今の俺と昔の俺

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気が付いたら、俺は、暗い部屋で一人で横になって眠っていた。

今まで見てきたものが何だったのか。
…夢にしてはやけにリアルすぎる感覚だったような気がするし、いつも寝ている間の夢は、記憶に残るとしても断片的で。そうじゃなければほとんどの内容は忘れるものだった。
感覚まではっきり刻まれていると言うことは、何か夢ではない他のものだったというのが正解なんだろう。

あの空間にいた、もう一人の俺。
さすがにないとは思うが…もしあれが本当だったとしたら?もし奴を殺していたとしたら?
今頃タイムパラドックスでも起きて、俺は消えていたんだろうか。
きっと奴の前でそんな言葉を引き合いに出したところで…そんなもの信じてるのか。本当に下らんな…と嘲笑っていたはずだ。
…あの俺に言っていないことで、もう一つ、変わったことがあるとするなら、昔は下らないと思っていたものに、今は頭を回すようになったこと。
それも、おそらくは、奴が俺の言ってることを飲めなかった要因だった。
逆に、俺が奴に殺られても、俺は帰ってこられなかった…。

多少認知できていた部分はあれど、ここまで自分は変わっていたんだと思わされる。

自分が死ぬかもしれない…そして消えるかもしれない…そう思わされて初めて怖くなった体験だった。
一体何なのかは、わからなくてもいい…というよりも、わかりたくもない。
分かったところで、それが怖くなる。きっとそれは、俺には理解しがたいものだ。

感情を取り戻すと、怖いものも次第に増えていくらしい。そして俺はまた、だめになっていくように思う。
そのたびに、根腐れしてると感じる。あれだけ、"あいつ"には自分がいなきゃだめだと思っているのに、実は、一人に戻ったときに弱ってるのは自分の方だと。そう思わされているのも事実だった。
ただ、あの…悪夢のような体験は、全部が悪いわけでもなかった。
最終的に勝ったのかどうかはよくわからないまでも、負かされそうになってもうまく逆転した。
あの過去の俺とマトモに話ができたんだから、それはそれでいい体験だっただろう…。
あれが仮に、夢や幻なんてものじゃなく紛れもない現実だったとしても、今こうして俺は帰って来られたんだから、そう心配することじゃないと思う。

…その体験がどうであれ、俺は今"あいつ"の顔を見なきゃならない。

このまま深く考えても、きっと、だめになるだけだろうから…。それに。
"帰って来られたんだから"、少しくらいは安心させてもらわないとな。
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