今の俺と昔の俺

──これは、俺の脳裏にはっきり爪痕を残した…不可解な、少し怖くもある体験の話。

気がつくと、全く知らないところに、放り出されてた。ただ白いだけの、何もない空間。
今、自分が立っている場所…床のような場所には、広い円形の不思議な模様が入っている…。だが、それ以外の視覚的な情報が、何もない。

…唯一の問題点を除いて。
その空間に、俺と一緒にただ放り出されたであろう人物。
俺によく似た奴。

…正確には、"俺自身"だった。

存在を認識した当初は、とうとう何か実験にでも巻き込まれて、クローンでも作られちまったのかと思ってた。
そうじゃない…むしろ俺が想定していたものじゃない、それでいてもっと深刻なことだ…そう気づいたのは。
こっちを睨んだ、目の前の"奴"と、話を交わした時だ。

過「…お前…何モンだ?」
未「お前こそ。」
過「…俺だってんなら、潰すぞ。」
未「おいおい、ちょっと待て…。」

あくまで俺は、笑って返す。

未「……背の翼は?」
過「…ある…。」

一瞬、驚いたような顔をして、背の刺青の質問に答えた"奴"は、また俺を睨んでこう問いかけた。

過「…なんでお前が知ってんだ…?」
未「さぁ…俺自身だから、としか言いようがないな。そう言うそっちも、俺なんだろ?」
過「チッ…。」

今にも殴り掛かりそうな奴を見て…あぁ、確かに俺なのかもしれない…と思うと同時に…。俺はこんなにも恐ろしかったのか、とも、思った。
だが、しばらく間を置いて奴が口を開いたとき、そんなことも長々と考えていられなくなる。

過「…今の状況がどうであれ、俺はお前を潰すからな。」
未「……。」
過「自分が二人いるなんて、そんな下らね~ことに付き合う気は、"俺"にはねぇよ。"俺"だってんなら、わかるよな…?」

…後半、自分自身を強調しながら、嘲笑って言ったあと、次に、こう続けた。

過「第一、二人でここに放り込まれた以上、ここを出るにゃあ…たぶん、お前を潰す必要があんだよ…。」

…この言葉を聞いたとき、俺は…こっちの俺は…とてつもなく不吉なものがあることを、なんとなく悟る。

未「俺を倒すのも殺るのも、確かに、お前の勝手だけどよ…そんなことしたら、下手すりゃ…そっちも消えるぞ…?」

途端に、身がひきつるような感覚がして、目の前の奴に放った言葉、それさえも、奴には、無意味だ。
なぜなら…。

過「…別に。…それで何が悪い?仮に、本当に俺自身だったとして。そんなのやってみなきゃわかんねぇだろ…。それに…クローンか?鏡の魔法か?そんなもん、なんでもいい。」
未「……。」
過「お前が、目障りなんだよ…。」

きっと"奴"が、過去の俺だからだ。
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