔を地獄門に案内する際、どうして自分をそんなに簡単に差し出すのかと質問を投げかけておりましたが
あれは、辛い審判を日々行い、苦しんでいる閻魔大王様をどうして困らせるような事をするのだという篁なりの怒りが実は込められておりました。
しかし、薙翔から返ってきた言葉はあまりにも闇が深くそのあまりの言葉に悲しみを感じその後は何も言い返せなかったのですが。
その後は少し薙翔を気遣うような描写もありました。
篁なんりに薙翔の事を案じたのだと思います。
しかし、その後はやはり閻魔大王様を気遣うお言葉が出ております。
このように篁は閻魔大王様の事を感じる心優しき部下として作中では描かせて頂きました。
●描写
作中何度か薙翔の描写には魂ではなく、まるで身体もあるような描写がいくつからありました(ごくりと息を飲むなど)
あれは生前身体があった時の記憶が魂にしっかりと刻み込まれているので本人は今でも身体があるような感覚があるからです。
ちなみに途中閻魔大王に地面へと叩きつけられる描写がありますが、閻魔大王は魂に触れる事が出来る存在だからです。
地面も冥府に存在する地面なのでそこには魂を叩きつける事も出来ます。
更には魂へ直接攻撃している形になるので身体に与える痛みよりも魂に直接与える痛みのほうが強いので薙翔はあの時相当痛い思いをしております(しかもそのあと魂に刻み込まれた前世含むすべての傷の記憶を再生されたりもしてますしね…)
●地獄に対する恐怖について
作中では、寧々よりも薙翔の方が地獄へ恐怖を抱いているような描写が多いですが、これは薙翔が見世物小屋での拷問経験者だからです。
あの見世物小屋で常識では考えられないほどの拷問を薙翔は受けてきましたし、その拷問は口にするのも恐ろしい程の(ここに書いていいか悩むレベル)物なので
そんな拷問を受けてきた薙翔にはその時の苦痛を思い出しより地獄は恐ろしい場所に感じたので(寧々も地獄直接みているので寧々だって地獄には恐怖を抱いておりますがね)
これは小話になりますが、地獄を見た日はあまりの恐怖に二人は一緒にぴったりくっついて寝てます。
●薙翔が閻魔大王様の所に居座っていった期間
現世での時間であらわすと5,6か月程です。
実はけっこう居座っておりました。
閻魔様も冷や冷やしたと思います。
この間に時を戻されたらと😱
でも竜神様に時を戻す様子がなさそうだったのでまだ良かったのですが…
小説の最初の方閻魔様が苛立ってたのはこの期間の長さ故ですね
何度言って聞かせても薙翔が黄泉の国へと行かないのでそりゃイライラもするという。
しかし居座り続けていた間
ひたすら閻魔様に自分を地獄に、寧々を黄泉の国にと願い続けておりましたが、けっきょく寧々の地獄行きを変えられなかった事は薙翔は後悔が大きかったでしょうね。
ちなみに薙翔は閻魔様が罪人を裁く罪で自分も罰されてる事は一切知りません。
閻魔様が罰を受ける時も別の場所ですし、その声も薙翔には届いておりません。
閻魔様の御心などを知ってたら作中のようなあんな態度はしてないですね。
●閻魔大王の口にしていた寧々の罪について
閻魔大王様は寧々を罪があるから地獄に行くと言っておりましたがあれはすべて本当の事です。
閻魔大王様は作中何一つ事実とは異なる事は述べていないんですよね。
公明正大なお方でなにより秩序を重んじるお方なので口にする事に嘘は御座いません。
閻魔様はその限られたお立場の中でどうにか薙翔を救おうとしておりました。
寧々の罪については残念ですが、魂成鬼伝を使い鬼となるのはどんなに善良であろうと罪深いのです。
しかし、時を戻された事により実は寧々はこの罪からも逃れております。
●薙翔の世界は残酷発言に込められた想いについて
あの世の薙翔の中盤らへんで薙翔は篁に地獄門へと案内され、
その道中に篁から
なぜそうも簡単に自分を差し出すのかと質問され、
世界は残酷だからだと返しております。
これは、薙翔が寧々に会う前の100年(主に見世物小屋)で薙翔が見て
生きて来た世界の事を意味しております。
目の前でゴミのように人が殺され、生き残る為に他人もしくは
大切な何かを差し出す、
または欲しいものを得るために大切な物、者を捨てる、
そんな人々(妖含む)の姿を
ずっと見続けて来た薙翔は、この世界は残酷な物なのだと
これでもかと思い知らされます。
しかしそんな考えを持ってしまう程の悲しい過去をもちながらも、
寧々と妖達が営む商店街で再会し、自分にとっては光のような存在の寧々、
そしてそこで暮らす温かな妖達に囲まれ日々過ごす事が出来た薙翔。
自身の寧々に向けた相反する想いに気付き苦しむも、
それでも優しい商店街の世界は
薙翔にとって残酷とはほど遠い生活でとても幸せでした。
残酷とは程遠い世界でした。
そんな薙翔が寧々を喰らわずに済むために身体に黒曜石を埋めようと
竜神様に伝えられた時に一体何を思ったのか。
過去書いた通り寧々を守りたいという想いや自分の欲深さに対する
怒りや様々な想いが溢れておりました。
ただそれと同時にこの世界に対する諦めのような冷めたような悲しいような
切ないような苦しいような複雑な想いも同時に抱きました。
ああ…やっぱりな…やっぱり、世界は残酷だ
何も差し出す事なく、
何も失う事なく欲する物を得られる程やはりこの世界は甘くはないと
この時に薙翔は再び思い出してしまうのです。
自分の生きてきた残酷な世界の事を。
薙翔が寧々を守ろうと何を置いても瞬時に迷いなく
自分を差し出してしまうのは寧々への愛はもちろんですが、
こうした過去の背景も関係しております。
何を守りたいか、その為に何を捨てるべきか決断出来てしまう
それに至る経緯の悲しくて残酷な過去がこの子には存在するのです。
●竜神様と閻魔大王の関係性と竜神様の時を戻した際の制約について
竜神様は地球の神であり現世の生命の竜の神でもあるお方。
一方で閻魔大王様はあの世と現世の狭間の冥府を治める王です。
お互いの存在を認識し、共に互いを見続けて来た為お互いの事をよく理解している二人。
(竜神様は閻魔大王様の御心についてはなんとなくでしか分かっておりませんが)
そんな二人は互いの世界を見る事は出来ても直接その世界に干渉する事を許されてはおりません。
あくまで鑑賞のみが許されております。
そんな中で竜神様が時を戻したら
既にあの世へと旅立った魂達はどうなるのか。
竜神様が時を戻した際は、薙翔と寧々がそうであったように生者の魂も死者の魂も皆等しく時を遡っております。
記憶を無くし、死者の魂も戻された時からまた再び現世で生き続けることに。
あの世の世界への干渉は竜神様も閻魔大王様同様許されていないので、
それでは時を遡るという形であの世から現世へと蘇った死者達は果たしてこの場合どうなるのか?
それが先程申し上げた制約に繋がってきますが、地獄や黄泉の国へと渡った死者が現世へと戻った場合、竜神様はその運命を変える事は許されません。
つまり、竜神様は一度でも地獄や黄泉の国へと渡った魂に干渉が出来なくなります。
それが制約です。
ただしこれは地獄と黄泉の国に限った事であって、あの世と現世の間にある冥府に居る死者達は実は含まれてません。
審判を受け、地獄もしくは黄泉の国への門をくぐってはじめて竜神様の干渉外の存在となります。
なのであの世と現世の間におり、地獄門をくぐらずその前で待ち続けた薙翔は時を戻されても竜神様が干渉し続ける事が出来る対象となってしまうのです。
ちなみに冥府にいる間は竜神様にも手出しが出来ません。
自分の居る世界に戻ってきてはじめて竜神様は手が出せるといった形となります。
●閻魔大王様の隠された想い
先程書いた通り、あの世と現世の狭間にいる死者は制約の対象外となる為
時を戻されたら再び薙翔は竜神様の干渉内の存在となってしまいます。
実は閻魔大王様はこれを危惧し、どうにか薙翔を黄泉の国へと送ろうと作中で動いていたのです。
竜神様から薙翔を守る為に。
閻魔大王様は現世の世界を見る事が出来るので、薙翔と寧々が竜神様により苦しめられその上で寧々は鬼に薙翔は命を落とした事を存じておりました。
そして、その二人の辿った結末を見て心をとても痛めておられました。
なので、自分の元へと来た薙翔だけでもせめて竜神様の手から救おうとしていたのです。
正直その御心にはそれが果たして正しいのかという複雑な迷いもありました。
作中最後でも書いた通り、生命の竜の目覚めの事もあります。
ここはあまり深く語れませんが薙翔ならもしかしたらヂィエウェイの支えとなってくれるかもしれないという考えがありましたので。
そして迷いは他にも。
薙翔がもし黄泉の国へと渡ってしまったら、竜神様はもう薙翔には二度と手を出す事が出来なくなる為、
それでは寧々だけが竜神様にこの先苦しめられ続けてしまう事になってしまいます。
薙翔は絶対にそれを望まない。
しかし、薙翔を苦しむ事を寧々も望んでいない。
ですが、現世にいる寧々を閻魔大王様では救い出す事は叶わない。
なら…、ならせめて今目の前に居る薙翔だけでもどうにか救おうと黄泉の国へと行かせようとしていたのです。
途中怒りを見せ薙翔を傷付けもしましたが、それも本意ではありません。
本当は傷付けたくなどありませんでしたが、薙翔が黄泉の国へと行く事を承諾しないので心を鬼にして怒るフリをして薙翔に手をだしたのです。
その証拠に傷付けた直後に薙翔の酷い魂の損傷を見てかなしげな表情を閻魔様は見せております。
すべては薙翔の為の行動。
しかし、それでも薙翔がどこまでもそれを拒み続けた為最後は致し方なく篁(たかむら)に地獄門の前へと案内させました。
作中最後の方で閻魔大王様は、世界の秩序を選び清い心を持つ二人を差し出す事をどうか許してほしいと言っておりますが、
閻魔大王様はけして二人を差し出す事が本意ではありませんでしたし、どうにか閻魔様なりに必死に守ろうとしてくれていたのです。
冥府の王と呼ばれる閻魔大王様ですが、一説では菩薩の化身とも呼ばれております。
そんな閻魔大王様ですから薙翔を現世へ再び戻す事には心の中で涙を流していた事でしょう。
●寧々が100年心穏やかに過ごせた理由
ここまでの解説でもう察しがついてる方も居るかもしれませんが、これは薙翔が現世と黄泉の国の狭間に留まり続けたからです。
竜神様には冥府や地獄門の前に居る薙翔も見えていたので、
薙翔が寧々を待ち続けるなら寧々が寿命までをどう生き続けるのかのんびり見届ける事にしよう
その後、時を戻して望む物はその時に手に入れれば良いと考えた竜神様
薙翔は作中で寧々を守れない事にとても心を痛めておりましたが、
地獄門の前で薙翔が待ち続けたからこそ、時を戻されたその後寧々のみが苦しむ事にならずに済みました。
薙翔の行動は自分でも気付かない所ですべて寧々を守る事に繋がっていたのです。
●閻魔大王の罰と篁の想い
作中でも記載があった通り、閻魔大王様は罪人を裁くうえで自身も罰を受けて日々審判を行っております。
これは恋猫月夜の中での設定ではなく、そういう言い伝えが実際にあります。
閻魔大王はまず、人間で最初の死者で、死後の世界を最初に発見したといわれている人物とされております。
閻魔大王様の元の名前はヤマといい、最初にヤマが発見した死後の世界はいわゆる天国と呼ばれるところでした。
最初は死者も少なかったので、天国で平和に暮らしておりましたが、
死者が増えるにつれて、悪人も天国に入ってくるようになり、これでは平和なはずの天国の秩序が乱れてしまうと考えたヤマは
悪人と善人の住み分けをするために地獄を作った言われております。
そして、「誰が天国に行き、誰が地獄に行くべきか」を決める人が必要になり、ヤマがその仕事を請け負うことになったのです。
現代では恐ろしいイメージをもってしまいがちな閻魔大王様ですが、
しかし彼は「良い人が安心して天国で過ごせるように、悪い人が地獄で罰を受けるように」と、自ら人々から恐れられる仕事をしているのです。
これが閻魔大王様が菩薩の化身と言われている所以とされてます。
そして罰についてですが、閻魔様は「1日に3回、焼けた鉄板の上に寝かされ、どろどろに溶けた銅を口に流し込まれる」という罰を受けております。
どろどろに溶けた銅を飲めば、喉や内臓は焼けただれてしまいます。
しかし地獄の住人は傷の治りが早いとされており、銅の熱で痛めつけられた閻魔大王の体もすぐに治ります。
そうしてまた、閻魔大王は銅を飲むことになるのです。
先にも書いた通り、死者を裁くという罪を背負うため、彼自身も罰せられております。
(ちなみにどろどろに溶けた銅を飲んでいるから、閻魔大王の顔は赤いとされております。)
閻魔様の罰はこういった経緯が御座います。
次に作中に出て来た篁ですが、本名は小野篁といい彼は歴史上にも存在する人物で
参議小野岑守の子で嵯峨天皇につかえた平安初期の官僚です。
彼は一説では
昼は朝廷で役人
夜は冥界で 閻魔大王の裁判の手伝いをしたと言われております。
閻魔大王様を今回の小説で描く際に色々と調べていた中で黒木はこの小野篁という人物を知り今回の作品でも出させて頂きました。
彼については正直あまり詳しくは調べておりません。
どのような人間と歴史で実際に伝えられていようと私の作品の中での篁という存在がどういうものなのか既に決まっていたので敢えて調べませんでした。
私は、この恋猫月夜では篁さんには閻魔大王のよき理解者として描きたいという気持ちがありましたので。
今回、作品を描くにあたって閻魔大王という存在を描きたく私なりに色々見て彼の詳しい背景を知りました。
先にも書いた通り彼は、善人である死者が心穏やかに過ごせるようにと地獄を作り、自分が罰されてでも人々の為に働いているお方
そんな方ですから、どうかお傍にいる方だけでもその御心を深く知る方にそばに居てほしいと思い篁さんにはその役に回ってもらいました。
彼は作中では、常に閻魔大王様を気遣っております。
薙翔を地獄門に案内する際、どうして自分をそんなに簡単に差し出すのかと質問を投げかけておりましたが
あれは、辛い審判を日々行い、苦しんでいる閻魔大王様をどうして困らせるような事をするのだという篁なりの怒りが実は込められておりました。
しかし、薙翔から返ってきた言葉はあまりにも闇が深くそのあまりの言葉に悲しみを感じその後は何も言い返せなかったのですが。
その後は少し薙翔を気遣うような描写もありました。
篁なんりに薙翔の事を案じたのだと思います。
しかし、その後はやはり閻魔大王様を気遣うお言葉が出ております。
このように篁は閻魔大王様の事を感じる心優しき部下として作中では描かせて頂きました。
●描写
作中何度か薙翔の描写には魂ではなく、まるで身体もあるような描写がいくつからありました(ごくりと息を飲むなど)
あれは生前身体があった時の記憶が魂にしっかりと刻み込まれているので本人は今でも身体があるような感覚があるからです。
ちなみに途中閻魔大王に地面へと叩きつけられる描写がありますが、閻魔大王は魂に触れる事が出来る存在だからです。
地面も冥府に存在する地面なのでそこには魂を叩きつける事も出来ます。
更には魂へ直接攻撃している形になるので身体に与える痛みよりも魂に直接与える痛みのほうが強いので薙翔はあの時相当痛い思いをしております(しかもそのあと魂に刻み込まれた前世含むすべての傷の記憶を再生されたりもしてますしね…)
●地獄に対する恐怖について
作中では、寧々よりも薙翔の方が地獄へ恐怖を抱いているような描写が多いですが、これは薙翔が見世物小屋での拷問経験者だからです。
あの見世物小屋で常識では考えられないほどの拷問を薙翔は受けてきましたし、その拷問は口にするのも恐ろしい程の(ここに書いていいか悩むレベル)物なので
そんな拷問を受けてきた薙翔にはその時の苦痛を思い出しより地獄は恐ろしい場所に感じたので(寧々も地獄直接みているので寧々だって地獄には恐怖を抱いておりますがね)
これは小話になりますが、地獄を見た日はあまりの恐怖に二人は一緒にぴったりくっついて寝てます。
●薙翔が閻魔大王様の所に居座っていった期間
現世での時間であらわすと5,6か月程です。
実はけっこう居座っておりました。
閻魔様も冷や冷やしたと思います。
この間に時を戻されたらと😱
でも竜神様に時を戻す様子がなさそうだったのでまだ良かったのですが…
小説の最初の方閻魔様が苛立ってたのはこの期間の長さ故ですね
何度言って聞かせても薙翔が黄泉の国へと行かないのでそりゃイライラもするという。
しかし居座り続けていた間
ひたすら閻魔様に自分を地獄に、寧々を黄泉の国にと願い続けておりましたが、けっきょく寧々の地獄行きを変えられなかった事は薙翔は後悔が大きかったでしょうね。
ちなみに薙翔は閻魔様が罪人を裁く罪で自分も罰されてる事は一切知りません。
閻魔様が罰を受ける時も別の場所ですし、その声も薙翔には届いておりません。
閻魔様の御心などを知ってたら作中のようなあんな態度はしてないですね。
●閻魔大王の口にしていた寧々の罪について
閻魔大王様は寧々を罪があるから地獄に行くと言っておりましたがあれはすべて本当の事です。
閻魔大王様は作中何一つ事実とは異なる事は述べていないんですよね。
公明正大なお方でなにより秩序を重んじるお方なので口にする事に嘘は御座いません。
閻魔様はその限られたお立場の中でどうにか薙翔を救おうとしておりました。
寧々の罪については残念ですが、魂成鬼伝を使い鬼となるのはどんなに善良であろうと罪深いのです。
しかし、時を戻された事により実は寧々はこの罪からも逃れております。
●薙翔の世界は残酷発言に込められた想いについて
あの世の薙翔の中盤らへんで薙翔は篁に地獄門へと案内され、
その道中に篁から
なぜそうも簡単に自分を差し出すのかと質問され、
世界は残酷だからだと返しております。
これは、薙翔が寧々に会う前の100年(主に見世物小屋)で薙翔が見て
生きて来た世界の事を意味しております。
目の前でゴミのように人が殺され、生き残る為に他人もしくは
大切な何かを差し出す、
または欲しいものを得るために大切な物、者を捨てる、
そんな人々(妖含む)の姿を
ずっと見続けて来た薙翔は、この世界は残酷な物なのだと
これでもかと思い知らされます。
しかしそんな考えを持ってしまう程の悲しい過去をもちながらも、
寧々と妖達が営む商店街で再会し、自分にとっては光のような存在の寧々、
そしてそこで暮らす温かな妖達に囲まれ日々過ごす事が出来た薙翔。
自身の寧々に向けた相反する想いに気付き苦しむも、
それでも優しい商店街の世界は
薙翔にとって残酷とはほど遠い生活でとても幸せでした。
残酷とは程遠い世界でした。
そんな薙翔が寧々を喰らわずに済むために身体に黒曜石を埋めようと
竜神様に伝えられた時に一体何を思ったのか。
過去書いた通り寧々を守りたいという想いや自分の欲深さに対する
怒りや様々な想いが溢れておりました。
ただそれと同時にこの世界に対する諦めのような冷めたような悲しいような
切ないような苦しいような複雑な想いも同時に抱きました。
ああ…やっぱりな…やっぱり、世界は残酷だ
何も差し出す事なく、
何も失う事なく欲する物を得られる程やはりこの世界は甘くはないと
この時に薙翔は再び思い出してしまうのです。
自分の生きてきた残酷な世界の事を。
薙翔が寧々を守ろうと何を置いても瞬時に迷いなく
自分を差し出してしまうのは寧々への愛はもちろんですが、
こうした過去の背景も関係しております。
何を守りたいか、その為に何を捨てるべきか決断出来てしまう
それに至る経緯の悲しくて残酷な過去がこの子には存在するのです。
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