今の俺と昔の俺

未「………もう、終わったか?」

倒れている奴に歩み寄って、見おろしながら、言葉をかけた。

過「……何がだ…。」
未「お前の、憂さ晴らしだよ…。」
過「…何言ってんだ…。俺は…もうしばらく立てそうにねぇよ…お前も…そんなこと言ってないで…早く俺を殺ったらどうなんだ…。じゃなきゃ…。」

倒れて、体力を失っていてもなお、鼻で笑ってこう話をする"昔の俺"に…。

未「何回も言わせんな。俺はお前を殺ったら死ぬんだよ…いや、死ぬんじゃない…消える…。」

…言わなきゃならないことがあるはずだ。

未「…お前は…なんでこの場所を出ようとした?」
過「…どういう意味だよ。」
未「何のために…ここから出たいと思った?」
過「……。」

その質問をしたとき、ようやく向こうの俺が、答えに迷ったような顔をして、沈黙を決めた。

未「俺にはその答えがわかる…お前が"昔の俺"ならな。」
過「……言ってみろ。」

迷いがあるのに、何故だか奴は不敵な笑みでそう返す。

未「……答えがない。だからなにも答えられないんだ。」

俺のその言葉を聞いても、まだ奴の表情は崩れない。

過「…そうだよ…。その通り…。」
未「あるいは…答えがあるとすりゃあ…自分のため、だろうな。」
過「……。」
未「なんで俺がわかってるか…。」

表情をあまり変えず、黙って聞いている奴が、今、何を考えているのか、まではわからなくとも。
きっとさっきよりは。マシなことを考えているだろう。

未「俺が、昔はそうだったから…。」
過「……。」
未「…お前と俺は、同じ"俺"だよ。これで証明できた。最初に言った…翼も、同じなんだろ?…そういうことだよ。」

…最初に信じていなかったのはそっちの方だろう…という意味も込めて、その言葉をかけた。
そして。もう一人の自分に背を向けて、どこへともなく、ゆっくり歩き出した…。

過「…じゃあ…俺は…なんでお前のことがわからない?」

…質問を投げかけた、奴の…俺と同じ声に、立ち止まって、答える。

未「…お前は昔の俺…お前からしたら、俺は未来のお前だ…。俺は、昔、誰かとツルむのが本当に嫌だったから…死ぬことにも抵抗がなかったから…だから、お前には、俺の言ってることがわからなかったんだ…。俺は、変わったんだよ…。」
過「……。」

黙っている奴に、背を向けたまま、

未「そうだな、信じるか信じないかは…お前の自由だ…。まぁ、生きてりゃ、そのうちわかる。」

…最後にこう言って、またゆっくり、その白い空間の先へ、歩いた。
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