その2

―――――ある昼間

「…?…一人…?」
ゲーセンの奥の方で、後ろを振り返った男たちの目線の先には、一人で歩いてきたミミドリがいた。
「…そうですね、今日は…。」
「…大丈夫?」
「…割れた?」
「おいおい…んなこと言うんじゃないよ。」
まさか、という顔をしながら冗談半分で言う男たちに、一人が釘を刺した。
「…いやいや、大丈夫ですよ。」
そう、笑って言う彼女だが。
……実は。一時間ほど前……。


ミミドリの部屋にいて、ベッドに座って窓を見ながら少し考え事をしていたクールに、部屋に入ってきた彼女が…心当たりがありつつも、そうと限ったわけではないので、戸惑いながら聞く。
「…どうしたの?」
「…いや、別に。」
「…怒ってる?」
静かに答えた彼は、そう質問され、彼女の方へ振り返って考え込んでから、大きなため息をついた。
「…怒ってる怒ってないの話じゃなくてよ…。」
「……。」
「別に…あんたに言ったってどうしようもないことなんだよ…。」
「……なんで?」
「なんで、って…じゃあ理不尽でもいいのかよ。」
わかるような、わからないような。
なんとなく彼の言いたいことはわかるのだが、答え方がわからずに彼女は黙り込んでしまった。
「…だいたい、ああやって近寄ろうとする奴の意図もわかんねぇってのに…。そういう他人から貢がれてんだろ…。」
「……いや…それは、別に…。」
…その人の厚意だろう…と言いたげな彼女の反応で、彼はまた大きな息を吐く。だが彼女も、その先は禁句であると…特にEDEN内では、完全にそうと信用はできないと思い直し、言わなかった。
「…だからどうしようもねぇんだよ。」
「……。」
呆れた彼の言葉で、また彼女は黙り込む。
「いっつもそうだよな…。知らねぇ奴に連れてかれそうになったこともあったくせに…。また他人から目向けられても…嬉しいからとか。こっちは得するからとか…。向こうの親切だからとか…。」
それから彼は、相変わらず不機嫌そうに再び窓の方に顔を戻して、こう言った。
「……なんでいつまでも…そういうこと言ってられんだよ…。」


…結局は、その後彼女が一人で歩いてきたと言うわけなのである。冗談半分に言われた、割れたというのも、違っているようで、半分、嘘ではない。
「…今日もこれやるの?」
彼女が目を向けたゲームの筐体…そこに、一人が代わりにコインを入れる。
「まぁ…別に俺らが聞くことでもねぇしよ。」
ぎこちない彼女にもう一人もそう言った…。
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