1, Side Cool

誰も何もしてこなかったということは、本当にただの実験をするためだけのつもりなんだろうか…。
不自然なまま、地下道を通らされて、地上の出口から研究所の敷地に出る。
そのまま、高い金網のフェンスの扉を開けられて、外に出された。

…監視がいなくなっても、ため息ついた俺を見て、まだ引き攣ってるのを見ると、忘れてると思うしかなかった…。
「…送るよ。」
「…え?」
「…道知らないだろ。」
「……。」
さすがに、言ったことに対してはそうだと分かってはいるらしい。ただそれでもまだ、怯えてるような感じが抜けない。

あの階段まで歩く間も、何も言わずに後ろをついてきた。
…あの流れで知らない男が一緒にいるんだから当然といえば当然かもしれない。何があったのかも覚えてない可能性すらある。

そこで俺が考えたのは…。
距離を置くこと。今まで通り一緒にはいられないかもしれないと思ったこと。
ここまでついてくるのは、俺を信用しているからなんてものじゃないし、きっとあの薬を全部飲んだあとで、俺のことを完全に忘れていて、怯えている…。

だから敢えて、帰すときは、もう着いては来るなと言った。思い出させるようなこともしなかった。
思い出したければあの二人にでも聞いてるだろうから…。


……その時はそう思ってたのに。

「…思い出そうとしてたのかな…。」
俺は何やってんだ…。
「一人でいなくなっちゃうなんてね…。」
あんまり結蓮がうるさいから様子を見に来たら、いなくなってた…。

一人で歩いたら危ないって言い聞かせたのも、もう半分忘れてるってことなんだろう。
記憶の齟齬に絶えられなくなったのか…。
もしかしたら、俺のことは忘れても、いた場所は覚えてて、そこに行こうとしていたのか…。
もしそうだとしたら、行きそうな場所を調べれば見つかりそうではある。

ただ…時間。
狂った人間の活動には時間はそこまで関係ないとは言えど、もう暗くなる…。出た先でどういう目に合ってるかはわからなかった。

そして、あの噂にあった、副作用の話。
精神的に不安定に…。
いなくなったのは、もしかするとそれが原因だったのかもしれない。
じゃあ尚更、一人にしておくべきじゃなかったと思う。

……そういうときにいつも縋っていた存在の記憶を無くしているのだから……。


夜のゲーセンを回る。
知っているところは全部回るつもりで。
それらしい人影が紛れてないかを、行かなそうなところ以外の全部のエリアで確かめて回った…。

…思い当たる二つを捜し回って、とうとう見つからなかった。
知っているところといえば、もうあと一つしか無い。
大型の、地上と地下にフロアがある、かなり広い場所。地下にはメダルゲームがあって、地上はアーケードゲームのエリア。
そんなところで果たして見つかるのかどうかは正直怪しいところだったが、あとここを探していなかったら、何処か別の場所にいるか、危ない目に遭わされているか、もういなくなっているか…。

考えたくないことを考えかけて、すぐそのビルの一階に目をやった。
黒い天井に明るい電球が張り巡らされていて、広さがかなりある。

…この中だったら、まだいるんじゃないか…。
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