その2

―――――その頃

まだ夕方より少し前くらいの、シャッターが閉められている風の魚の中…。

「…は?一人で行ったのかよ!?」
椅子に座って俯いているクールに、結蘭が聞いた。
彼はただ、返事代わりにため息をつく。
「…お前…なんかあったらどうすんだよ!」
…そこに、中の廊下のドアを開け、結蓮もやって来る。
「…何?一人でどっか行っちゃったわけ?」
「…なんで一緒に行かなかったんだよ…。」
二人からそう聞かれて、
「……仕方ねぇだろ。」
やっと、彼が口を開いた。
「あいつがいつまで経ってもあんなお人好しなのが…俺にはわかんねぇんだからよ…。」
「……そういうことね。」
それを聞いた結蓮が、ため息とともに、何かを察し、そう呟く。
「…あなたには、ロクに友達なんていたことないからでしょ?」
…少々踏み込んだ言い方だが…状況を察し導き出した答えを、あまりにも率直に、結蓮は言う。
当然ながらクールからは、不機嫌そうな舌打ちが飛ぶわけだが…。それに驚くでもなく、結蓮がクールを見ながら続けた。
「仕方ないじゃない…。単純に友達と仲良くしたいだけなんだから…。でもそれはそれでしょ…。あの子だけ一人で行かせて良かったの…?」

…クールには、少なくとも、この街ができてからは、友達や仲間というのを持ったことはない。
生息地が欲や暴力ばかりの裏社会となってからというもの、そこで行動を共にする人間には、常に疑いを持たなければならなくなったから…。
持つことそのものが、むしろ弱みとなるような社会に、世界が…この街の中での世界が…そう変貌してしまったから…。
それでも、彼(・)女(・)だけは違った。
友達や仲間なんてものではなく、それよりも大事な存在。たとえ、友達や仲間を含めて考えたとしても、今の彼にとって大事な存在は、彼女一人しかいない。
おまけに、彼女一人で外を歩けば、きっとどこかに連れて行かれてしまうのだろう…。

「一人でいて誰かに連れてかれちゃったら、あなた、どうするの…?」
…そんな人間を、手放して、一人で行かせていいわけがないのだ。
今どうしているのか。そもそも無事に行きたい場所まで行けているのか。それすらもわからない状況で、今更…今更、焦りが込み上げてきたことに、余計に心臓でも潰されそうな感覚になりながら、また大きなため息をついて、彼は立ち上がった。
「…行くのね。」
納得した様子でそれを見た結蓮に、彼は頷いて、「捜してくる。」とだけ言った。
そのまま彼は歩き出し、結蓮が開けたシャッターの横の扉を通って、出て行くのだった…。
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