その1

―――――冬 深夜

増築されたような建物で溢れている、小さな蛍光灯が光る入り組んだ裏路地。その奥に、真っ黒な車がとまっている。

「…じゃあな。明日まで大人しくそこで寝てろよ。」
「…手を出せないのはちょっと残念だけどよ。」
車の中で前席に座っていた男二人が、後ろに向けてそう話す。
「バカ、これから金にすんだよ。」
「わかってるよ。冗談だって…。」
男たちはそう言いながら車を降りた……。


―――――翌日

「…わかってる。昨日も捜したよ。」
朝方。クールは受話器を握っていた。
相手は、結蓮だ。
ミミドリが、昨日の夕方から帰ってこなくなったという。
…それが、昨日の夕方の出来事なのだ。
昨日クールが捜しても見つからなかったということは、今日になってもまだ戻ってきていない…。
「……そりゃ俺だって手抜いてるわけじゃねぇよ。」
苛立った様子でそう言って、ため息を付く。

いそうな場所へ捜しに行ったのはもちろんだが、周辺の廃倉庫などにも、連れ込まれていないか確かめに行った。それでも結局見つからず、休んで朝になっても彼女は帰ってこない。
…いなくなった時点で、彼女が自力で帰って来られるとは考えにくい。何もなく一人で出ていくような人間でもないし、いなくなるとしたら、別な要因があるものだ。
それも、いなくなったのは夕方。時間が経って暗くなってからでは、とても彼女一人で戻ってくるのは無理だ…。

当然、彼もそれはよくわかっている。それ故に、最悪の可能性を頭に回して焦っていたのだ。


―――――昼間

宛もなく捜す中で、彼は、昨夜もざっとだが見に来ていた廃倉庫に…重たい、開きかけの鉄扉に手をかけて、入った。
一人、浮浪者が隅の方にいる以外、昨日とさして変わったところはない。

「…探しもんかね?」
浮浪者がしわがれた声で、投棄物の物陰を確認するクールに声をかけた。
「…何だっていいだろ…。アンタに用は無いさ。」
クールはそう答えたが、しばらくして、
「そんなに急ぎよって…人捜しかいの。」
出ていこうとした彼を、浮浪者が呼び止める。
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