その1

「っ……。」
彼は左肩の上部に銃撃を一つ受けていたが、衝撃に耐えながらも、息を吐き、すぐに振り返った。

倒れていた男が痛みに耐えながら再び撃とうとした銃は、あの一発を最後に弾切れに。
引き金を引いても乾いた音しか出ない銃を見ながら、次いで抱いていたミミドリから離れて歩いてくるクールに視線を移し……必死に立ち上がろうとした男の銃を、クールが蹴り飛ばした。

……男の手から滑り出て飛んでいった銃が、裏路地と空き地との間の道で、音を立てて落ちた……。

無関係だったはずの男に、今死にそうなほど追い詰められている、それも、相手が黒い翼であるという現状に、もはや何もできなくなった男は、彼の強烈な背踏みを喰らい、その痛みとナイフの刺さった部分の痛みの二重苦で、叫び声を上げた…。


―――――その夜

「…え…?帰ってきたの…?二人で…?」
ついさっきまで、帰ってこないミミドリを案じて、周辺にライトを持って探しに出かけていた結蘭が、結蓮から帰ってきたと知らされ、安堵と驚きで、頷く結蓮にそう聞いていた。
「…攫われてたって。彼が連れてきてくれたわ…。」
「…ほんとにもう…。」
そう単純に安堵の言葉が出ないのは、その「彼」のせいなのだろうか。それとも、彼女が攫われていたと、さらっとなんでもないような言葉で収められてしまったことが、引っかかるのだろうか…。
「でも、あの人、怪我してたのよ…。あの子ったら、帰ってきてそわそわしてるから何かと思ったら…。」
「…今は?」
「部屋だよ。帰ってきてすぐ体流してたから、今たぶん手当てしてるよ…。心配なら行ってきたら?」
「いや、いいって……なんかハラ立つ。」
そんな結蘭の呆れたような顔を見て、結蓮はくすっと笑った…。

部屋では、ミミドリがクールの左肩に、大きなガーゼを貼って、包帯を巻いている。
「……はい、できたよ。」
その声を聞くなり、彼はすぐに頷くと共に彼女の方へ向き直って腕を広げた。
急に抱きしめられて、疑問と恥ずかしさで彼女が固まっていると…。
「…心配したよ。」
…一日行方不明なだけで心配だというのに。今回の相手は人攫い。それに、もし遅かったら、彼女は売り飛ばされた先で一体どうなっていたのか…。
「…助けてくれてありがとう。」
「…もうしばらくは一緒に居るから。」
また連れて行かれないように…。彼女だけで理不尽な報復に遭うことがないように…。

ふと、一日何も食べていなかった彼女の腹の音が鳴った。
「…腹は?空いてる?」
「…うん…。」
「…行くか。」
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