2, Side Mimidori
広いゲーセンの中。
探しに来たところで会えるかどうかもわかんないし、いたとしても、きっと声すらかけられないと思うけど。
記憶の中にちょっとだけ残ってる、それっぽい人、ここにいないかな…って。
よく見る人…そういう知り合いなら何人かいたんだけどね。
ゲームをやりながら探すのなんてできないし。そもそも、ここはとっても広いから、そんな隅々のことなんて、いちいちわかんないよね…。一回メダルをちょっと借りてメダルゲームをやり始めたら、そこから離れられなくなっちゃった。
そのときふと…。前までは隣に誰か座ってたな…って記憶がちらつく。
それが誰だったのかを思い出そうとしてるのに。その人を探したくてここまで来たのに。
…思い出せないんだよな…。
そうやって考えながらやってるうちに、あんまり当たらなかったから、手持ちのメダルはすぐ無くなっちゃった。
席を立って、近くにあったエスカレーターで地上に上がった。
地上に上がってすぐのところには、あのマリオカート最新版がある。こんなところにもそれくらいあるのだ…。
でも、あんまりやってる人はいない。
みんな他のゲームに行く。そこまでこのゲームをやり込んでる人を見たことがなかった。
そこで私はつい、それに熱中して、何回もやってしまった…。
そのとき、すごいことが起きた。
「…いるいる。」
唐突に、周りで見てた…探してた人じゃないけど、よく見かける不良みたいな人たちから声をかけられて。
「…なぁ、そんなにうまいなら対戦でレースやってくれや。」
「……!」
……と、まぁたぶん一人でいるからこそ起こるであろう流れで、唐突に戦いを挑まれた。
元いたところじゃきっと絶対起こらないよ…。というかこのゲームが知らない人との対戦に使われるかって言ったら、そうじゃない。格闘ゲームなら向かい合わせだから知らない人が対戦乱入することもあるけど、こういうレースゲームは隣同士で座るものだから、元いたところじゃとてもそんなことは…。
でもこの見た目。この感覚。
応じないわけには行かないと思う。
…このままいても、カツアゲでもされるんじゃないか…。
終わったあとのコンテニューをやめて、デモ状態に戻す。
今、部屋を出てからどれぐらい経ったのか、何時なのかもわかんなかったけど。
…あとできっと怒られちゃうな。
怒られるのを想像しただけでなんとなく悲しくなるから、そのことはそっと忘れることにした。
無言のまま、対戦が始まった…。
それから1、2時間ぐらい経ったかな。
あれだけ怖がってたけど、結果的にその場は盛り上がって、別な人たちも含めて次々対戦を回した。なんでこのゲームでこんなことになっているのだろう…?って感じだったけど。中には知り合いもいて。
それが、すごく楽しかったけど、これだけ人がいても、「思い出したい人」は思い出せない。そんな人だかりの中でも、もしかしたらこの人かなって思えるような人には会えないままで。
もう誰がその人なのか覚えてないだけで、私が思い出せてないってだけなのかもしれない。でも、誰か一緒にいたって記憶はあったから、その人を見たら思い出すんじゃないかな…って…こうやってゲーセンに来たのは、そう思ってたからなのに。
ちょっとずつ人が減って、まだ対戦回しをしてた数人が残ってるけど…。
ふと、このまま遊んでていいものなのか、考えてしまった。
あれからきっと、かなりの時間が経ってるはずで。このまま何も思い出せないなら、
たぶん、ここに一人でいても無意味…。
今頃、みんな探してるのかな…。
「…あの…私、そろそろ抜けます…。」
そもそも、一人で帰れるのかどうか…。
「ありがとね!」
行きは夕方で明るかったからいいけど…。
「また今度!」
…色んなことを考えたけど、結局は、無意味に終わるのが嫌だったのかも。
あと、怒られるのが悲しかったのかも。
そのゲーセンが入ってる広いビルの入口。
何本か経ってる四角い柱の陰で、ずっと見なかった携帯を開けて、今、何時なのかを…やっと。やっと。確認した…。
21:28
そんなに経ってたんだ…。
出たのは夕方の五時半ぐらいだった。
そして電話の入った形跡…。マナーモードで、しかも開かないままだったから、何も知らなかった。
なんでいなくなっちゃったの…どこに行ってたの…って聞かれることを考えたら、とても、かけ直す気にはならなかった。
何やってんだろうな、って思いながら、そのビルを背に、歩き出した。
そのビルの周辺なら人通りは多いけど、帰るには途中寂れた道も通らなきゃだし…。
行きは、確かにまだちょっと明るかったとは言え、よく一人で来られたなとしか思えない。なんでそんな道を覚えてるのか考えたところで、未だに誰だか思い出せない人が一緒にいたからだなって、そういう記憶が出てくるだけなんだけど…。
…そんなこと思いながら、ちょっとだけビルから離れたところで。
後ろが気になった。
わりとすぐ後ろ、明らかに誰かついてきてて、色んな意味でまさかと思って…。
その人がもし自分の探してた人だったら?とも思ったし、もしかしたら変な人につけられてるのかも、とも思ったから。
それで、ちょっと立ち止まって、軽くだけど、そっちの方に視界を移してみた。
でも、見た瞬間に、違うって思った。
これは絶対その人じゃないなって思った。
探しに来たところで会えるかどうかもわかんないし、いたとしても、きっと声すらかけられないと思うけど。
記憶の中にちょっとだけ残ってる、それっぽい人、ここにいないかな…って。
よく見る人…そういう知り合いなら何人かいたんだけどね。
ゲームをやりながら探すのなんてできないし。そもそも、ここはとっても広いから、そんな隅々のことなんて、いちいちわかんないよね…。一回メダルをちょっと借りてメダルゲームをやり始めたら、そこから離れられなくなっちゃった。
そのときふと…。前までは隣に誰か座ってたな…って記憶がちらつく。
それが誰だったのかを思い出そうとしてるのに。その人を探したくてここまで来たのに。
…思い出せないんだよな…。
そうやって考えながらやってるうちに、あんまり当たらなかったから、手持ちのメダルはすぐ無くなっちゃった。
席を立って、近くにあったエスカレーターで地上に上がった。
地上に上がってすぐのところには、あのマリオカート最新版がある。こんなところにもそれくらいあるのだ…。
でも、あんまりやってる人はいない。
みんな他のゲームに行く。そこまでこのゲームをやり込んでる人を見たことがなかった。
そこで私はつい、それに熱中して、何回もやってしまった…。
そのとき、すごいことが起きた。
「…いるいる。」
唐突に、周りで見てた…探してた人じゃないけど、よく見かける不良みたいな人たちから声をかけられて。
「…なぁ、そんなにうまいなら対戦でレースやってくれや。」
「……!」
……と、まぁたぶん一人でいるからこそ起こるであろう流れで、唐突に戦いを挑まれた。
元いたところじゃきっと絶対起こらないよ…。というかこのゲームが知らない人との対戦に使われるかって言ったら、そうじゃない。格闘ゲームなら向かい合わせだから知らない人が対戦乱入することもあるけど、こういうレースゲームは隣同士で座るものだから、元いたところじゃとてもそんなことは…。
でもこの見た目。この感覚。
応じないわけには行かないと思う。
…このままいても、カツアゲでもされるんじゃないか…。
終わったあとのコンテニューをやめて、デモ状態に戻す。
今、部屋を出てからどれぐらい経ったのか、何時なのかもわかんなかったけど。
…あとできっと怒られちゃうな。
怒られるのを想像しただけでなんとなく悲しくなるから、そのことはそっと忘れることにした。
無言のまま、対戦が始まった…。
それから1、2時間ぐらい経ったかな。
あれだけ怖がってたけど、結果的にその場は盛り上がって、別な人たちも含めて次々対戦を回した。なんでこのゲームでこんなことになっているのだろう…?って感じだったけど。中には知り合いもいて。
それが、すごく楽しかったけど、これだけ人がいても、「思い出したい人」は思い出せない。そんな人だかりの中でも、もしかしたらこの人かなって思えるような人には会えないままで。
もう誰がその人なのか覚えてないだけで、私が思い出せてないってだけなのかもしれない。でも、誰か一緒にいたって記憶はあったから、その人を見たら思い出すんじゃないかな…って…こうやってゲーセンに来たのは、そう思ってたからなのに。
ちょっとずつ人が減って、まだ対戦回しをしてた数人が残ってるけど…。
ふと、このまま遊んでていいものなのか、考えてしまった。
あれからきっと、かなりの時間が経ってるはずで。このまま何も思い出せないなら、
たぶん、ここに一人でいても無意味…。
今頃、みんな探してるのかな…。
「…あの…私、そろそろ抜けます…。」
そもそも、一人で帰れるのかどうか…。
「ありがとね!」
行きは夕方で明るかったからいいけど…。
「また今度!」
…色んなことを考えたけど、結局は、無意味に終わるのが嫌だったのかも。
あと、怒られるのが悲しかったのかも。
そのゲーセンが入ってる広いビルの入口。
何本か経ってる四角い柱の陰で、ずっと見なかった携帯を開けて、今、何時なのかを…やっと。やっと。確認した…。
21:28
そんなに経ってたんだ…。
出たのは夕方の五時半ぐらいだった。
そして電話の入った形跡…。マナーモードで、しかも開かないままだったから、何も知らなかった。
なんでいなくなっちゃったの…どこに行ってたの…って聞かれることを考えたら、とても、かけ直す気にはならなかった。
何やってんだろうな、って思いながら、そのビルを背に、歩き出した。
そのビルの周辺なら人通りは多いけど、帰るには途中寂れた道も通らなきゃだし…。
行きは、確かにまだちょっと明るかったとは言え、よく一人で来られたなとしか思えない。なんでそんな道を覚えてるのか考えたところで、未だに誰だか思い出せない人が一緒にいたからだなって、そういう記憶が出てくるだけなんだけど…。
…そんなこと思いながら、ちょっとだけビルから離れたところで。
後ろが気になった。
わりとすぐ後ろ、明らかに誰かついてきてて、色んな意味でまさかと思って…。
その人がもし自分の探してた人だったら?とも思ったし、もしかしたら変な人につけられてるのかも、とも思ったから。
それで、ちょっと立ち止まって、軽くだけど、そっちの方に視界を移してみた。
でも、見た瞬間に、違うって思った。
これは絶対その人じゃないなって思った。
